SATの臨床症状の特徴はウイルス感染に伴う症状(発熱、全身倦怠感、筋痛など)と前頸部の疼痛である。典型的には片側性に上方向には下顎や耳に、下方向には上胸部に放散すると言われている。甲状腺の圧痛は高度でしばしば一側から他側へ疼痛が部位が移動してくることがある。本国のSATの臨床症状として、68.2%に片側性に甲状腺に疼痛を、その他は両側性に疼痛を認めている。23%の症例は鼻汁や喀痰を伴う咳などの上気道炎症状後1ヶ月以内に発症し、28.2%の症例が38℃以上の熱発を認めている。典型症状として62.1%の症例に認めた症状は、動悸、発汗、体重減少などの甲状腺中毒症状であった(6)。
SATの血液検査所見の特徴は、CRP, ESRの亢進を特徴とする炎症所見とFT4, FT3高値、TSHの抑制にあるが基本的にTSHレセプター抗体は認められない。しかしながら、甲状腺自己抗体(Tg, TPO抗体)が認められる場合がある(7)。甲状腺中毒症を呈するSATとGraves病の鑑別にはfT3/fT4>4.4(10*-2 pg/ng)、FTHI(fT3 index/fT4 index)>1が役に立つ(高値となるのがGraves病)(8,9)。
*fT3 index = fT3/fT3の正常上限値
*fT4 index = fT4/fT4の正常上限値
Iitakaらは、SATの経過中にTSHレセプター抗体(TRAb)が関与した甲状腺機能障害が生じることを報告しているが、通常は一過性である(10)。極めてまれにSATとGraves病の併発症例が存在し、この場合にはTRAbが陽性である(11,12)。Graves病にSATが併発した場合とSAT罹患をきっかけにGraves病を発症するパターンの両方が報告されているがいずれの場合も甲状腺中毒症状の遷延や再燃を伴い治療経過が長引く(13)。