②SPNsの大部分は良性結節である
SPNsの大部分は良性の結節である。結節径が5〜6mmの場合肺癌である可能性は0.9%、10〜15 mmでは11.1%と報告されているが、一方でφ20 mm以上の結節の約80%は悪性であると言われている。胸部レントゲン写真診断による肺癌の指摘困難症例は、20〜80%に及びそのほとんどが腫瘍径の小さい、X線透過率の高いsubsolid typeの肺癌であると言われている。Stage IA肺癌症例の5年生存率は80%近くまで改善されてきているのでなんとか画像診断により早期発見したいものである。画像診断によるSPNsの良悪性の診断にはDynamic CTとF18-FDGPETによる評価が有効とされている。Dynamic CTでは15 Hounsfield Units(HU)より小さい造影効果しか得られない結節は強く良性結節を示唆すると言われている(陰性的中率96%)。それに対して30 HUより大きい造影効果の得られる結節は感度99%、特異度54%で悪性結節を示唆すると報告されている。PETによる悪性腫瘍の診断(SUVmax > 2.5)では、φ10 mm以上の結節であれば感度/特異度ともに約90%であると報告されている。
③悪性結節を疑う所見
典型的な悪性腫瘍の結節では体積が2倍に増大するのにかかる時間は400日以内である。悪性腫瘍を疑う腫瘤の形態としては、辺縁がギザギザの外観(speculated margin)、胸膜引き込み(胸膜陥入)像または肥厚、非対称性の石灰化を内部に認めるもの、直接気管支や血管に直結する結節、上葉に存在するものはリスクの高い結節と考えられる。
一方、分葉形態や辺縁が平滑である結節、内部に脂肪を含む結節(-50〜-75 Hounsfield units(HU))、中心性または中心に向かう対称性の石灰化を伴う結節は良性結節である傾向が高い。一般に2年間サイズ不変のSPNは良性腫瘤である事でコンセンサスが得られている。
SPNsの症例で、①直径が大きい、②不整形の外縁を呈す、③石灰化を認めない、④肺の中心部に位置する、⑤FDGの取り込みが亢進している、⑥subsolidの外観を呈するなどの条件を満たす場合は外科的切除の適応を考えるべき病変と言える。良/悪性を示唆するシェーマを参考文献5より引用させて頂いた。下図の中心性石灰化や層状の石灰化を伴う病変の典型例は感染に伴う肉芽種であると言われている。ただしpopcorn様の石灰化は過誤種の特徴とされてはいるが、必ずしも良性所見ではないことに注意を要す。