②リコンビナントワクチンの作用機序
リコンビナントワクチンの作用機序は図2のようになります。皮下注または筋注部位の局所に存在する抗原提示細胞(APC)により補足/提示されたs蛋白抗原に対しT, B細胞免疫が賦活されウイルス蛋白に対する液性/細胞性免疫が獲得されます(1)。
mRNAワクチンの作用機序(see→Case28 part1)の図と比較すると何が違うかは明白です。mRNAワクチンでは、まずLNP(ワクチン微粒子)が入り込んだ体細胞にウイルス蛋白(S蛋白)を発現させるという過程が存在します。次にS蛋白が発現した細胞が非自己(異物)として認識される事で、細胞障害性T細胞を主軸とした免疫担当細胞により非自己と認識された細胞を破壊する機序が主体となり抗ウイルス免疫を獲得します。これはそもそもmRNAワクチンが抗癌ワクチンを主目的としたコンセプトで研究開発が進められていたことに基づきます。自己細胞破壊の繰り返しにより放出されるダメージ関連分子パターン(damage-associated molecular patterns: DAMPs)などは過剰な免疫応答を惹起させる要因と考えられていますので自己免疫疾患の誘発が懸念されるわけですが、リコンビナントワクチンにはこの過程が存在しませんのでmRNAワクチンで心配される将来的な不安の大部分は解消されていると言えます。しかしながらADEに関しては、コロナウイルスに対するワクチン投与を行う事象に付随する懸念ですので全ての種類のワクチンで心配される事であり、可能性の完全否定はできません。