Fig Cream& Apple Mille-Feuille: ラフパフ(Rough Puff)を用いてミルフィーユを作る。(Rough Puff Pastry その1)

ボリューム感たっぷりのパイ生地にイチジクのクリームを挟んでリンゴとアーモンドクリームをトッピングにしたミルフィーユを作る。

ミルフィーユ(mille-feuille)はパイ生地( pâte feuilletée)の間に種々のクリームを挟んでを3枚重ねて作成します。パイ生地の作成方法には2種類あり、①フィユタージュ(パート・フィユテ): フランスパイ生地の基本で、デトランプ(小麦粉、油脂、塩、水を混ぜた生地)の中央にバターを包んで折り込んで作成する、②ラフパフ:イギリスパイ生地ですが、いわゆるラピッドフィユタージュに相当します。ラフパフは簡単に、短時間で作成することができますし仕上がりも美しい層構造をしていますので自家製ミルフィーユの生地にはもってこいの生地です。

Ingredients:材料と配合組成

パイ生地作成には仕上がりのサクサクした食感を意識して小麦のタンパク濃度を調整しますが、濃度調整は基本的に薄力粉、強力粉、コーンスターチを用います。使用している薄力粉のタンパク濃度が基準となりますが、トップバリューの小麦粉は9.0%(w/w)ですので単独使用で自分が想定しているサクサク感に仕上がります。ハードに仕上げたいならコーンスターチを混ぜて7.5%位に調整、ソフトにしたいなら強力粉で置換していけばよいですが強力粉を混ぜるとその分水を吸収しますので加える水を増やして調整する必要があります。仕上げの際の生地のまとまり具合をみての調整が必要です。

Rough Puff (English Pie Dough)Amount (for total 350 gram pie dough)
Superfine Sugar4 gram
Water50 gram
Cake Flour210 gram
Salted Butter150 gram
Rough Puff : All ingredients should be chilled in a fridge before use. When increasing softness, combine bread flour to make blended flour ( ie, plain flour ( ratio cake flour to bread flour equal to 1 : 1)) and add water. For instance, blending ratio is as follows: 150gram plain flour (75 gram cake flour and 75 gram bread flour), 150 gram salted butter, 70 gram water.
Creme d’amandesAmount for 5 Mille-Feuille
Beaten Egg25 gram (1/2 ea.)
Powdered Sugar25 gram
Almond Flour25 gram
Salted Butter25 gram
Creme d’amandes : Combine each component with the same volume.
Fig CreamAmount for 5 Mille-Feuille
Heavy Cream (cold)100 gram
Superfine Sugar10 gram
Fig Puree50 gram
Fig Cream : Fig puree is previously made. Mix creme shantily and fig puree well.

Instructions: 調理法

<1>パイ生地の作成
Rough puffで作成するときは使用する材料をすべて冷蔵庫で冷やしておきます。特にバターは”キンキン”に冷やしておきます。途中で解けてきたら練りパイ生地になってしまいますので注意が必要です。
オーブンを180℃で前もって加熱しておきます。
①50グラムの水と上白糖4グラムを混ぜます。混ざったら冷蔵庫で冷やしておきます。
②あらかじめ冷やしておいた薄力粉210グラム、バター150グラム(適当にナイフでキューブ状にカット)をボウル大に入れます。
ペーストリーブレンダーを用いて切るように混ぜていきます。
③バターが米粒サイズになったら冷しておいた砂糖水を加えます。この時一気に投入せず木べらを用いて生地のまとまり具合を見ながら分量を調整します。べたつかない程度に加えます。
木べらでソフトに混ぜながら生地がまとまって団子状になってきたら、新聞紙の上にラップを敷いて強力粉を適量撒きます。その上に木べらで生地をすくって全部載せます。少し木べらで平らにしたらラップで大体正方形になるように包みます。ローリングピンで上からプレスして一様に平坦に仕上げます。この後冷凍庫に8分位入れて休ませます。
⑤冷凍庫から生地を出して、少し柔らかくなるまで待ちます。強力粉を振ってローリングピンで平らに伸ばします。3つ折りにしますので長方形に伸ばします。生地の厚みは5mm位にします。これを両端から織り込んで3重層にします。これで生地は3層になりましたのでもう一度平らにします。ここで生地が柔らかすぎる様なら冷凍庫に入れます。
⑥この作業を自分が必要な層数になるまで繰り返します。n回この過程を繰り返すと3n層になりますので薄いパイ生地を作成する場合は2-3回繰り返しでよいと思います。今回は5回⑤の作業を繰り返しています。最後に3-5mm位の厚さに伸ばした後サイドをナイフでトリミングして長方形に仕上げます。
⑦フォークを用いてピケをします。これはタルトを作成するのと同じやり方です。
⑧好みのサイズにカットします。天板にクッキングシートをし下面の焦げ付き防止にパウダーシュガーを均等に篩います、その上にカットした生地をのせます。上面にもパウダーシュガーを篩います。
⑧オーブンで180℃ x 25分位焼きます。

Making rough puff : All ingredients, especially butter, should be chilled in a fridge before use. Preheat the oven up to 180C. ①Stir 50 gram water and 4 gram superfine sugar in a small bowl. Chill it cold in a fridge.② Sieve 210 gram cake flour in a large bowl and dump 150 gram cubed salted butter. Press to combine them with a pastry blender until the butter gets in the size of a grain of rice. ④ Pour 50 gram cold sugar water gradually into the flour-butter mixture. Gently mix with a wooden spoon to make a chunky mass. Spread the dough on a roughly floured plastic-wrap to wrap it up in a square shape. Roll the dough with a rolling pin to flatten in a square shape. Freese it for about 8 minutes. ⑤ On a lightly floured wrap surface, roll the dough until 3 times the length, to a rectangle. Fold the top third down to the center, the the bottom third up and over that. While the above mentioned sequence counts 1 set, repeat 5 sets that yields total 3×5 layers in the dough. Final version of the dough should have φ5 mm width with pressed to flatten. If the dough gets sticky during the procedure, freeze it in a fridge for 8 to 10 minute and continue. Trim the dough with a knife into a rectangle. ⑦ On the lightly floured surface of the pie, do “piquer” with a fork. ⑧ Cut into the adequate size, place it on a parchment-papered plate with appropriately powder sugar sieved. Then, dust powder sugar on the surface. ⑨ Oven-bake at 180C for about 25 minutes.

<2>パイ生地の焼き方
①パイ生地を焼く前にフォークでピケをして空気(水蒸気)の逃げ道を作っておきます。パイ生地内部に含まれる水分と空気が等温膨張により生地を膨らませる仕事をします。ピケをすることで膨張圧を調整してやります。
②パウダーシュガーを篩って天板に敷いてあるクッキングシートへの焦げ付きを防止します。
③表面を平坦にしたい場合は、表面にクッキングシートかアルミホイルを敷いて上から金属製のトレイをのせて少し上から加圧しておきます。この時生地表面に網目構造などをもつ金属を置いておくと生地の表面に模様を写すことができます。
④180℃で表面がきつね色になるまで(20-25分くらい)焼きます。焼成開始10分前後で生地が膨らみ始めます。
⑤クリームダマンドを生地の表面に乗せてリンゴを適当にカットしてのせて焼くとアップルパイになります。単独でアップルパイにするときは切れ目を入れたりして工夫するとパン屋でよく見かけるようなパイ菓子に仕上がります。

How to oven-bake an English pie : ① Before start baking, do “piquer” on a surface of the dough to release vaporized water , the pressure of that puffs up the each layer in isothermal expansion.”Piquer” removes the excess pressure. ② Sift powder sugar on a parchment paper to prevent the dough getting scorched and stuck to the bottom. ③ To make the surface flatten, place a metallic tray as a weight. ④ Oven-bake at 180C for 20-25 minutes until the surface gets golden brown. Usually, it starts to rise up in about ten minutes. ⑤ When it comes to an apple pie, cover the surface with almond cream and set sliced apples. By adding further construction , it willl become like a baker’s apple pie.

<3>クレームダマンドの作成法
クレームダマンド(アーモンドクリーム)はタルトのセクションでも使用しましたので端折ります。
①溶き卵1/2個(25グラム)、アーモンドフラワー25グラム、パウダーシュガー25グラム、バター25グラムをボウル小に投入します。
②小型のフラワーホイッパーで、均等にクリーム状になるまで混ぜます。
③クリーミーになったら完成です。1日冷蔵保存できます。

Creme d’amandes: ① Prepare 25 gram beaten egg, 25 gram salted butter, 25 gram almond flour and 25 gram powdered sugar in a small bowl. ② Whisk it with a small flower whipper until it gets creamy. ③ Keep it in a fridge until use.

<4>組み立てと仕上げ
①まずホイップクリーム(クレームシャンティイ)を作成します。よく冷やした生クリームに上白糖10グラム混ぜて、電動ホッパーでstiff peakまで仕上げます。
②イチジクのピューレ(冷凍保存している場合は常温に戻す)を50グラム加えて電動ホイッパーで均一になるまで混ぜます。出来上がったら絞り袋に入れます。
③表面を平坦に仕上げたパイを、一番下にまず敷きます。次にその上にイチジクのクリームを絞ります。
④その上にパイを1層載せます。もう一度クリームを絞ります。
⑤最後にリンゴの載せてあるパイを乗せます。これで完成です。

Assembling : ① Electric-whisk 100 gram cold heavy cream and 10 gram superfine sugar until stiff peak form. Creme Chantilly has done. ② Add 50 gram fig puree (previously made) and electric-whisk evenly. Transfer the fig cream into a pastry bag. ③ Place the faltten pie and pipe the cream over it. ④ Set the another flatten pie on the cream and pipe the fig cream as above mentioned. ⑤ Set the pie-plate decorated with the sliced apples and almond cream over the top.

ちなみにタンパク濃度を落として薄いパイ生地を作成すると下図のような感じに仕上がります。食感は硬めでパリパリした感じに仕上がっています。イチゴミルフィーユはこんな感じに仕上げたものを店頭でよく見かける感じがします。好みの問題だと思いますがタンパク濃度が9~12%くらいの生地が美味しような感じがします。パイ生地も作成者のこだわりがはっきりと表現される焼き菓子だと思います。

Strawberry Mille-Feuille
Strawberry Mille-Feuille

Sponge Cakeを作る (その5-2); シフォンケーキを極める part 2-2 : 5種類のシフォンケーキサンプル( A→E )から、生地の断面構造と食感を比較し、最適な小麦粉/砂糖の配合比( high ratio)と卵黄/卵白混合比を決定、シフォンケーキのオリジナルレシピを完結する。

modified chiffon cake

基本的なシフォンケーキの配合比を変更してオリジナルなシフォンケーキを作成しにいきました。食感や卵黄の風味などそれぞれ好みがあると思いますので少しライトで引き締まった食感のシフォンケーキに仕上げてみました。

まずは前回の色々な卵黄:卵白の配合比から美味しそうなスポンジに発展しそうなベースの生地をチョイスします。略号はEY: 卵黄、EW: 卵白、PSS: 粉砕上白糖、CT: クリームオブターター、VO: バニラオイル、BP: ベーキングパウダーです。作成方法はシフォンケーキ標準レシピの常法に従って5種類のサンプル生地( A→E )をφ 6 cmのラメキンで焼成しました。

A→Eまでの断面を観察します。A: EY: EW =0:5、B: EY: EW =1:5、 C: EY: EW =2:5、D: EY: EW =3:5、E: EY: EW =4:5と左から右へ並んでいます。D,Eは焼き時間を延長する必要があり、Eは構造強度が強く質感があるためクッキングペーパーの隙間を破って膨張したため裂けました。

Cut-surface of sample cakes with the various combination of egg yolks per egg whites : Figures correspond sample A to E from left to right. Sample A is a typical angel food cake. The ratio egg yolks per egg whites is; 0 in A, 1/5 in B, 2/5 in C, 3/5 in D, 4/5 in E. Unfortunately, sample E ruptured during oven-bake.

5種類のサンプルからサンプルCをチョイスしました。触感がエンゼルフードケーキに近く、焼成した卵黄の食感も程よい感じでBPによる縦方向の引き延ばしでさらに口当たりの改善が得られそうな印象でした。下図の中央左はエンゼルフードケーキ、中央右は基本のシフォンケーキ(BP使用)の断面、右図がサンプルCの断面です。BPによりCの断面がどのように変化するか大まかな方向は予測できそうです。

The sample C was selected for its modification. I assumed that the sample C will change its texture into that close to a typical chiffon cake plus an angel food cake with using baking powder.

サンプルCをベースにオリジナルなシフォンケーキの配合を考えました。卵黄:卵白の比率は2:5前後をチョイスします。これを軸に水分/小麦粉比(バッターの粘度とベーキングパウダーの効果に影響)、砂糖(上白糖)/小麦粉(>1(0.75)のhigh ratioに収める)に計算をして微調整します。水分比のカギになる牛乳(換水値90)の量は卵黄混合液に小麦粉を少量ずつ混合し、バッターの粘度(consistency)を見ながら少しずつ補充した結果、total 40 ml加えました(換水率からの理論値は10 ml相当です)。薄力粉の総使用量は102 g となりました。配合組成を下記に示します。今回作成したバッターをChiffon C、前回作成した基本のシフォンケーキをChiffon N, エンゼルフードケーキをChiffon Zとし、教科書的なシフォンケーキをchiffon Tとしています。C, N, Zはφ18cmのケーキパン用の用量(実測値で単位はグラム(g))で、Tは小麦粉を100とした時の配合比で示します。略号はPSS: Powdered Superfine Sugar, GS: Granulated Sugar, CT: Cream of Tartar, VO: Vegetable Oil, BP: Baking Powderです。

IngredientsChiffon C Chiffon N Chiffon Z Chiffon T
Cake Flour10213060100
PSS (GS)841046081 (108)
Whole Egg143
Egg Yolk52 (2.8 ea)74 (4 ea)
Egg White226 (7 ea)173 (5 ea)210 (5 ea)
CT31.331
VO405240
Water (Milk)(40)(104)80(88)
Salt2.02.512
BP454
Vanilla Oila few dropsa few dropsa few drops
Almond Essencea few drops
Baking Trick170C x 40 minutes 170C x 55 minutes 170C x 35 minutes
Blending Ratio of the Chiffon Cake C : Chiffon C → modified version (new), Chiffon N → conventional chiffon cake previously made, Chiffon Z → basic angel food cake, Chiffon T → basic chiffon cake (from text book)

入手した卵による誤差が微妙に出てきますので実測値だと同じ2個でも変わってきますので卵黄重量は、このシリーズの初期値である18.5 g/1個で統一してカウントしなおしています。これにあまりこだわりすぎるとお菓子作りが嫌になってきますのでほどほどの落とし所にしました。卵黄/卵白重量比では23%位になっていますので少し軽い食感に仕上がります。濃厚クリームやチョコレートグレーズなどで少しこってりしたフロスティングをしてもしつこく感じることはなさそうです。

Instruction: 調理法

シフォンケーキ作りの常法に準じますので端折ります。
①卵黄3個分、粉砕上白糖42グラム、牛乳40グラム、キャノラオイル40グラムを耐熱ボウルに入れ、Bain-marieで混合します。
②薄力粉102グラム、ベーキングパウダー4グラムを少しずつ篩い、ホイッパーで混ぜて安定した乳化状態にします。少し粘調ですがグルテンが析出してくるほどではないです。
③7個分の卵白にクリームオブターター3グラムを加えて、電動ホイッパーで泡立てします。粉砕上白糖を加えstiff peakのメレンゲに仕上げます、
④go back methodにしたがい両者を混合し、均一な生地になったら焼型に注ぎます。多すぎるようならラメキンに注いでカップケーキのように一緒に焼きます。ラメキンは170C x 20分、チューブパンの方は170C x 40分焼きます。
⑤ラメキンのケーキは熱いうちにパレットナイフで側面をぐるっと切り離してお皿にひっくり返して抜き出します。これで焼縮みは最小限になります。チューブパンはひっくり返してマグカップの上で冷まします。

Modified chiffon batter: Place 3 egg yolks, 42 gram powdered superfine sugar, 40 gram oil, and 40 gram milk into a middle bowl over Bain-marie and mix well. Shift 102 gram cake flour and 2 gram salt, 4 gram baking powder over the egg yolk mixture,and whisk until well incorporated. Place 7 egg whites and 3 gram cream of tartar in a metal bowl, and electric-whisk until soft peak form. Gradually adding the powdered superfine sugar, electric-whisk until stiff peak form. According to the go back method, combine the egg yolk mixture and the stiff peak meringue to fold it gently until it gets smooth and even. Pour the batter into the tube pan and oven-bake at 170C for 40 minutes.

膨張率から考えて、チューブパンに注ぐバッターの量は高さが2/3位に届くくらいが丁度いい感じでした。ラメキンで焼いたものは形、触感もなかなか行ける感じでしたので相性のいいフロスティングを特別に何か考えたいところです。

シフォンケーキのほうは、スポンジの味に影響しないようにパイナップルとフォンダンでトッピングしようと試みましたがちょっとした油断でフォンダンがオレンジリキュールカラメルになってしまいましたが、結果オーライということで完成です。

Final version of the modified chiffon cake

チョコレート苦手派流オリジナルシフォンケーキの配合組成は、
薄力粉 102グラム、粉砕上白糖 84グラム、卵黄 3個、卵白 7個、クリームオブターター 3グラム、植物オイル 40グラム、牛乳 40グラム、塩 2グラム、ベーキングパウダー 4グラム、バニラオイル 少々
オーブンタイム 170℃ 40分
となりました。

Sponge Cakeを作る(その5-1) ; シフォンケーキを極める part2-1: 教科書的なエンゼルフードケーキを基準に、小麦粉、砂糖、卵黄、卵白の比率を少しずつ変化させ教科書的なclassic chiffon cakeの組成になるまでA→Eの5段階のバッター(batter)サンプルを作成しオリジナルシフォンケーキの配合を決定するための予備試験を行った。

クラシックシフォンケーキ

基本のシフォンケーキ:Classic Chiffon Cake

前回シフォンケーキの原点であるエンゼルフードケーキを作成しゼロの「基準」を確認しました。今回はこの基準点から卵黄重量と保水量を少しずつ変化させながら変化の方向軸を確認に行きます。油脂にバターを加えるとテクスチャーの変化が大きすぎて方向性が分からなくなりますので油脂はオイル(キャノラオイル)に統一し、乳化に問題のない比率で加え、卵黄分量に比例させて増量します。その分保湿に必要な水分を牛乳で加えます。保水量は標準的なシフォンケーキの重量比から使用する卵黄重量に比例換算して計算しました。また今回も構造の弾性/歯ごたえに影響するベーキングパウダーは使しません。鉛直方向への膨張はメレンゲの起泡性と水蒸気圧のみを利用します。

①エンゼルケーキの立ち位置(座標)を”0″と決めましたので、個数換算(卵黄(個)/卵白(個))を基準とする水平軸(仮にX軸上に採ると)基本的なスポンジケーキの位置Sは、S=1.0(1/1)にあることになります。位置の変数xは、0<x<1にある条件でxはシフォンケーキの集合の要素を満たします。x=0.8(4/5)の位置がシフォンケーキの標準混合比となります。ちなみにx>1がカステラスポンジケーキの要素となります。まずは、エンゼルケーキ(x=0)の対極に相当するx=0.8の基本のシフォンケーキ(Classic Chiffon Cake)をΦ18 cmのシフォンケーキパンでこしらえます(ベーキンングパウダーは使用、ただし油脂はキャノラオイルに限定)。この風味と食感をよく覚えておきます。これが食感の方向ベクトルを推定するヒントになるはずです。

卵黄/卵白配合比と小麦と砂糖の配合比(ratio high / low)から分類したスポンジケーキの分類

教科書的な基本のシフォンケーキの配合組成は以下の通りです。Encyclopedia of Food and health 2016: P 582より引用させていただきました。これより上白糖を用いる場合の比率はシフォンケーキで81、エンジェルフードケーキで161と概算しました。

Chiffon Cake
(% Flour Weight)
Angel food Cake
(% Flour Weight)
Flour100100
Granulated Sugar108215
Egg White277
Whole Egg143
Cream of Tartar14
Oil40
Water 80
Salt21
Baking Powder4
教科書的なシフォンケーキとエンゼルフードケーキの配合組成:Encyclopedia of Food and health 2016: P 582より引用

ここから分量をΦ18 cmサイズのシフォンケーキ専用の焼型に合わせて計算、微調整していきます。ただし卵黄/卵白=4/5(個数比)で作成しますので少し分量修正が必要になります。卵白の換水値を80、牛乳の換水値90とし、卵白重量は1個34.6グラムでしたので卵黄より1個分多い卵白は約28グラムの水分とカウントしました。下記に今回作成した標準タイプのシフォンケーキの配合組成表を示します。
ただし以下のHigh Ratio ケーキの基本公式を使用します(焼型容積率75%で概算)。

① 卵の総用量(グラム)+ ミルクの総用量(グラム)>グラニュー糖の総用量

今回は卵黄74グラム+卵白173グラム=247グラム(実測値)、換算値は74 + (173-34.6)=212.4(=212グラム)の全卵総重量としました。全卵重量/小麦粉重量=1.63 (オリジナル1.43より14%誤差あり)

ミルク用量は換算値で104グラムなので トータル316グラム、上白糖総用量uはその3/4以下の分量なので237グラム未満と計算できる。(*多いほど仕上がったケーキの保湿が良好となり、長持ちする。)
換算値は、u=104グラムであるからこの条件を十分満たしている。

②小麦粉の総用量<砂糖の総用量 上白糖では小麦粉値との重量比0.75以上
104/130 = 0.81 > 0.75 これも条件をみたしている。

以上の約束定理を考慮した上で作成した成分配合表は以下のようになりました。これもある意味では結果的にオリジナルな配合組成になります。比較的きれいな数値になっているのではと思います。

IngredientsFor Φ18 cm tube pan
Egg Yolk4 e.a (74 gram)
Powdered Superfine Sugar52 gram
Vegetable Oil (canola)52 gram
Whole Milk104 gram
Cake Flour130 gram
Salt2 gram
Baking Powder5 gram
Egg White5 e.a.(173 gram)
Cream of Tartar2 gram
Powdered Superfine Sugar52 gram
Baking Trick170C x 55 minutes
Basic Chiffon Cake Recipe

Instructions: これはほぼエンジェルケーキと同じですので端折ります。
①卵黄、砂糖、オイル、牛乳をBain-Marieで混合します。
②小麦粉、塩、ベーキングパウダーを篩い、①と混合し安定した乳化状態にします。
③卵白にクリームオブターターを加えて、電動ホイッパーで泡立てし砂糖を加えながらメレンゲを仕上げます。
④メレンゲと卵黄混合液を混ぜてバッターを完成し、焼型に注ぎ170℃で55分オーブンで調理します。

Making chiffon batter: Place 4 egg yolk, 52 gram sugar, 52 gram oil, and 104 gram milk into a middle bowl over Bain-marie and mix well. Shift 130 gram cake flour and 2 gram salt, 5 gram baking powder over the egg yolk mixture,and whisk until well incorporated. Place 5 egg whites and 2 gram cream of tartar in a metal bowl, and electric-whisk until soft peak form. Gradually adding sugar, electric-whisk until stiff peak form. According to the go back method, combine the egg yolk mixture and the stiff peak meringue to fold it gently until it gets smooth and even. Pour the batter into the tube pan and oven-bake at 170C for 55 minutes.

オーブンで170度で55分焼いていく際のシフォンケーキが膨らむ過程を示します。焼き始めて5分ほどで表面が膨らみはじめ、10分で明らかに上に凸、20分で焼型の側面の高さを超えてしまったので表面にヒビが見え始め、25分で膨張はピークに達し接触面を失った生地の頂部は割れました(少しバッターが多すぎたことが原因でしょうね、容積率は55~60%でいい印象)。いずれにせよ表面はカットして平らにしますので結果的にはこのことはどうでもいいことにはなります(少しははみ出ないとカット出来ない)。

Thermal expansion of the batter: In 5 minutes baking at 170C, the batter begins to show its elevation. In 10 minutes, the apparent lentiform elevation appears. In 20 minutes, the elevation of the batter gets over the side wall of the tube pan to cause disruption of the surface. In 25 minutes, it reaches the peak elevation with marked crack.

オーブンから取り出した後は、焼型をひっくり返しマグカップなどの上に乗せて室温で冷ませます。上部の焼型からはみ出した部分をカットし表面を平らにします。保管する場合は水分が蒸発しないようにラップで包んで冷蔵庫に入れておきます。今回はスポンジの味にあまり影響がでないように植物性ホイップクリームであっさりとフロスティングしました。標準の4:5混合のシフォンケーキ、流石に公式化されて公表されているだけあって一部の隙もない食感の完成度です。ここから卵黄の混合比を変えてオリジナルな配合黄金比を探りにいきます。

クラシックシフォンケーキ完成

②次に、ミニチュア版のカップケーキサイズのサンプルA〜E(ベーキングパウダーなし)で卵黄の含量による食感の変化を探りにいきます。サンプルはA: zero(卵黄混合0)、B: 卵黄:卵白-1:5相当(個数比)、C: 卵黄:卵白-2:5相当 、D: 卵黄:卵白-3:5相当 、E: 卵黄:卵白-4:5相当 (標準のシフォンケーキ配合)、 として設定しすべてφ6cmのラメキンで作成しました。焼き時間は170℃x20分を目安としました。配合組成表は以下の通りです。略号はEY: 卵黄、OI:オイル、MI:ミルク、EW:卵白、CT:クリームオブターター、SA:塩、PS: 粉砕上白糖、CF:薄力粉、TE:使用した卵黄混合物、TM: 使用したメレンゲー薄力粉混合物、TV: total volume、BT: Baking Time(焼き時間)です。卵黄混合物は今回卵黄5個で81グラムでしたので卵黄1 個20グラムを使用する際の用量に修正しました。これにより数学的に美しく目視でわかりやすい配合に組み上げました。最終比率(卵黄/卵白パーセント)は、A=0%, B=11.7%, C=23.5%, D=35.2%, E=47.0%となります。基本のシフォンケーキに使用されている卵黄:卵白の重量比は、1:2~3であることがわかります。

IngredientsABCDETV
EY048121640/81(5)
PS0246820
OI03691230
MI0510152050
TE014284256140
EW3434343434170(5)
CT0.60.60.60.60.63
SA0.20.20.20.20.21.0
PS121212121260
CF121212121260
TM5959595959354
BT2020202530
Blending Ratio of the Sample Batter : Abbreviations are as follows; EY: egg yolk, OI: oil, MI: milk, EW: eg white, CT: cream of tartar, SA; salt, PS: powdered superfine sugar, CF: cake flour, TE:; total egg yolk mixture, TM: total meringue flour mixture, TV: total volume, BT: baking time

だいぶ長編記事で複雑化してきたのでここで一旦切ります。次回この結果と、結果からチョイスした配合でΦ18cm大のオリジナルシフォンケーキを焼いてみます。

Sponge Cakeを作る (その2); スイスロール(Swiss Roll)を極める part 1: 究極のスイスロールの生地を求める予備実験として小麦粉のタンパク濃度に注目、その他の材料の配合比と焼成時間を一律固定して作成した生地のタンパク濃度の変化に伴う断面構造の変化と折り曲げに対する強度を比較してみた。

スイスロールケーキ

ロールケーキ: Cake Roll ( Swiss Roll または Gateau Roule)

ロールケーキの正式名称(英語)はSwiss Rollで、フレンチペーストリーではGateau rouleに相当するようです。前回スポンジケーキの基本骨格の配合重量(gram)黄金比として、全卵(E)、砂糖(S)、小麦粉(F)の比率をE : S : F = 2: 1: 1 と暫定しました(これは多くの海外、国内のauthorのサイトを参照して最頻値と考えられたことを根拠としました)。ただしこれはグラニュー糖を用いた比率ですので、上白糖に置換しなおして修正黄金比は、E : S : F = 8 : 3 : 3と暫定しました。油脂の混合比もオイルであれば小麦の半分量バターでを使用するのであれば小麦の10~20%位ジェノワース相当)のように大体の混合比に落ち着いているように見て取れます。今回は油脂(オイル)の混合比を小麦の重量の半分に固定して小麦粉のタンパク(グルテン)濃度を濃い方向から低い方向に変化させて巻きやすさと食感の極値に幅寄せしてみました。人間の感覚として1%の違いははっきりと認識できない可能がありますので簡易計算できるレベルで2~3%づつ濃度を落としてみました。

Ingredients: 材料と 配合組成

配合組成は以下の通りです。以下、たんぱく濃度(protein percentage)はPPと略します。すべてgram表記です。Aが前回のスポンジケーキ(今回検証の基準点です)。まずB, Cを同じ条件で火入れできるように天板に同体積の紙型を2つ乗せ1度に焼けるように1/2の分量で作成しました。材料や混ぜ具合で差がでないように卵黄から塩を混ぜるまでの過程と卵白からメレンゲを起こすまで過程は卵3個分の分量でAと同様に1つにまとめて作成し小麦粉を加える時点で卵黄混合液を2分(約80 gramずつに2分)、メレンゲは約58 gramづつに2分して最終段階の生地を作成し紙型に注いで目立つ気泡を追い払ったあとすぐにオーブンで調理しました。使用した材料はいつもの材料です。Cake Flourは薄力粉、Bread Flourは強力粉(Topval)を示します。

A: PP=11.2B: PP=9.3%C: PP=6.2%
Egg Yolk31.51.5
Superfine Sugar402020
Vegetable Oil301515
Whole Milk301515
Salt211
Cake Flour303020
Bread Flour3000
Cornstarch0010
Egg White31.51.5
White Wine vinegar6drops33
Superfine Sugar201010
Baking time170C x 22min180C x 10min180C x 10min
D: PP=11.2% E: PP=3.1%
Egg Yolk 1.51.5
Superfine Sugar 2020
Vegetable Oil 1515
Whole Milk 1515
Salt 1.51.5
Cake Flour 1510
Bread Flour 150
Cornstarch 020
Egg White 1.51.5
White Wine Vinegar 33
Superfine Sugar 1010
Baking time 180C x 10min 180C x 10min
Ingredients are shown in the figures above. The concentration of protein has been adjusted into 9.3% in B, 6.2% in C, 11.2% in D, and 3.1% in E, individually. All cakes were treated in the same way and condition through cooking. I assumed that the best concentration would exist in between 6 and 7 percent. Considering that, upper limit in 11.3%, and lower limit in 3.1% are selected for the extreme value.

バイオレット、スーパーバイオレットのタンパク濃度を考慮した上で、B-Cの間に理想的なタンパク濃度があると推定していますので両極限としてAと同じPPのものD(PP=11.3%)とCをさらにコーンスターチで希釈したものE (PP=3.1%)をB,Cと同じ条件で作成し仮に上方極限、下方極限値と仮定して比較サンプルのロールケーキの生地を4種類作成しました。

Procedure: 手順

紙型は、14.5 cm x 24 cm x 3 cmを2つ作成しホッチキスで止めて合体させました。これで2種類の生地に対してほぼ同じ条件で火入れすることができます。オーブンは180℃で予熱し、生地を注いですぐに焼き工程にはいりました。生地作成方法は別立て法で、いつもの通りseparation forming methodに従いメレンゲを作成し、最終段階で卵黄混合液とメレンゲを混合しました。foldの回数はきちんと混合されたと確認できる最低限の回数(ほぼ30回)に限定しました。

簡単に工程を説明しますと
Bain-Marieで、耐熱ボウルに卵黄3個(B+C=58グラム, D+E=61グラム)に上白糖40グラム、キャノラオイル30グラム、牛乳(酪農牛乳)30グラム、塩2グラムを投入し砂糖が解けて全体がスムースになるまでフラワーホイッパーで攪拌、火から離します。
②ホイッパーで卵黄混合液がクリーム状でやや蒼白調になるまで攪拌します。
③ここで卵黄混合液を均等に2分します。ほぼ80グラムずつになります。
④それぞれの小麦粉分量相当を振るってスパチュラで混合し安定した乳化状態にしておいておきます。
⑤卵白をメタルボウルに投入し白ワインビネガーを3グラム注ぎ、電動ホイッパーで低速で泡立てします。3分ぐらいでsoft peakに到達しますので、ここで砂糖20グラムを全量投入し高速で泡立てstiff peakで完成です。
⑥メレンゲと卵黄混合液を混和し約30回スパチュラで混ぜて生地完成としました。
⑦完成後、即座に型に注ぎオーブン焼きします。

作業工程 B-C
The pictures show the sequence of making the batter of B and C.
作業工程 D-E
The pictures depict the sequence of making the batter of D and E.

B, C, D. Eすべて180℃ X 10分加熱し目視でいわゆる” golden brown”といわれる最適な焼き加減に到達したことを確認しました。タンパク(グルテン)濃度の差(11.3~3.1%)に対して、焼き時間はほとんど依存しない形で終了しています。左上段 PP=9.3%、 左下段6.2%、右上段11.2%、右下段3.1%。

記事と焼きあがり
Both of them receive oven-baking at 180C for 10minutes. Pre and post-baking batter has shown alternately. In the left picture, 9.3% PP batter is on the upper, and 6.2% PP on the lower. In the right picture, 11.2% batter is on the upper, and 3.1% on the lower.

焼きあがったケーキの表面と断面を見てみますと表面はタンパク濃度が低いほうが濃い色調に焼きあがっています。裏面のシートのはがしやすさはタンパク濃度が低いほど楽で高いと表面が一緒に剥がれます。断面はタンパク濃度が低いほど蜂巣構造(スポンジ)が荒く、一つ一つが大きくなってきています。左端PP=11.2%、左中央9.3%、右中央6.2%、右端3.1%。

生地の構造の変化
The cross sectional image reveals that the lower is the protein percentage of batter, the more brown-colored it has baked. Conversely, honey comb pattern is more rough and more remarkable of the lower percentage of protein. The baking sheet can be easily removed of the lower percentage of protein.

巻きに対する柔軟性は11.3%でも3.1%でもそれほど困難な感じはなく90度折り曲げに対しても即ひびが入るような印象はありませんでした。火入れを温度180度に上げ焼き時間を10分に短縮したことで、表面が早く焼けることによる生地の内部の水分蒸発とタンパク質の変性が抑えられた結果と考えられました(ステーキ焼くのと同じですね)。

生地の弾力性
All sponge cakes are durable against bending at a right angle. No intimidation is felt.

ロールケーキ用の生地は基本組成は普通の台座のスポンジケーキとほぼ同じですから、以上の結果から高温での短時間調理(180℃ X 10分前後)が必須のbaking trickであると再認識しました。ロールケーキにもいろいろな焼き方のレシピがありますが、再現性や簡便性を考えたうえで180℃ x 数分というのは公式化していいのではないかと考えました。

Swiss Roll 焼き時間の公式: 

180℃ x 数分(表面がgolden brownになるまで)
               目安10分前後

次に食感ですが、ふわふわ感はタンパク濃度が下がるほど感じられますがそれとともになにか物足りなさというか重量感(ずしっと来る歯ごたえ)は失われていきます(日ごろ私がプロテインを愛用しているせいかもしれません?)。6%前後まで下がるとなにか一味足りない感じがします。フィリング(中の詰め物)が加わると食感は変わりますが、グルテン含量が下がると今一つ物足りなさを感じてきます。

断面の構造を見てみますと、濃度が下がるほど蜂巣構造が荒くなってきています。見た目は6%位が最も美しいように感じます。3%濃度ではやはり巻きに対して脆弱さがあり巻き目の下段部位が冷蔵庫にいれておいた間に裂け目が入っていました。たんぱく3%はだれでも初回で簡単に巻けるという点では除外項目に入るようです。下図で左上はタンパク11.2%(これも見方によっては美しい)、右上が9.3%(若干メレンゲ の量が少なめだったかも)、左下が6.2%(蜂巣構造は最も美しい)、右下が3.1%(ここまでくるとスカスカに見える)になります。

スイスロールの断面
Here show the cut surfaces of various types of Swiss rolls (left upper: 11.2% PP, right upper: 9.3% PP, left lower: 6.2% PP, right lower 3.1% PP). According to decreasing in the percentage of protein, the honey comb pattern gets widen and clear, as you can see.

以上から、見た目と巻きやすさはタンパク6-7%位、味と巻きやすさはタンパク9-10%位と今回は結論しました。次回この6%生地の見た目の美しさに旨さを加えることを考え、オイルをバターに置換して工夫してみます。ということで次回はSwiss Roll part2です。

タンパク濃度の違うスイスロール
I figured that the sponge cake of 9.3%PP has good texture, but instagrammable is the cake of 6.2%PP. I’ll try to add the chewy and rich in flavor to the sponge cake of 6.2%PP in the next corner.

Sponge Cake を作る (その1); 基本のスポンジケーキを作る: 美味しいスポンジケーキの配合組成を考えるにあたり、まず等温不可逆過程における卵白の泡起性と水蒸気圧によるスポンジケーキの膨張性変化、配合組成の関係から探って黄金比決定の足掛かりを作る。

sponge cake tower

基本のスポンジケーキ : Basic Sponge Cake

スポンジケーキは全てのケーキの土台となる基本ですが、これが美味しいかどうかにより出来上がり作品に大きく影響しますので、妥協のできない重要なアイテムです。トッピングやフィリングとの相性を考えつつ、いかにして、口溶けの良い、美味しいものを持ってくるかと常に悩むところでもあります。という事で、今回から美味いスポンジケーキを作る方法を探っていきたいと思います。自由度の高い配合組成を追求して行きます。

まずはスポンジケーキの基本組成から根本的に考えます。スポンジケーキは、卵、小麦粉、砂糖を攪拌ー混合することにより出来上がる生地(batter : バッター)を加熱調理することにより形成されるスポンジ状の焼き菓子で、その生成に卵の起泡性を利用して得られた空気の熱膨張と水蒸気圧を利用します。スポンジケーキの材料で泡気性を示すものは卵白のみでありその他は全て気泡維持を抑制する方向に作用するはずですので適切な混合比が存在するはずです。いろんなサイトで汎用スポンジケーキのレシピを散見しますと、ほとんどは重量比で卵(E):小麦粉(F):砂糖(S)=1:1:1〜2:1:1くらいの範囲に収まっていてよほど変則的な作品でない限り小麦粉(F)と砂糖(S)の分量は同じで、卵(E)の分量をこれに対して増やすかどうか程度のアレンジに留まっている様です(ただし卵黄、卵白の配合分量は様々です)。これに油脂としてBatter(バター)を加えることでほとんどのauthorは口どけが良くなると表現されていて卵の重量の10-30%程度のバターを加えたバタースポンジケーキに仕上げている様に伺います。美味しいスポンジケーキというサブタイトルで色々サイトアップしてある中で最も頻繁に見る配合比は、E:F:S:B = 10 : 5 : 5 : 2前後のジェノワーズスポンジケーキを踏襲した配合でこれに保湿のための水分としてミルクや生クリームなどを加えたものである様でした。そこで恐らく流行の美味しいスポンジケーキの配合黄金比は、E : F : S : B =10: 5 : 5 : 2と考えて良いのだろうと考えました。ジェノワーズを踏襲しているのでバターの比率が低いのだろうと推定しましたが、シフォンケーキでオイルを置換する際に最初の投稿記事で油脂の含量比を5くらいにまで引き上げると口溶けと香ばしさが圧倒的に良くなることは経験していますのでベーキングパウダーを加えてバターの含量比を小麦粉の60〜100%位まで上昇させてみても良いのかなとも考えました。ちなみにE : F : S : B = 1 : 1 : 1: 1に組成配合したものの代表格がビクトリアスポンジケーキです。今回は材料配合の基本骨格の黄金比を公式化する?を考えてみました。

基本骨格となる黄金比を利用してロールケーキ(Swiss Roll)用の角形のスポンジケーキを焼いてみました。

Ingredients: 材料と配合組成

材料はいつもの使用しているものです。小麦粉はplain flour (薄力粉:強力粉=1:1のブレンド)で統一しました。卵の総量が約165gramでしたのでグラニュー糖換算で約82gramの糖を加えることになりますが上白糖換算で60gramに減量できますので、小麦粉=上白糖=60 gramとしました。油脂はキャノラオイルを30gram使用し水分調整に牛乳(酪農牛乳)30 gramを加えシンプルで綺麗な比率での配合組成に設定しました。

VanillaChocolate
Egg Yolk (M)33
Superfine Sugar40 gram40 gram
Whole Milk30 gram30 gram
Vegetable Oil30 gram30 gram
Dark Chocolate12 gram
Salt2 gram2 gram
Vanilla Oilany you wantany you want
Cacao Powder12gram
Plain Flor60 gram48 gram
Egg White (M)3 3
White Wine Vinegar3 gram3 gram
Superfine Sugar20 gram20 gram

Procedure: 手順

①クッキングシートから26 cm x 26 cm x 2 cmサイズの正方形の底面を持つ紙型を作成します。オーブンを170℃で予熱しておきます。
②冷蔵庫に冷やしておいた全卵を卵黄と卵白に分け、卵白は出番まで冷蔵庫に冷やしておきます。先に60グラムのplain flour(薄力粉:強力粉=1:1混合)を振るっておきます。カカオパウダーを加える場合はカカオパウダーを12グラム、その分plain flourを減らして48グラム混合して前もって別容器に振るっておきます。
③卵黄3個分(約60グラム)、上白糖60グラム、常温の牛乳30グラム、塩2グラムを中型耐熱ボウルに入れBain-marieでフラワーホイッパーを用いて攪拌します。
④卵黄混合液に30グラムのキャノラオイルとバニラオイルを数滴加えて十分に混ぜます。ダークチョコレートを生地に混ぜたい場合はキャノラオイルに12グラムのダークチョコレート(カカオパウダーと同量)を混ぜて湯煎で溶かして混ぜに行きます。
⑤メレンゲ混合時のロスを最小限にするため、ここで小麦粉(または小麦粉ーカカオパウダー)を篩って卵黄混合液に混ぜに行きます。乳化を安定した状態にしておいて次のメレンゲ作成に移ります。

procedure1
Pictures of upper row : for chocolate sponge cake, lower row: for vanilla sponge cake
① Make a square-shaped paper mold which has 26 cm x 26 cm x 2 cm (hight) in size with using a cooking paper. Preheat the oven up to 170C. ② Prepare cold eggs chilled in a fridge. Separate egg yolks from egg whites. In advance, shift 60 gram plain flour in a bowl. If applying cacao powder, mix 12gram cacao powder and 48 gram plain flour. ③ Place 3 egg yolks and 60 gram superfine sugar, 2 gram salt in a middle bowl over the saucepan with simmering water ( Bain-marie), and beat until the sugar is completely dissolved. ④ Remove from heat. Add 30 gram vegetable oil (Canola) and a few drops of vanilla oil and mix well. If mixing dark chocolate, melt 12 gram chocolate into the vegetable oil in a double boiler. ⑤Sieve the flour over the egg yolk mixture and whisk until well incorporated to get stable in emulsion.


⑥メレンゲはseparation forming methodで泡立てします。 メタルボウルに卵白3個分(約120グラム)に白ワインビネガーを3グラムほど混ぜ、電動ホイッパーで低速でsoft peakまで攪拌します。残りの1/3量にあたる30グラムの上白糖を2回分に分けてメレンゲに加えながら中速~高速で電動ホイップします。stiff peakに到達した時点で完成です。

procedure02
⑥ According to the separation forming method, pour 3 egg whites and 3 gram white wine vinegar into a metal bowl. Electric-whisk at low speed until soft peak form. Gradually adding 30 gram sugar in 2 batches, continue to electric-whisk until stiff peak form.

⑦go back methodでメレンゲと卵黄混合液を混ぜていきます。最初の1/3量のメレンゲを卵黄混合液に投入し十分にスパチュラで混ぜます。次にメタルボウルのメレンゲに全量戻して丁寧にスパチュラで均等になるまで混ぜます。
⑧天板に紙型を置き、生地を流し込みます。何回か天板を軽く小突いて大きな気泡を追い払っておきます。表面が落ち着いたら直ちに170℃で25分ほどオーブン焼きして完成です。

prodedure03
⑦Following go back method, dump 1/3 volume meringue into the egg yolk mixture and fold it until well incorporated. Then, return it to the meringue in a metal bowl, and gently fold evenly. ⑧ Set the paper mold on a cooking plate and pour the batter into it. Flip it several times to remove large bubbles. Immediately oven-bake at 170C for about 25 minutes.

この作成法では問題点が生じました。香ばしさは問題ないですが仕上がりの生地が硬すぎです(保湿の問題もある様でした)。慎重にタオルを用いて筒型をつけようとしてもヒビが入るレベルのでしたのでロールケーキの生地としては不合格です。焼く前の生地の水分量は適度だと思えましたが、焼きあがったものはパサつき感がありましたので次回この問題点を克服に行きます。問題点を改善するには、①火入れの温度を180~190℃に上げて短時間(半分の10分前後)で焼き上げることで水分の蒸発を減少させる。②小麦粉のタンパク濃度を6%台(バイオレット相当)まで段階的に落とすことを試みる予定です。割れずに誰でも簡単にきれいに巻ける美味しい生地の公式を導きに行きたいと思います。

sponge cake fv
Here is the final version shown. The left picture corresponds to the chocolate sponge cake, right does to the vanilla (plain) sponge cake, respectively. They’re well done, but a little bit firm to make a roll. I figured it’ll require lowering the protein concentration to add cornstarch and shortening the baking time to expose higher temperature.

ということで今回はタワー状に2種類のスポンジケーキを積み上げてみました(単に建設中のマンションが目線に入ったせいです)。中央にはクレームシャンティを用いて、バナナとキウイの薄切りの抱き合わせをフィリングに使いました。生地の接着には冷蔵庫に転がっていたアプリコットジャムを使用しました。なかなか面白い味に仕上がりました。

sponge cake tower
The sponge cake towering.