③非報告感染者(無症候性感染者)とベイズ推定
しかしながら、3/16のScienceにベイズ推定(Bayesian inference)を用いて流行収束を迎えた武漢の初期発生状況を再評価した論文が掲載された。内容は公式報告(=確定診断)されている感染者からベイズ推定により確認されていない非報告感染者(=野放しになっている症状に乏しいいわゆる健康保菌者のような存在)の数を顕在化させたことで衝撃的な感染伝播の盲点を暴露させている。以下Fig1, Fig2を参考文献4より引用させて頂きました。
Fig 1: Aは中国全体、Bは武漢(Wuhan)、Cは、拼音(Hubei)の流行初期の患者発生数の推移を示しています。赤いxは公式報告された患者発生数を、青い棒グラフは確率統計学的手法に基づいて再計算された新患者数推計(報告感染者+非報告感染者)を示し、箱ヒゲ図は平均値と4分位範囲を示します。4分位範囲は300のコンピュターシミュレーションの95%信頼区間から導出された値である。実際に報告されている患者数の報告率α=0.65(65%)と計算され、再計算された新感染患者数は中国全土で16,829人、武漢で13,118人であり、患者数の86%は非報告感染者と推計された(信頼区間95%)。この再評価モデルで診断確定した感染者の実行再生産数Rは約2.38であり、Ro(感染初期の基本再生産数)とほぼ同値である。したがって相当高率に非報告感染者による拡大再生産が存在することが推定できます。