Case 19; HFpEF: HFpEFは左室拡張機能の低下を特徴とする心不全であるが、その多くは左室駆出率が正常に維持(LVEF≧60)されている病態とはいえない。左室拡張能とdp/dt曲線、inertia force、 左室サクション、BNPに関してのUPDATEとEFが正常なHFpEFの1ケースレポート

BNP(brain natriuretic peptide: 脳性ナトリウム利尿ペプチド)は健康な成人では18.4 pg/ml以上となる事はなく、心不全のマーカーとして重宝されている。

BNPは高齢者で50pg以下の偏差で正常値よりも上昇し、心房細動合併時には100pgまでの偏差で上昇を認めると報告されている。急性/慢性心不全ガイドラインではBNP=100pg/mlをカットオフ値と設定してあり、これ以上の場合は積極的に心不全を疑って精査をするように指示されている。しかしながらHFpEFに関しては僅かな上昇しか認めない場合も多く病態には反映されにくい。IF(またはIS)は左心カテーテル検査を施行して測定しなければ計算できないので、かなり煩雑である。何かこれを代用できる簡便な指標があれば便利である。HFpEFの分類の基準値となっているLVEF=50%をもう少し厳密に限定できるのであればこれに越した事はない。LVEF=58%が、inertia stressを保有しているかどうかの分岐点となり得ることを示唆するのが下図(参考文献❸のFig. 5より引用)である。LVEF≧58%の患者の大半の予後は良好である。

文献❸より引用

一方で、50%≦LVEF ≦55%のHFpEF症例で冠動脈疾患を伴う症例では、31ヵ月の経過観察で約10%がHFmrEFに移行したという報告もあり、LVEF値が55-58%くらいの所で予後良好なHFpEFをすみわけする指標であるかもしれない。

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