Case 07; CA: 無症候性脳動脈瘤の自然経過とくも膜下出血/MRI診断と未破裂脳動脈瘤の1ケースレポート

Cerebral Aneurysm(CA): 脳動脈瘤

①くも膜下出血(SAH)

CA破裂により、くも膜下出血(SAH)を生じますがSAHの発症頻度は人口10万人あたり20人, SAHの死亡率は全体で10〜67%と報告されています。SAHを発症する前に未破裂CAを捕捉しておきたいところですが、未破裂(無症候性)CAの場合、通常医療機関を受診することはありませんので脳ドックでMRI検査でも受けない限り発症前に捉える事は困難です。CAを有する危険因子として、1親等以内にCAが発見されている家族の構成員は4%の頻度でCAを有し、逆にSAHを発症した患者の家族は通常の数倍の頻度で未破裂CAを保有すると報告されています。

②無症候性CA

無症候性CAを頭部MRI検査で偶然指摘できた場合、

(1)大きさが直径5〜7mm以上の未破裂CA
(2)椎骨動脈、前交通動脈、内頸動脈ー後交通動脈などの部位に存在するCA
(3)CAの最大径と入口径の比が大きい、不整形のCA

に関しては、CAの塞栓術、またはクリッピングを検討することが推奨されています。

また、日本人のCAの自然経過に関する疫学調査により、
(1)CAの破裂率は、0.95%/年(直径5mm以下では0.34%/年)
(2)破裂の危険度に影響する因子として、女性、高血圧、CAのサイズ7mm以上、前交通動脈または、後交通動脈領域のCA、外径に突出を認めること、が挙げられています。現状で治療適応ではないCAに対しては、経過観察を行うことになりますが、この際、禁煙、飲酒制限(1週間でビール中瓶(500ml)8本以下)、高血圧管理を十分に行う必要があります。さらに半年から1年に1回画像検査(MRI、もしくは3D-CTA)で瘤径の変化を監視する必要があります。

③症例

Case :
[PH] : 既往歴に関して特記事項なし。
[CC] : 全身倦怠感や食欲不振、不眠などの不定愁訴
モヤモヤ病否定目的で頭部MRI検査を勧めたところ未破裂脳動脈瘤が認められた。
[FH} : 1親等内にSAHの家族歴あり。

[MRI画像]:
MRI(A)  TOF画像:左中大脳動脈M1遠位部にφ1cm大の嚢状動脈瘤を認める。
MRA-MIP再構築画像:左中大脳動脈のφ1cm大の大型動脈瘤の他に、左右の内頸動脈に2〜3mm大の小動脈瘤を認める。

MRI(TOF)画像(左)とMRAーMIP再構築画像(右4画像)

Uploaded on September 12, 2018.

参考文献:

1. Morita A, Kirino T et al. The natural course of unruptured cerebral aneurysm in Japanese cohort. N Engl J Med 2012; 336: p2472-2482
2. 篠原幸人, 小川彰 et al. 脳卒中治療ガイドライン2009. 日本脳卒中学会 2009.

個々の症例のデータ、画像の引用または転載を一切許可しない。

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