イスラエル(カタール)からBNT162b2 mRNAワクチン(ファイザー)の2回接種終了以後の感染予防効果、および重症化予防効果の時間推移を評価した結果が報告されている。mRNAワクチン接種が現在進行中である国々における未来予想図ともいえるが、その解釈にはイスラエルが50歳以上の年長者が人口の9%程度であり極端に若年層(重症化しにくい年齢層)が多くを占める特殊な人口組成の国であることに注意する必要がある。
①δ株出現以降の世界の感染動向/ワクチン接種率について
WHOのCoronavirus(COVID-19)Dashboad 2021によると、12/15の時点でCOVID-19確定診断者数は世界で約2億7千万人におよび約531万人が死亡したと報告されていた(1)。Our World in Dataによると世界の56.4%が少なくとも1回のワクチン接種を完了していると報告されていた(2)。イスラエルによるmRNAワクチン効果の評価時点の状況や以下に引用した論文データの比較が容易になる様にOur World in Dataから2021年9月までのチャートをダウンロードしてくると、世界の感染状況は図1の様に示され、それに対応するワクチンの接種状況は図2の様に示される(2,3)。
イスラエルは世界をリードする形でmRNAワクチン(BNT162b2; ファイザー)接種が最速で進行中であり、アメリカバイデン大統領をもってイスラエルの結果を見ればわかるとまで言わせしめたほどでもある。実際のところ世界各国がイスラエルのワクチン効果のレポートを参考にして自国の方針を決めているといっても過言ではない。ワクチン接種率上位国のほとんどでα、β株の流行が一旦収束したように見えたがδ株に変異することで過去最大規模のパンデミックに発展し、さらにデルタ株のさらなる変異ににより収拾のつかない状況に陥っている(3)。ここまでの経過でパンデミックに収拾がそこそこについていると評価できる接種率上位国は唯一、日本のみである。ワクチン接種率と新規COVID19感染者数の関連性に関しては当然ながら逆相関すると予測されていたがδ株出現以降この様な楽観視ができない事が明白となっている。図3はδ株出現以降(2021.09.03〜7日間)での新規感染者数とワクチン接種率の相関を検討したものであるが、現存のワクチン接種率を感染抑制の指標として用いるにはあまりにも根拠に乏しいことはすぐに見て取れる(4)。
なぜこの様にワクチン接種率と感染制御率が乖離するのかに関しては、まず”ワクチン接種を押し進めるのみでは感染拡大制御はできない”という事実を真摯に受け止め考えを改める必要がある。ワクチンの予防効果が減弱する根本的な原因は、ワクチンで実装した免疫をエスケープする様な脅威となる変異株が絶えず4-6ヶ月おきに延々と出現することが最大要因と考えられるが、その他中和抗体力価の経時減衰も関与してると考えられている。