Shindeらは、南アフリカで行われたphase 2a-b臨床試験の結果を報告しているがこれは実質的にはB.1.351(N501Y.V2)株に対する実践投与結果報告と言える(2)。
6324人の参加者のうち少なくとも4387人がNVX-CoV2373の2回投与(5μgのリコンビナントワクチン + 50μgのMatrix-M1アジュバント, 21日間隔)または、偽薬(生理食水)の接種を完遂した。接種終了7日後〜60日後の期間で有症状のCovid19感染(発症)を有無を評価する事でワクチンの有効性と安全性が検討された。参加者の約30%がCOVID-19の既感染を示す血清抗体陽性であった。これらの血清抗体陽性者を除く2684人(94%はHIV陰性、6%がHIV陽性)のうちCOVID-19発症者として、ワクチン投与群から15人、プラセボ(偽薬投与)群から29人が観察期間中に確認された。このうちゲノム解析が行われた41症例のうち92.7%に相当する38症例がB.1.351変異株であった。
プラセボコントロール群(図3-C)から、過去のCOVID-19感染(B.1.351株以前のタイプ)がB.1.351感染のリスク低減に全く効果を示さないことがわかる。全体でのワクチンの有効率は49.5%(95% CI(信頼区間)=[6.1 , 72.8])であった(図3-A)。HIV陰性の集団に関するワクチン有効率は60.1%(95% CI=[19.9 , 80.1])であった(図3-B)。この結果から、初期株(武漢株)のスパイク蛋白を用いたリコンビナントワクチンが交差免疫によりB.1.351変異株の感染→発症リスクを1/2位に低減できることがわかった。医療体制が不備な条件下での変異株の拡大流行地地域というタイトな条件下でこのワクチンのポテンシャルを反映した検証と言える。