区間[ab]においてA弁、M弁共に閉鎖しているので血流による左室圧への影響はないと考えられる。従ってこの一次関数直線が左室本来の等容弛緩を表現していると考えられ、外力が左室壁に作用しない限りPoでのMaxーdp/dt値はdに相当するはずで下方へずれは生じない。
この近似式から、
P(t1)-P'(t2) = ∫ー(ーkP(t)+C)dt (積分区間はt1→t2) -①
一方
P(t1)-P(t2) = ∫(ーdP/dt)dt (積分区間はt1→t2) -②
また近似式より dt = dP/(-kP(t) + C )であるが、実際にはPーdp/dt曲線はshaggyであり、P(t)値の候補となる左室内圧は1点収束するMax -dp/dtのx座標であるPoのみが正確な定数値として採択できる(一次関数直線に対してPoからおろした垂線の交点がdであるので、Po-d間の距離をDとおく)。
P(t)にPoを採用して dt = dP/(-kPo + C )-③
tがt1→t2まで変化する時、PはP(t1)→P(t2)まで変化するので変数変換(置換積分)を考えると、
②-①より、
P'(t2)-P(t2) = ∫ (-(ーdP/dt)+(-kP(t)+C) )dt
(積分区間はt1→t2)
③を代入して
= 1/(-kPo + C ) ・∫ (-(ーdP/dt)+(-kP(t)+C) )dP
(積分区間はP(t1)→P(t2))
= -1/(-kPo + C ) ・∫ (-(ーdP/dt)+(-kP(t)+C) )dP
(積分区間はP(t2)→P(t1))
= 1/D ・∫ (-(ーdP/dt)+(-kP(t)+C) )dP
(積分区間はP(t2)→P(t1))
これは斜線部分の面積をDで除した値に一致する。 この圧格差P'(t2)-P(t2)がinertia forceと定義されている。
上記より、IFによる過剰収縮が加わることでよりスピーディーに等容性弛緩期 に移行することが可能となると考えられる。IF(またはIS(Inertia Stress)の値は、0.5 mmHG以上を陽性としている。
右図は、IFの存在する症例(A)と存在しない症例(B)のーdp/dtの減衰を左図は示すが(参考文献2. Figure 2より引用)、IFを失っている症例はA弁閉鎖時より一次関数直線に乗っている。これは左室が完全に自力で仕事をいる状態であり、IFによる補助がない分だけ左室心筋への負荷が増していると考えられる。これらが1収縮ごとに積み重なってくると、積算負荷がどんどん拡張機能に影響してくるのかもしれない。