Subacute Thyroiditis (De Quervain thyroiditis): 亜急性甲状腺炎
①亜急性甲状腺炎(SAT)は、典型症状として認められる移動性の前頸部痛と血液検査所見により通常は臨床診断される。
SATは、1895年にMygindにより最初に文献記載され、1904年にde Quervainによって良性の自然寛解する特徴を有する有痛性肉芽腫性甲状腺炎として報告された(1)。de Quervain thyroiditis、painful subacute thyroiditis(SAT)、postviral SATとも呼ばれている(2)。
SATの発症には大部分で上気道ウイルス感染(主に鼻咽頭炎)が先行し、ウイルス感染後の炎症過程が関与していると考えられているが遺伝的素因があり、HLA-B*35 (〜70%が関与), -B*18:01, -DRB*01, -C*04:01を有する場合発症しやすいと報告されている(2,3,4)。SATは四季のある北アメリカ、ヨーロッパ、日本で症例数が多い。現在までにコロナウイルスの関与は報告されていないが、BrancatellaらはCOVID-19感染15日後に発症したSAT症例を報告している(5)。
SATの発症頻度は、人口100,000に対して4.9人、Graves’ 病(バセドウ病)5症例に対して1、橋本病15〜20症例に対して1の頻度で認められる。Nishiharaらによる神戸近隣で経験したSAT852症例の検討によると、男女比は7:1と女性に多く発症平均年齢は48歳(22〜83歳)、44%の症例は7〜9月の間に発症が認められた(6)。