Case20; PBC: 抗ミトコンドリア抗体(特に抗ミトコンドリアM2抗体)と慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)の存在意義、標準治療薬としてのウルソデオキシコール酸(UDCA)の効果に関するUPDATEと側副血行路発達に伴う著明な食道静脈瘤を認めた門脈圧亢進型の1ケースレポート

②PBCに認められる代表的自己抗体 : 抗ミトコンドリア抗体

PBCに認められる代表的自己抗体は、抗ミトコンドリア抗体( AMA: Anti-Mitochondrial Antibodies)であり、PBC患者の95%に陽性である。AMAの対応抗原はミトコンドリア内膜にあるピルビン酸脱水素酵素群(PDC: Pyruvate Dehydrogenase Complex)のE2とE3結合蛋白質であることがわかっている。さらにこの亜分画であるM2分画に対する抗体であるAMA-M2抗体が感度/特異度共にPBCの診断には優れていると言われている。しかしながらAMAのみ陽性の症例が3~5%存在し、AMAもAMA-M2も陰性の症例が5〜10%ほど存在すると報告されているので血液検査のみでPBCの存在は否定できない。本邦では、一般人口の0.64% (11/1714)がAMA陽性であったと報告されている。AMA陰性症例でもsp100やgp210抗体は30%以上で陽性となりうるので陰性症例では測定する価値がある(ただし保険適応なし)。形質芽細胞(plasmablast)から産生される大半のAMAは免疫グロブリンIgAであり、トランスサイトーシスにより胆管上皮細胞を通過しミトコンドリア機能を障害している可能性がある。PBCで障害を受ける小型胆管には陰イオン交換輸送体(AE2 : Anion Exchanger2)が存在し、管腔内に重炭酸イオンを分泌することにより胆汁中のリポポリサッカライド(LPS)などの病原体関連分子パターン(PAMPs : Pathogen-Associated Molecular Patterns)から胆管細胞を守っている。PBCの胆管細胞ではAE2活性の低下により自己免疫担当細胞の遊走と胆管障害が引き起こされると考えられているが、この原因に関しては解明されていない。

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