カステラは、下図上段の右に位置するhigh ratio cakeの究極バージョンになります。使用する卵黄/卵白の個数比が逆転していますので濃厚カステラを作成しようとするほど混ぜ合わせが困難になってきます。適度の保湿は焼きあがったカステラの口どけ感を左右する決定的因子となりますので必然的に強力粉主体のレシピとなります。
自宅のオーブンでカステラを焼くにはまず適当な焼型を考える必要があります。市販の木製のカステラ専用の焼き型を使用するのもよいですが大きさなどが限定される上にいろいろ準備が煩雑です。要はオーブンクッキングの要となるアルミホイルをどういう風に用いて熱の伝導調整を行うかが大体つかめればそこら辺にあるものを利用して焼成できることになります。アルミニウムの熱伝導率は237 W/(m・K)と銅に次いで高値です。したがって熱伝導率の極めて低い紙(≒0.06)を即席の断熱壁としてアルミホイルで囲い込むことにによって専用焼型同様の等温膨張過程を再現します。重要なのは牛乳パックの内面のアルミホイルの巻き数ですが、私は側面1重、底面3重に敷いてザラメの部分の底面とスポンジケーキの部分の熱伝導を調整しています(使用している天板の熱伝導率が多少影響するとは思います)。とりあえずのところこの重層比でそこそこのカステラが仕上がっているように感じています。この構成によりオーブンクッキングにおける加熱形態が、空気からの対流伝熱により遮蔽を受けていない表面方向から生じる形でリードされるように誘導します。アルミホイルの内側には表面のシリコーン加工されたクッキングシートで作成した型をもう一つ置きます。これはシリコーン(熱伝導率≒1.3)によるアルミホイルへのカステラの焦げ付きを防止するためです。
上図は1Lの牛乳パックを2つ重ねて断熱壁を作成しています(V=7cm x 7cm x 33cm)。これが我が家の天板に乗せられる最大サイズになります。上面以外が即席の断熱面となります。アルミホイルは作成が簡単になるように幅が25cmのものを使用します。理論的には外面をアルミホイルで囲う分は節約してもよいと考えますが作成を簡易化するために全体に巻き付けます。まず属面に図のようにアルミホイルを1層巻いてホチキスで止めます。次に110 cm x 25cmのサイズにアルミホイルをはさみで切断し2、続いて110 cm x 12.5cmの長方形2つに2分します。両端を織り込んで幅を7cm弱に整えます。これを内側底面からかぶせ両端の正方形面もカバーします。これをもう1層して位置が移動しないようにホチキスで止めます。
次に、内側に設置するクッキングシート製の型を作ります。幅30cmのシートを使用して、6.8cm x 11.6cm x 32.8cmの直方体の型を作成します。これもホチキスで止めて作成します。牛乳パック型の内側に設置して準備完了です。
Ingredients: 材料と配合組成
使用した材料は、レモンジュース(サンキスト100%レモン、サンキスト)、メープル風味ケーキシロップ(ケーキシロップ、カンピー)、牛乳(北海道牛乳、トップバリュ)、以下はすべていつもの材料です。
Castella Sponge Cake | Amount for 7cm x 33cm x 7cm pan |
Crystal Sugar (medium size) | 25 gram |
Egg Yolk (L) | 5 ea. (100 gram) |
Superfine Sugar | 65 gram |
Cake Syrup | 45 gram |
Whole Milk (hot) | 45 gram |
Egg White (L) | 4 ea. (160 gram) |
Lemon Juice | 4 gram |
Superfine Sugar | 120 gram |
Bread Flour | 150 gram (ratio S/F ≒1.64 ) |
Vanilla Oil | a few drops |
Baking Trick | 170C x 10 min plus 160C x 50 minutes |
Instructions: 調理法
①大型ボウルに、卵黄5個分と上白糖65グラムを入れBain-marieで混合します。砂糖が解けたら湯煎から外して室温でしばらく放置しておきます。
②メタルボウルに卵白4個分を入れ、レモンジュース4グラム加えて電動ホイッパーで攪拌します。
③加える砂糖の量が多いですので4回にに分けてsoft peak手前から加えていきます。最終的にはstiff peakとfirm peakの中間位に仕上げます。
④go back methodに従い攪拌した卵黄とメレンゲをスパチュラで混ぜます。
⑤ケーキシロップ45グラムと牛乳45グラムを混ぜて湯煎で温めます。
⑥強力粉150グラムを卵黄/メレンゲ混合液に篩いスパチュラで丁寧に混ぜます。
⑦ケーキシロップ牛乳液を最後に混ぜます。
⑧カステラの焼き型にザラメ糖(中)を25グラム適当に敷きます。
⑨生地を注ぎ、オーブンで170℃で10分、その後160℃で50分焼成します。
水分が蒸発して生地がスポンジケーキの様にならないように控えめの焙焼時間の決定が必要です。焼き加減は竹串で刺してみて微妙に表面が湿る程度が目安です(生焼けではだめですのできっちり焙焼は行います)。その後も水分を蒸発させないことが秘訣です。天板ごと取り出して濡れタオルの上において冷まします。アルミホイルはすぐに温度が下がりますので、内側のクッキングシートに触れることが出来るくらいになったらクッキングシートをもってカステラをアルミホイルの焼型から抜きます。クーリングラックにのせて触っても火傷しない程度まで温度が下がるのを待ちます。温度が下がったら紙型を剥がさずにすぐにラップでぐるぐる巻きにして蒸発を防ぐとともに冷蔵庫に半日ほど入れてお冷やします。これで口溶け感がグーッとよくなります。
一般に食材(炭水化物、タンパク質など)に含まれる成分では水の熱伝導率がとびぬけて高く(0.600 W/(m・K))、そのため焙焼時間は水の含有量に左右されると言えます。カステラは”如何に水分を保持した状態でしっとり焼き上げるか”が焼成の基本テクニック。最近は電子レンジ調理(microwave cooking)も流行っている様ですのでこれを用いてうまく焼き時間と熱量の設定条件を決めることができれば家庭でも大量に焼き上げることが可能かもしれませんね。