Case 24-5; COVID-19 part5-2: 数理モデルから予見される接触追跡(コンタクトトレーシング)と早期隔離の有効性、2次発病率と症状発症前感染が基本再生産数に及ぼす影響、実行再生産数から推定される流行制圧率を80%以上に保つために必要な疫学的手段の実行強度について

下図(Fig.4)では、A: I(0)の数、B: 隔離の遅れ、C: PSTの有無、D: 無症候性感染の有無によりどれだけ感染流行の制圧に歪が生じるかをデモしたグラフである。中央の黒い●を結んだ折れ線がRo=2.5、I(0)=20を用いて算出した基準線である。

Hellewell J, Abbott S, et al. Feasibility of controlling COVID-19 outbreaks by isolation of cases and contacts. Lancet Glob Health 2020; 8: p488-p496.より引用しました。

A: Ro=2.5に固定してI(0)が異なる状況でどれだけ流行制圧率に差が出るかを見たものであるが、
I(0)=5人では60%CTが完遂できれば制圧率は80%に及ぶがI(0)=40人に達すると80%以上のCTを完遂する必要性が出てくる。
これはI(0)がこれ以上の値になるとCTという手法のみでの制圧は困難になってくることを暗示している。初感染集団の規模I(0)は、感染制御に影響をおよぼすの重要な因子でありこれは各都道府県の追跡キャパシティーに依存すると考えられえるので、追跡能力の小さい都市ではより小規模にI(0)を抑える監視努力が必要と考えられる。

B: 感染者が発病した場合、迅速隔離(平均3.43日)が行われるか、遅延隔離(平均8.09日)が行われるかで制御率に大きく影響が及ぶ。迅速隔離ができなければCTを懸命に完遂しても感染性制御は容易でないことは見て取れる。迅速隔離を行うには少なくとも症状のある症例に対し、待機させることなくPCR定量検査を受注できるだけのラボ数が最低限確保されなければならず、実際にPCR定量を行う民間外注検査会社のラボの拡充が必須と考えられる。検体採取自体は、感染リスクのことは別として、誰がやっても手技的には困難な手法ではない。

C: PSTの発症率が高くなるにつれて制御率は悪くなる。PST=30%存在すればCT単独による制御はほぼ不可能と見て取れる。COVID-19にはPSTが存在することは分かっているが、実際のところ何%位生じるのかも明らかにはされていない。潜伏期のCOVID-19を選別することは不可能であるので、CTによる接触者追跡および行動追跡により懸念される症例を地道に炙り出すしかない。韓国ではクレジットカードの履歴、街角のCCVまで利用して徹底したトレーシングをしているようであるが個人情報保護法に抵触しかねない厳しさと言える。

D: 無症候感染も10%ほど生じるだけでCTによる制御率は下方に揺らぐ。COVID-19の真の意味での無症候性感染者(全期間で全く症状なし)が実際にどれだけ感染伝播能力があるかどうかは明らかにされていない。唯一台湾のコンタクトトレーシングの報告が1つの参考とするケースであるが、現時点では”0″%とは断定できない。

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