院長の勝手な独り言:
いろいろな逸話がTV報道やネットで散見されますが、東アジア諸国とヨーロッパ諸国との制圧状況の違いは、単に発端者が少ない(完全に追跡可能な集団である)時点で迅速で詳細なコンタクトトレーシングを導入できたかどうかが、結果を大きく2分しただけのように見えます。どうやら日本国内の不顕性感染者数も非常に少ない様子ですから、結局は”I(0)をいかに小さい規模で見つけ出すか”→”詳細で迅速な接触者の抽出/隔離”の連携がうまくいったかどうか?ということだったのではないでしょうか?欧米諸国はちょっとした油断により発端者出現から短時間でコンタクトトレーシング不可能な状況に陥ったため感染制御不能となったと考えます。逆にこれは現在制圧に成功しているように見える東アジアでもちょっとした油断で同じ状況に陥ることを意味します。ヨーロッパでは、唯一首相自らが微分方程式で未来予測されていたドイツのみ困難を回避できているように見えます。一度爆発すると、世界1の力量を持ってしても簡単に制圧できるような代物ではないこと、例えようのない恐怖を感じます。恐らく、一度に複数の地区で発端者が100人を超えて出現するとコンタクトトレーシングに投入するマンパワーも資源もそれ相応に準備がある国でさえ困難な状況になるものと考えます。結果論としては、批判に晒されながらもコンタクトトレーシング遂行に頑なに固執したことが我が国の第一波の干渉につながったと考えられ、西浦先生、尾身先生をはじめ対策スタッフ皆様のご尽力には心から感謝申し上げます。
Uploaded on June 10, 2020.
参考文献
1. Hellewell J, Abbott S, et al. Feasibility of controlling COVID-19 outbreaks by isolation of cases and contacts. Lancet Glob Health 2020; 8: p488-p496. https://doi.org/10.1016/ S2214-109X(20)30074-7
2. Marcel S, L AC, et al. COVID-19 epidemic in Switzerland: on the importance of testing, contact tracing and isolation. Swiss Med Wkly 2020; 150: p1-p3 doi:10.4414/smw.2020.20225
3. Cheng HY, Jian SW, et al. Contact tracing assessment of covid-19 transmission dynamics in Taiwan and risk at different exposure periods before and after symptom onset. JAMA 2020: p1-p8.