Case20; PBC: 抗ミトコンドリア抗体(特に抗ミトコンドリアM2抗体)と慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)の存在意義、標準治療薬としてのウルソデオキシコール酸(UDCA)の効果に関するUPDATEと側副血行路発達に伴う著明な食道静脈瘤を認めた門脈圧亢進型の1ケースレポート

③PBCの分類: 無症候性PBC と 有症候性PBC

PBCは掻痒感や肝障害による自覚症状、臓器障害などの有無により、
1. 無症候性PBC (a-PBC: asymptomatic PBC)
2. 有症候性PBC (s-PBC: symptomatic PBC)     の2グループに分類され、さらに黄疸を生じているかどうかで、
  S1-PBC: 掻痒感のみの症例
  S2-PBC: 高ビリルビン血症 (T.Bil 2mg/dl以上)を伴う症例  に亜分類される。

a-PBCの10年生存率は90%以上であるが、 S-PBCの10年生存率は50%程度と報告されている。アルカリフォスファターゼ( ALP: Alkaline Phospatase )が正常値の、無症候AMA陽性症例がPBCへ進展する確率は5年で16%とも報告されている。食道静脈瘤形成に至ったPBC患者の3年生存率は59%で、静脈瘤破裂を1回経験した症例の3年生存率は46%と報告されている。PBCは、臨床経過により緩徐進行型と門脈圧亢進型、肝不全型の3パターンに分類することもできる(大部分は緩徐進行型)。抗セントロメア抗体と重症度の関連性に関してははっきりした結論は出ていないが、抗gp210抗体がPBCの予後推定の指標となりうる可能性が示唆されている。

PBCのターゲットとなるのは小型胆管(小葉間胆管)で、組織所見では門脈域の単核球浸潤と慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC: Chronic Nonsuppurative Destructive Cholangitis), 肉芽種形成、胆管消失が特徴とされる。肝組織診断ではstage I ~ IVの4期に分類される。
Stage I期に認められるCNSDCをともなう病変は、florid duct lesionと呼称される。Stage II期に特徴的なインターフェイス肝炎(IH: Interface Hepatitis)は、①lymphocytic piecemeal necrosis (自己免疫性肝炎に見られるような単核球浸潤による限界板のかじりこみ: periportal hepatitis))、②biliary piecemeal necrosis(細胆管増生と胆管周囲の浮腫、繊維化、胆汁鬱滞)の2つのタイプに分けられる。Stage III期は、肝小葉構造の断裂を示す線維性隔壁形成( fibrous septa, bridging necrosis)、Stage IVは肝硬変である。

病期が進行すると小型胆管消失にによる高度の胆汁鬱滞と高ビリルビン血症を生じ、掻痒感を伴うようになる。

典型的なflorid  duct lesion/IHを認めたPBCの肝生検組織像(HE染色)を提示する。

x 100                                                         x 400                     (*Photo by iPhone 8)
門脈域への著明な単核球浸潤、末梢門脈枝の狭小化、CNSDC、軽度のIHを認め典型的なPBCの組織像(Scheuer I期相当)である。

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