A→Eまでの断面を観察します。A: EY: EW =0:5、B: EY: EW =1:5、 C: EY: EW =2:5、D: EY: EW =3:5、E: EY: EW =4:5と左から右へ並んでいます。D,Eは焼き時間を延長する必要があり、Eは構造強度が強く質感があるためクッキングペーパーの隙間を破って膨張したため裂けました。
サンプルCをベースにオリジナルなシフォンケーキの配合を考えました。卵黄:卵白の比率は2:5前後をチョイスします。これを軸に水分/小麦粉比(バッターの粘度とベーキングパウダーの効果に影響)、砂糖(上白糖)/小麦粉(>1(0.75)のhigh ratioに収める)に計算をして微調整します。水分比のカギになる牛乳(換水値90)の量は卵黄混合液に小麦粉を少量ずつ混合し、バッターの粘度(consistency)を見ながら少しずつ補充した結果、total 40 ml加えました(換水率からの理論値は10 ml相当です)。薄力粉の総使用量は102 g となりました。配合組成を下記に示します。今回作成したバッターをChiffon C、前回作成した基本のシフォンケーキをChiffon N, エンゼルフードケーキをChiffon Zとし、教科書的なシフォンケーキをchiffon Tとしています。C, N, Zはφ18cmのケーキパン用の用量(実測値で単位はグラム(g))で、Tは小麦粉を100とした時の配合比で示します。略号はPSS: Powdered Superfine Sugar, GS: Granulated Sugar, CT: Cream of Tartar, VO: Vegetable Oil, BP: Baking Powderです。
Ingredients
Chiffon C
Chiffon N
Chiffon Z
Chiffon T
Cake Flour
102
130
60
100
PSS (GS)
84
104
60
81 (108)
Whole Egg
143
Egg Yolk
52 (2.8 ea)
74 (4 ea)
Egg White
226 (7 ea)
173 (5 ea)
210 (5 ea)
CT
3
1.3
3
1
VO
40
52
40
Water (Milk)
(40)
(104)
80(88)
Salt
2.0
2.5
1
2
BP
4
5
4
Vanilla Oil
a few drops
a few drops
a few drops
Almond Essence
a few drops
Baking Trick
170C x 40 minutes
170C x 55 minutes
170C x 35 minutes
Blending Ratio of the Chiffon Cake C : Chiffon C → modified version (new), Chiffon N → conventional chiffon cake previously made, Chiffon Z → basic angel food cake, Chiffon T → basic chiffon cake (from text book)
シフォンケーキ作りの常法に準じますので端折ります。 ①卵黄3個分、粉砕上白糖42グラム、牛乳40グラム、キャノラオイル40グラムを耐熱ボウルに入れ、Bain-marieで混合します。 ②薄力粉102グラム、ベーキングパウダー4グラムを少しずつ篩い、ホイッパーで混ぜて安定した乳化状態にします。少し粘調ですがグルテンが析出してくるほどではないです。 ③7個分の卵白にクリームオブターター3グラムを加えて、電動ホイッパーで泡立てします。粉砕上白糖を加えstiff peakのメレンゲに仕上げます、 ④go back methodにしたがい両者を混合し、均一な生地になったら焼型に注ぎます。多すぎるようならラメキンに注いでカップケーキのように一緒に焼きます。ラメキンは170C x 20分、チューブパンの方は170C x 40分焼きます。 ⑤ラメキンのケーキは熱いうちにパレットナイフで側面をぐるっと切り離してお皿にひっくり返して抜き出します。これで焼縮みは最小限になります。チューブパンはひっくり返してマグカップの上で冷まします。
教科書的な基本のシフォンケーキの配合組成は以下の通りです。Encyclopedia of Food and health 2016: P 582より引用させていただきました。これより上白糖を用いる場合の比率はシフォンケーキで81、エンジェルフードケーキで161と概算しました。
Chiffon Cake (% Flour Weight)
Angel food Cake (% Flour Weight)
Flour
100
100
Granulated Sugar
108
215
Egg White
277
Whole Egg
143
Cream of Tartar
1
4
Oil
40
Water
80
Salt
2
1
Baking Powder
4
教科書的なシフォンケーキとエンゼルフードケーキの配合組成:Encyclopedia of Food and health 2016: P 582より引用
ここから分量をΦ18 cmサイズのシフォンケーキ専用の焼型に合わせて計算、微調整していきます。ただし卵黄/卵白=4/5(個数比)で作成しますので少し分量修正が必要になります。卵白の換水値を80、牛乳の換水値90とし、卵白重量は1個34.6グラムでしたので卵黄より1個分多い卵白は約28グラムの水分とカウントしました。下記に今回作成した標準タイプのシフォンケーキの配合組成表を示します。 ただし以下のHigh Ratio ケーキの基本公式を使用します(焼型容積率75%で概算)。
Blending Ratio of the Sample Batter : Abbreviations are as follows; EY: egg yolk, OI: oil, MI: milk, EW: eg white, CT: cream of tartar, SA; salt, PS: powdered superfine sugar, CF: cake flour, TE:; total egg yolk mixture, TM: total meringue flour mixture, TV: total volume, BT: baking time
Swiss Roll用のスポンジケーキの黄金比を前回捻出しましたが、この比率は非常にシフォンケーキの組成に酷似しています。これは単においしい生地はシフォンケーキであると肯定したにすぎません。そこでシフォンケーキの原点であるクラシックエンゼルフードケーキ(卵黄混合なし、油脂混合なし、ベーキングパウダー混合なし)から少しずつ卵黄/油脂を混合していきオリジナルなシフォンケーキの混合比とHigh ratio cake(砂糖の添加量が小麦粉に比べて相当多いケーキ)に関して極めてみたいと思います。
まず、ゼロに値するもの(卵黄なし)をまず作成してその食感を確かめる必要がありますが、これには①エンゼルフードケーキ(油脂、ベーキングパウダー混合なし)と②ホワイトスポンンジケーキ(バター(混合比 小麦の重量の約1/2)、ベーキングパウダー混合)があります。いずれも基本レシピは周知されていますが、前者はhigh ratio cake(1:2)になります。断面は両方ともピュアーな白色調ですが前者は高級食パンをさらにモフモフにした食感(今回確認)で、後者は柔らかめのスポンジケーキのような食感(以前に確認)になります。油脂(バター)を加えることでの食感の方向性は前回のSwiss roll同様で重量感と保湿感を加える方向にベクトルが向きます。油脂の方向軸は見当がつきますが、砂糖を増量(high ratio)することに対する方向軸は現時点では確認できていません。
Ingredients: 基本のエンゼルフードケーキの配合組成は以下の通りです。原本(Boston Cooking School Cook Book, 1986) では、11個の卵白とグラニュー糖を用いていますが、グラニュー糖よりも卵白に親和性のより高い上白糖(superfine sugar)をさらにミキサーで粉砕したpowdered superfine sugarで統一しました。さらに10 inch(φ25 cm)相当からφ18 cmに減量換算し、卵白重量(実測値)にあわせて焼き時間も微調整しました。 φ18 cm のシフォンケーキ専用の焼き型を使用します。
Ingredients
Amount for φ18 cm tube pan (chiffon cake pan)
Egg white (L)
5 ea (210 gram)
Cream of Tartar
3 gram
Salt
1 gram
Powdered superfine sugar
60 gram
Vanilla oil
a few drops
Almond extract
a few drops
Cake flower
60 gram
Powdered superfine sugar
60 gram
Baking time
170℃ x 35 minutes
Classic Angel Food Cake : The recipe is adjusted to a φ18 cm cake pan.
材料配合組成は下記のとおりです。上記のごとく、小麦タンパク濃度は7%に調整しました。卵はegg yolk 4個で77グラム、egg white 4個で136グラム、 total 213グラムでしたので砂糖は80グラム, 粉類(薄力粉60グラム、コーンスターチ20グラム), 牛乳20グラム、バター60グラム、塩2グラムで配合しました。 バターの略号をB(Butter)として、計算上最終的な配合比 は、E : S : F : B: L = 10.5 : 4 : 4 : 3: 1となりました。
Materials
Amount: for 26 x 26 x 2cm square pan
Egg Yolk
4 ea
Superfine Sugar
60 gram
Whole Milk for dilution liquid
20 gram
Salt
2 gram
Cake Flour
60 gram
Cornstarch
20 gram
Salted butter
60 gram
Egg White
4 ea
White Wine Vinegar
3 gram
Superfine Sugar
20 gram
Baking time
180C x 10minutes
Original Swiss Roll Batter Recipe: When it’s assumed that Egg Yolk →E, Sugar →S, Flour →F, , Butter →B, Liquid →L,, E : S : F : B: L equals to 10.5 : 4 : 4 : 3: 1.
Ingredients are shown in the figures above. The concentration of protein has been adjusted into 9.3% in B, 6.2% in C, 11.2% in D, and 3.1% in E, individually. All cakes were treated in the same way and condition through cooking. I assumed that the best concentration would exist in between 6 and 7 percent. Considering that, upper limit in 11.3%, and lower limit in 3.1% are selected for the extreme value.
紙型は、14.5 cm x 24 cm x 3 cmを2つ作成しホッチキスで止めて合体させました。これで2種類の生地に対してほぼ同じ条件で火入れすることができます。オーブンは180℃で予熱し、生地を注いですぐに焼き工程にはいりました。生地作成方法は別立て法で、いつもの通りseparation forming methodに従いメレンゲを作成し、最終段階で卵黄混合液とメレンゲを混合しました。foldの回数はきちんと混合されたと確認できる最低限の回数(ほぼ30回)に限定しました。
B, C, D. Eすべて180℃ X 10分加熱し目視でいわゆる” golden brown”といわれる最適な焼き加減に到達したことを確認しました。タンパク(グルテン)濃度の差(11.3~3.1%)に対して、焼き時間はほとんど依存しない形で終了しています。左上段 PP=9.3%、 左下段6.2%、右上段11.2%、右下段3.1%。
ロールケーキ用の生地は基本組成は普通の台座のスポンジケーキとほぼ同じですから、以上の結果から高温での短時間調理(180℃ X 10分前後)が必須のbaking trickであると再認識しました。ロールケーキにもいろいろな焼き方のレシピがありますが、再現性や簡便性を考えたうえで180℃ x 数分というのは公式化していいのではないかと考えました。
①クッキングシートから26 cm x 26 cm x 2 cmサイズの正方形の底面を持つ紙型を作成します。オーブンを170℃で予熱しておきます。 ②冷蔵庫に冷やしておいた全卵を卵黄と卵白に分け、卵白は出番まで冷蔵庫に冷やしておきます。先に60グラムのplain flour(薄力粉:強力粉=1:1混合)を振るっておきます。カカオパウダーを加える場合はカカオパウダーを12グラム、その分plain flourを減らして48グラム混合して前もって別容器に振るっておきます。 ③卵黄3個分(約60グラム)、上白糖60グラム、常温の牛乳30グラム、塩2グラムを中型耐熱ボウルに入れBain-marieでフラワーホイッパーを用いて攪拌します。 ④卵黄混合液に30グラムのキャノラオイルとバニラオイルを数滴加えて十分に混ぜます。ダークチョコレートを生地に混ぜたい場合はキャノラオイルに12グラムのダークチョコレート(カカオパウダーと同量)を混ぜて湯煎で溶かして混ぜに行きます。 ⑤メレンゲ混合時のロスを最小限にするため、ここで小麦粉(または小麦粉ーカカオパウダー)を篩って卵黄混合液に混ぜに行きます。乳化を安定した状態にしておいて次のメレンゲ作成に移ります。
⑦go back methodでメレンゲと卵黄混合液を混ぜていきます。最初の1/3量のメレンゲを卵黄混合液に投入し十分にスパチュラで混ぜます。次にメタルボウルのメレンゲに全量戻して丁寧にスパチュラで均等になるまで混ぜます。 ⑧天板に紙型を置き、生地を流し込みます。何回か天板を軽く小突いて大きな気泡を追い払っておきます。表面が落ち着いたら直ちに170℃で25分ほどオーブン焼きして完成です。