Case 24-3; COVID-19 part3: 現時点での基本再生産数(Ro)と接触頻度、感染確率から考えられる行動制限の根拠と妥当性、現在国内で行われている控えめなPCR検査の原因と規模の妥当性、PCR強制率から見えるもの、海外との比較、最終規模方程式(極限方程式)と臨界感受性人口密度に関して

③最終規模方程式(final size equation)

流行が終息したときに感染により除去された人口の割合(=初期感受性人口のうち罹患した総人口の割合)を最終規模(final size)という。

ケルマック・マッケンドリック連立微分方程式の上から2つを取り出してくると
dS(t)/dt= −βS(t)I(t)     -①
dI(t)/dt= βS(t)I(t) − γI(t)   -②

*Sは感受性人口、Iは感染者人口、 β は伝播係数、 γ は隔離率

②/①より、
dI(t)/dS(t)= −1 + γ/βS(t)

Scr= γ/β(この時Scrはそれ以下では流行が起きない臨界感受性人口密度を示す)とおくと
dI/dS= −1 + Scr/S  (tを省略)
Sで、不定積分すると(S>0)
I = C-S + Scr log S (Cは積分定数)
初期条件 t=0の時 I(0)=C-S(0)+Scr log S(0)より
C=I(0)+S(0)-Scr log S(0)
I(t) = I(0) + S(0) -S(t) + Scr log {S(t)/S(0)}

t→∞とした時、I(∞)=0より(この時完全な終息)であるから、 
0 = I(0) + S(0) -S( ∞ ) + Scr log {S( ∞ )/S(0)}
従って、
 S(∞) = I(0) + S(0) + Scr log {S(∞)/S(0)}  
 Scr {log S(∞)/S(0) }= -{I(0) + S(0)} + S(∞)
 ∴log {S(∞)/S(0) } = {S(∞) - S(0)} /Scr -I(0)/Scr

ここでp(t)={S(0)-S(t)}/S(0) = 1 - S(t)/S(0)とおくと
s = lim t→∞{p(t)} = p(∞ )は最終規模を示す
この時、p(∞ )=1 - S(∞)/S(0)
∴S(∞)/S(0) = 1 - s
    S(∞) = (1 - s)S(0)
∴log {S(∞)/S(0) } = -sS(0)/Scr -I(0)/Scr -③
また、Ro= β S(0)/ γ 、Scr= γβ(定義)であるから、
Ro = S(0)/Scr
それぞれを③に代入して、整理すると

1-s = exp(−Ros−ζ) (ζ = βI(0)/γ は2次感染者の発生総数)

ζ →0とした極限方程式は最終規模方程式の解として
1 − s = exp(−Ros)が得られる。

Ro = −log(1 − s)/s

感染の終息時に無事感染を回避できた人口集団の割合が分かればRoが推定できる。武漢のように強力な移動制限がかかった閉鎖区域ではデータ収集さえしっかりしていればそれなりに望ましいRoが推定可能かと思われる。逆にRoが分かっていれば、どれだけの人口が感染するかも推定できることになる。

Uploaded on April 18, 2020.

参考文献
1. 稲葉 寿. 微分方程式と感染症数理疫学. 数理科学 2008; 538: p1 – p7
2. Liu Y, Gayle AA, et al. The reproductive number of COVID-19 is higher compared to SARS coronavirus. Journal Travel Med. 2020: p1-p4
doi: 10.1093/jtm/taaa021
3. 南就将, 水野洸太 et.al. 異なる接触頻度を持つ個体からなる人口集団における感染流行のモデル化について


シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメントの入力は終了しました。