Case 24-2; COVID-19 part2: 感染症の数理モデルの基本であるケルマック・マッケンドリッモデル(連立微分方程式)、感受性人口、感染力(感染伝播係数)、隔離率、マルサス係数、基本再生産数(Ro)等のテクニカルワードについての説明とベイズ推定(Bayesian inference)から逆算された武漢のアウトブレークにおける無症状または軽微症状のCOVID19罹患者の感染力の強さに関して

感染拡大の原因

ここから、感染拡大の原因の約79%が臨床的に無視されていた無症候性もしくは軽微症状感染者により伝播されたものであると推計された。または発症前の潜伏期は、平均3.69日、症状発症までの感染可能期間は、3.48日であると算出されたが、これは逆に症状が出て受診する前3日間で最低2,3人に感染させることが可能であることを示す。確定感染者の感染率をβとおくと、非報告の無症候(および軽微症候)性感染者の感染率にはμ=0.55の相対(減少)係数を乗じた μβ で表すことができた。βの値は移動制限により1/2以下の低い数値になることが判明した。また移動制限前後でR値も縮小することが判明した。

FIg 2 : A, B, Cは、Fig 1を算出したパラメータに基づき書き換えた図である。
Li R, Pei S, et al. Substantial undocumented infection facilitates the rapid dissemination of novel corona virus (SARS-CoV2). Science 2020. DOI: 10.1126/science.abb3221. より引用しました。

非報告感染者μ=0.55、入院隔離感染者や回復患者などの感染性を有しない集団にμ=0を適用している。青い棒グラフは確定診断のついた患者が生み出した感染者数、赤い棒グラフが非報告感染者が生み出した感染者数を示しているが、全患者の79%を生み出していることが視覚的に確認できる。以上により無症候および軽微症候性感染者は、感染確定患者の約1/2の感染力(driving force)をもつことになるが、この無症候および軽微症候性感染者を積極的に摘発し隔離対策をたてることで感染流行を制圧できる可能性があることが示された。アジア地域で比較的流行を抑え込み出来ているのはSARSの経験から本能的に早期から少し過激な対策で向き合っていることが効果を示しているのかもしれない。無症候性患者に対して現行の日本の対策が妥当かどうか、1か月後に結果は出る。なぜならCOVID19の潜伏期が2Wあるので、日々ニュースで報告されているデータは2W前の流行を追っている。対策を立てて反映されるまでには潜伏期の2Wが関係する。

*最近実効再生産数Rとうい新しい単語が囁かれていますが、感染症がしばらく流行したのち感受性人口全体が必ずしも感受性ではなくなった状態(例えばワクチン接種による免疫獲得者が混在する状態など)の際にこの単語を使うようです。
内閣官房ホームページの新型コロナウイルス感染症の最新情報のページにリンクを貼っておきました。

Uploaded on March 25, 2020.

参考文献
1. 稲葉 寿. 微分方程式と感染症数理疫学. 数理科学 2008; 538: p1 – p7
2. 稲葉 寿. 基本再生産Roの数理. 感染症モデルと制御、特集号 2015; 59(12): p1-p6
3. Sanche S, Lin YT, et al. The novel corona virus , 2019-nCoV, is highly contageous and more infectious than initially estimated. medRxiv. DOI: https://doi.org/10.1101/2020.02.07.20021154
4. Li R, Pei S, et al. Substantial undocumented infection facilitates the rapid dissemination of novel corona virus (SARS-CoV2). Science 2020. DOI: 10.1126/science.abb3221.

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