エンゼルフードケーキ: Classic Angel Food Cake
Swiss Roll用のスポンジケーキの黄金比を前回捻出しましたが、この比率は非常にシフォンケーキの組成に酷似しています。これは単においしい生地はシフォンケーキであると肯定したにすぎません。そこでシフォンケーキの原点であるクラシックエンゼルフードケーキ(卵黄混合なし、油脂混合なし、ベーキングパウダー混合なし)から少しずつ卵黄/油脂を混合していきオリジナルなシフォンケーキの混合比とHigh ratio cake(砂糖の添加量が小麦粉に比べて相当多いケーキ)に関して極めてみたいと思います。
まず、ゼロに値するもの(卵黄なし)をまず作成してその食感を確かめる必要がありますが、これには①エンゼルフードケーキ(油脂、ベーキングパウダー混合なし)と②ホワイトスポンンジケーキ(バター(混合比 小麦の重量の約1/2)、ベーキングパウダー混合)があります。いずれも基本レシピは周知されていますが、前者はhigh ratio cake(1:2)になります。断面は両方ともピュアーな白色調ですが前者は高級食パンをさらにモフモフにした食感(今回確認)で、後者は柔らかめのスポンジケーキのような食感(以前に確認)になります。油脂(バター)を加えることでの食感の方向性は前回のSwiss roll同様で重量感と保湿感を加える方向にベクトルが向きます。油脂の方向軸は見当がつきますが、砂糖を増量(high ratio)することに対する方向軸は現時点では確認できていません。
Ingredients: 基本のエンゼルフードケーキの配合組成は以下の通りです。原本(Boston Cooking School Cook Book, 1986) では、11個の卵白とグラニュー糖を用いていますが、グラニュー糖よりも卵白に親和性のより高い上白糖(superfine sugar)をさらにミキサーで粉砕したpowdered superfine sugarで統一しました。さらに10 inch(φ25 cm)相当からφ18 cmに減量換算し、卵白重量(実測値)にあわせて焼き時間も微調整しました。 φ18 cm のシフォンケーキ専用の焼き型を使用します。
Ingredients | Amount for φ18 cm tube pan (chiffon cake pan) |
Egg white (L) | 5 ea (210 gram) |
Cream of Tartar | 3 gram |
Salt | 1 gram |
Powdered superfine sugar | 60 gram |
Vanilla oil | a few drops |
Almond extract | a few drops |
Cake flower | 60 gram |
Powdered superfine sugar | 60 gram |
Baking time | 170℃ x 35 minutes |
Instructions :
①上白糖120グラムをミキサーで砂粒状に粉砕します(8分位)。これでコーンスターチを含まないパウダーシュガーを作成します。
②薄力粉60グラムと作成したパウダーシュガー60グラムを混ぜて、これもミキサーにかけます。薄力粉を粉砕して細粒化/均質化することでメレンゲとの混合時に気泡消失を最小限に抑えるためです。
③卵黄と卵白を分けます。(余った卵黄はカスタードクリームにしました。今回はsuper gigantic roll を作成してみました)。卵黄は冷蔵庫に保管しますが、今回は卵白は室温でしばらく放置しておきます。
④卵白210グラム(5個分)をメタルボウルに入れ、クリームオブターターを3グラム加えて電動ホイッパーで低速攪拌します。
③3分位でsoft peakに到達しますので30グラムの砂糖を加えてfirm peakまで高速回転で持っていきます。ここでバニラオイル/アーモンドエクストラクトで香りを加えておきます。この辺でオーブンを170℃に予熱しておきます。
④残りの30グラムの砂糖を加えてstiff peakまで持っていきます(ボウルをひっくり返しても動かなければstiff peakに到達していると判断します)。常温から泡立てしたメレンゲの仕上がりは色調も食感もマシュマロののような感じで低温から泡立てしたメレンゲとは仕上がりの感じは異なりますが、小麦粉を抱き込むだけならこちらのほうがかなり扱いやすいです。最後に粉を抱きかかえる工程で終了する場合はこの方法で泡立てしています。
⑤②で調整した粉類を1/2量ずつメレンゲに篩い、スパチュラで抱き込みます。混ぜにくいですので基本に忠実に中央から辺縁にむけて丁寧に混合(center to margin fold)を行い粉類の痕跡がなくなるまで混ぜます。
⑥シフォンケーキ用のセンターチューブのある焼き型に注ぎます。注いだ後、竹串で底にたまった空気や大きな気泡を追い出しておきます。ケーキパンの側面についた生地はできる限りキッチンペーパーで拭き取ります。焼くと生地は焼き型の側面を這いあってきますのでそれを邪魔しないためです。
⑦170℃で35分オーブン焼きします。焼き始めて15分くらいで表面がgolden brownに到達しますので表面割れ防止もかねてこの時上からアルミフォイルでカバーします。
⑧さかさまにしてマグカップの上に置いて室温で冷やします。重力を利用して縮みを最小限に抑えます。
⑨パレットナイフで辺縁を切り離して筒と一緒にケーキを抜きます。底面と中央を切り離してケーキをひっくり返して外します。これで完成です。
このまま置いておくと私が一人で始末することになりますのでクレームシャンティでフロスティングしてキーウィとラズベリーをのせました。さすがにラズベリーは渋いので今回は10%ゼラチンと30%上白糖でナパージュを作成し2回塗りしました。
断面も食感もまるで”天使の羽”のような感じに思えました。これを最初に考え出した人、天才だ。
<クレームシャンティイを簡単に速攻で作成する方法>
クレームシャンティイを作成する際、氷水で冷やしながらとほとんどのauthorが指南していますが氷も結構必要ですし煩雑です。これを簡素化する方法を私は用いています。
①使用する耐熱ボウルの内面を軽く水に浸し、軽く水切りします。
②電動ホイッパーのパドルも軽く水に浸し耐熱ボウルに入れてこのまま冷凍庫に入れます。
③10分ほどして取り出すと表面は完全に氷結して曇っています。
④パドルをセットしてすぐにボウルに冷蔵庫にある生クリームを注ぎます。
⑤粉砕した上白糖(powdered superfine sugar)を分量入れて、即座に低速攪拌開始します。
⑥3分間でstiff peakのホイップクリームができます。
(注意)耐熱ボウルの曇りが消失するまでに素早く作業は完了してくださいね。
編集後記
Swiss Rollの生地の極みが、単にシフォンケーキの生地にすり替えただけのような形で収束することにはなかなか受け入れがたい所が残ります。もう一つの選択肢となりそうなタンパク濃度11%位の”これぞスポンジケーキ”という配合組成からまたいつか改良を加えてみたいと考えています。