⑥ACE2の過剰発現は、脂肪細胞及び膵臓β細胞へのCOVID19直接浸潤につながり重症化の引き金となる。
ACE2は、下図6の如く肺、肝臓、脳、卵巣、膵臓などに高頻度に発現している(9)。
COVID19は、膵臓のACE2に直接浸潤することで膵障害(pancreatic injury: PI)を引き起こす(7, 10)。PIが生じると非糖尿病患者においてもインスリン 分泌低下が生じ高血糖を生じる。同様の機序で糖尿病を基礎疾患にもつ場合糖尿病の増悪が生じうる。COVID19感染によりtumor necrosis factor alpha (TNF-α)やinterleukin (IL)-6を主体としたサイトカインストーム(CS)が生じると末梢組織でのインスリン 抵抗性と膵β細胞の機能低下によるインスリン 分泌不全が生じる。こうした悪循環が積み重なって持続的高血糖状態に陥り、酸化ストレスの負荷を増大させる。COVID19感染症で急性膵炎の症状を呈する症例の報告は稀であるが、重症化症例では見過ごされている可能性がある(11)。PIは、COVID19感染症において膵臓へのウイルス直接浸潤または、サイトカインストームが生じることで間接的に生じると考えられており剖検例において膵組織でのウイルス増殖が認められている(12)。下図7にCOVID19感染症→膵障害→急性肺障害の機序に関しての概略図を提示した(7)。
高度肥満患及び糖尿病(特に2型糖尿病)患者では、下図8の様な A:腸管粘膜におけるバリア機能の減弱、B: sheddingより生じた遊離ACE2および細菌等の全身循環への流入、C: 脂肪組織(脂肪細胞)におけるACE2の過剰発現とCOVID19や細菌の感染、D: [Ang II(AT1-8)] > [AT1-7]による血管調整因子不均衡や遊離ACE2の肺胞細胞沈着によるCOVID19易感染性の4つの機序が存在すると考えられ、これらが互いに症状増悪に寄与すると考えられる(8)。