Case24-8; COVID-19 vaccine part5 : 新型コロナウイルス感染症の重症化につながる個体要因について:●年齢要因に次ぐ最大の重症化要因は何か?、●ACE2受容体を介した重症化のメカニズムについて、●ワクチン接種の有効性が期待されるグループとは?

⑦ COVID19感染重症化の最大の個体要因は、高度肥満と糖尿病をベースとした高血糖の持続である。

Diedisheimらは、フランスでSARS-CoV2感染により入院した患者のうち入院中死亡または気管内挿管を伴うICU入院に至った患者(=重症例)2197人を50歳未満の若年層とそれ以後10歳間隔の5つのカテゴリーに分類し、非糖尿患者と糖尿病患者でリスク評価を行った結果を報告している(図9参照)。重症化の比率は70歳をプラトーに全年齢層で糖尿病患者が占める割合が多いが、交絡因子である年齢の寄与を修正したハザード比(HR)で見ると70歳以上では明らかな有意差は認められていない(13)。

図 9. 入院中に死亡、または気管内挿管を受けてICU転入となった重症SARS-CoV2患者におけるリスク評価(非糖尿病vs.糖尿病): 入院患者6314人のうち39%にあたる2459人が糖尿病の診断を受けた(1型/2型の比率には言及なし). 入院患者6314のうち35%にあたる2197人が死亡またはICU転入の機転となった。totalの重症化の割合は、糖尿病患者で39%(970/2459)、非糖尿病患者で32%(1227/3855)であった。修正ハザード比は、50歳未満で1.52(1.18-1.97)、60-70歳で1.30(1.08-1.57)であった。Diedisheim M, et al. Diabetes increases severe COVID-19 outcomes primarily in younger adults. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 2021(106); 9: e3364–e3368 のFigure 1より引用

Barron Eらは、2020.2/16の時点で英国GPにより登録されているtotal 61,414,470人の患者データを用いて非糖尿病患者、1型糖尿病患者、2型糖尿病患者におけるCOVID19感染関連死のリスク評価を行なった結果を報告している(14)。糖尿病患者のデータに関しては、National Diabete Audit(NDS)の記録が用いられ、263,830人(0.4%)が1型糖尿病、2,864,670人(4.7%)が2型糖尿病、41,750人(0.1%)がその他の型の糖尿病、582,244,220人が非糖尿病患者であることが前もって確認された。この患者背景から前向きコホート研究で、2020.3/1〜5/11の期間に新たにCOVID19感染の確定診断を受けた患者を対象に比較検討をしているが、この間にtotal 23,698人がCOVID19感染入院関連死に至った。このうち31.4%にあたる7,434人の死亡は2型糖尿病患者で、1.5%にあたる364人は1型糖尿病患者、0.3%にあたる69人は他の型の糖尿病であった。観察期間72日間におけるCOVID19関連死に関する粗死亡率(/100,000人)は、非糖尿病患者で27(95% CI 27〜28)、1型糖尿病患者で138(95% CI 124〜153)、2型糖尿病患者で260(95% CI 254〜265)であった。一方全体での粗死亡率は39(95% CI 38〜39)であった。年齢、性別、人種、地理的要因などの交絡因子の調整を行うとCOVID19入院関連死のリスクは、非糖尿病患者に対するオッズ比で1型糖尿病患者は3.51(95% CI 3.16〜3.90)、2型糖尿病患者は2.03(95% CI 1.97〜2.09)と高値であった。年齢別の粗死亡率は下図11で示されている様にどのグループも高齢であるほど死亡率は高かった。

図10. 非糖尿病患者、1型糖尿病患者、2型糖尿病患者におけるCOVID19感染入院患者の粗死亡率比較: エラーバーは95%信頼区間を示す。1型糖尿病患者の0〜49歳のグループおよび非糖尿患者の0〜39歳、50〜59歳のグループは死亡者数が非常に少ないためグラフには表記されていない。Barron E, et al. Associations of type 1 and type 2 diabetes with COVID-19-related mortality in England: a whole-population study. Lancet Diabetes Endocrinol 2020; 8: p813–822のFOGURE 1より引用。

Gregory JMらは、米国テネシー州ナッシュビルのヴァンダービルト大学のデータを用いて6138人の非糖尿病(ND)、、40人の1型糖尿病(T1D)および273人の2型糖尿病患者(T2D)のCOVID19に関連する入院および重症化のリスクに関する前向きコホート研究を行い、非糖尿病患者に対する修正オッズ比が1型糖尿病患者で3.90(95% CI 1.75〜8.69)、2型糖尿病患者で3.35(95% CI 1.53〜1.73)であったと報告している(15)。1型糖尿病の症例数が少ないが、重症化リスクはT1D>T2D>>NDであった。

図 11. 1型、2型糖尿病罹患患者の非糖尿病患者に対するCOVID19関連リスク: Aは入院14日以内でのリスク評価(それぞれの条件での修正オッズ比)、BはBMI 26kg/m*2で補正した糖尿病の型別の入院確率、 Cは重症化リスク(それぞれの条件での修正オッズ比)、Dは疾患重症度に対する個々の背景因子の重要度を多変量回帰解析した結果。Gregory JM, et al. COVID-19 severity is tripled in the diabetes community: A prospective analysis of the pandemic’s impact in type 1 and type 2 diabetes. Diabetes Care 2021;44: p526–532のFigure 1より引用。

図11から、T1D、T2D共に80歳まで入院確率が高くなっていく傾向が認められ、糖尿病に罹患していることが年齢に次ぐCOVID19感染重症化のリスク因子となっている。糖尿病罹患患者は、非糖尿病患者に比べて3〜4倍の入院および重症化のリスクがうかがわれる。

Wangry Mらが報告したフランスのCORONADO studyによると(図12参照)、糖尿病患者の平均入院日数は9日(5〜14日)であり、28日間で2796人の入院患者のうち577人にあたる20.6%(95%CI 19.2〜22.2%)が死亡に至った(16)。

図12. COVID19感染確定後、入院期間28日間における糖尿病患者2796人の経過:合計2796人のCOVID19感染確定診断を受けた糖尿病患者のうち最初の1週間で28.6%にあたる800人が気管内挿管を伴う人工呼吸管理、または死亡に至り、死亡は11.2%にあたる312人であった。50.2%に相当する1404人は9日前後で退院している。観察期間は2020.3/10〜4/10の期間。 Wargny M, et al. Predictors of hospital discharge and mortality in patients with diabetes and COVID-19: updated results from the nationwide CORONADO study. Diabetologia 2021; 64:778–794.のFig 1より引用

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