ウイルス肝炎治療の目的
①可能であればウイルスを体内から駆除する。
②発癌(肝細胞癌)をできる限り抑制する。
③ウイルスを排除できない場合、出来る限り肝炎の進展を抑制し、肝硬変への移行を阻止する。
④肝硬変の場合は、可能な限り早期の肝細胞癌の発見と肝細胞破壊の抑制を行う。
○B型慢性肝炎
①慢性B型肝炎とは
免疫の獲得が不完全な幼少期にB型肝炎ウイルス(DNAウイルス)に感染することで、肝臓内部にB型肝炎ウイルスが半永久的に共存した状態
B型肝炎ウイルス感染は大まかに2通りの経路があります。
①産道感染:慢性B型肝炎の母親から出産の際に血液感染する
②水平感染:以前行われていた鉄砲注射などの予防接種汚染針による人為的感染
保育園などでの感染児からの感染、父子感染など
慢性持続性感染しているかどうかはHBs抗原の有無により判定します。これは血液検査により簡単に調べることができます。
②無症候性B型慢性肝炎キャリアとは?
B型肝炎キャリアとはウイルスが肝臓内に持続的に存在しているが、血液検査では見かけ上肝障害を認めない状態 HBe抗原陽性キャリアとHBe抗体陽性キャリアの数、発癌率の全てがHBe抗体陽性キャリアに比べて非常に大きく高リスク状態にあります。
③B型慢性肝炎の臨床経過
図:日本肝臓学会 B型肝炎治療ガイドライン(第3版)p1より引用
B型肝炎キャリアは、左表の乳幼児感染の経過をたどり最終的には肝硬変に至る場合がほとんどです(一部自然治癒症例あり)。従って無症候性キャリアであっても定期的に血液検査や腹部エコー検査は必要です。 また、B型肝炎は発癌性が高く、肝細胞癌がいつの間にが生じていることが多々あります。
④B型慢性肝炎の治療方針決定のために必要な検査
④B型慢性肝炎の治療方針決定のために必要な検査
•HBe抗原/抗体検査:HBe抗原の存在意義は前述のように感染指数や発癌率に大きく影響します。
•HBV-DNA核酸定量:血中のウイルスをPCR法という増幅法で検出し血液中にどのくらいウイルスが存在するかを見る検査です。
•腹部エコー検査:肝炎の進行度の評価や肝臓癌のスクリーニングに必須の検査です。
•EOB-MRI検査: 肝細胞癌に対してもっとも検出感度の高い画像検査です。
⑤B型慢性肝炎/肝硬変の治療対象
⑤B型慢性肝炎/肝硬変の治療対象
◯慢性肝炎の場合は、HBV-DNA(血中のウイルス量)が 4.0 L.IU./ml以上で、かつALT(GPT) 31 IU/ml 以上の肝機能障害が存在する場合、治療の適応となります。
◯肝硬変は、HBV-DNAが陽性であれば全例治療の適応となります。
上記対象例では、基本的に核酸アナログ製剤による治療が標準治療となります。ただし35才以下の場合で、HBe抗原陽性症例ではペグインターフェロン(PEG-IFN)による治療を先行して行う場合があります。