Case 24-6; COVID-19 AT part3: 空間における飛沫(エアロゾル)の描く軌跡を考える際、体温から受け取る吸熱効果(thermal effect)を考慮する必要がある。感染者との距離が72cm以内になるとマスクの予防効果は著しく低下すると考えらる。また、待合室や商業スペースにおいてバイオエアロゾル感染のリスクを最小限に抑える空調/換気ルートの確保が必要である。

一方、そこそこに感染対策をしていても飲食店の感染リスクが下がらないのは圧倒的な滞在時間の長さが影響していると考えられる。食事中にマスクをするというのは不可能であるのでマスクをしないことを想定した感染対策が必要である。単なる直噴飛沫対策であれば前方と側面の3方向をシールドで区分けすれば十分である。問題なのは感染者が長時間滞在することでFig.5の様な天井面を伝うバイオエアロゾルの気流が生じ、これが上から空調気流で下方に押し出されることで場合によっては特定のシールド区画にばかりバイオエアロゾルが供給される形となり、感染者の向かい側よりもむしろ後ろ側や斜め後ろなどの桂馬跳びの様な感染リスクが生じることが想定される。これらを考慮すると航空機での前後席の感染や居酒屋での不自然な席に生じる感染は容易に説明できる。これを接触感染と勘違いして対策を立てている限り飲食店での感染対策は効率の悪い対策となっている可能性がある。

この意味からすると空調は手動で方向と風力を最も人が存在しない場所に向かう様に設定して営業中は設定を変更しないことが感染リスクを下げることに貢献するかもしれない。また天井方向に室外換気を複数実装することは非常に効果的な手段と考えられる。また天井を非常に高く設計してあるレストランはエアロゾル感染が生じにくい構造と考えられるのでできるだけの天井の低いカウンター席での飲食は避けて天井の高いホール席でテーブル距離を開けて利用することが重要と考えられる。

飲食店を利用する側のマナーを矯正する必要があるのはいうまでもない。そもそも感染者が同席していなければクラスターは生じないので、①少しでも感冒症状があるなら飲食店には立ち入らない、これはコロナ禍での常識エチケットである。この程度の気遣いもできないのであれば飲食店を利用する資格はない。さらに、thermal effectのことを十分に考慮して、①だらだらと長時間の滞在を避ける、②滞在時間が長くなるなら定時的に外に出て室内の一定気流にされされるのを避ける、等の利用者側のマナーの改善が必須である。コロナウイルス感染症は自然に治ることはないことは諸外国を見れば一目瞭然であるので、利用者側もマナーを適合していかなければ将来的に外食禁止令が施行される可能性がありうる。

Uploaded on January 11, 2021.

参考文献
1. Yana Y, Lia X, et al. Thermal effect of human body on cough droplets evaporation and dispersion in an enclosed space. Building and Environment 2019; 148: pp96–pp106
2. Yang W, Marr LC. Dynamics of Airborne Influenza A Viruses Indoors and Dependence on Humidity. PLoS ONE 2011; 6(6): e21481. doi:10.1371/ journal.pone.0021481
3. Buonanno G, Stabile L, et al. Estimation of airborne viral emission: Quanta emission rate of SARS-CoV-2 for infection risk assessment. Environment International 2020; 141: pp1-pp8

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