Case 22; TIPIC: 片側性の総頸動脈(遠位部)に生じる特発性血管周囲炎(Carotidynia syndrome)の診断基準、頸動脈エコー、MRI及び造影MRI所見、臨床経過に関する1ケースレポート

TIPIC : Transient Peivascular Inflammation of the Carotid artery as Carotidynia syndrome
: 一過性頸動脈周囲炎:頸動脈痛(症候群)

特発性の片側性頸動脈痛を主症状とする稀な病態であり、現時点では明らかな原因を特定できていません。International Headach Society (IHS)は、1988年に第一版ではCarotidyniaとして診断基準を示しましたが、2004年の第2版以降ではクライテリアから削除しています。非典型的な頸動脈痛主訴とする症候群としてその病態の存在の有無に関しても統一的見解が得られていませんが、2000年以降画像診断技術の進歩により種々の画像検査(US/CT/MRI/PET-CT)により特徴的な画像所見が集積されつつあり再び注目されてきている症候群です。

①Carotidyniaの診断基準

1998年にIHSの提示したcarotidyniaの診断基準を下記に示す。

AAt least one of the following overlying the carotid artery
1. Tenderness
2. Swelling
3. Increased palpitation
BAppropriate investigation not revealing structural abnormality
CPain over the affected side to the neck
: may project to the ipsilateral side of the head
DA self-limiting syndrome of less than 2 week’s duration

総頸動脈遠位部(dCCA)〜内頸動脈ー外頸動脈分岐部(BFC)に病変に含まれていることを前提とし、疼痛は片側性で耳や下顎などに放散する特徴をもつといわれている。大部分の症例で血液検査では異常は指摘できない。13日以内に症状が自然寛解するが、頸動脈US/CT/MRIなどの画像検査でfollow upを行うと画像所見の改善はそれ以後も数ヶ月間は残存することが最近わかってきた。自己免疫性疾患に併発した症例では一度寛解しても再燃を認めたとの報告があり注目に値する。治療は非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)服用が一般的で症状の強い症例ではステロイド剤を用いる場合があるが、無治療でも自然寛解する場合もある。画像診断の特徴所見としては、BFC部位で偏心性の血管周囲浸潤影( PVI: PeriVascular Infiltration) であり頸動脈USではlow echoicな壁肥厚、CTでは軟部濃度( soft density)、MRIではT1WI low〜iso / T2WI high intenseに描出される。造影効果は、CECTCEMRI(T1WI)のいずれにおいても認められる。Leclerらの報告によると、PVIの平均壁厚はUS、 CTでは4 mm、MRIでは5 mm、平均長軸長はUS、CTでは 15 mm、MRIでは 28mmであったと報告されている。組織学的検索がなされた症例はほとんんどないが、リンパ球優位の軽度の慢性炎症に矛盾しない所見と報告されている。

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