Case 19; HFpEF: HFpEFは左室拡張機能の低下を特徴とする心不全であるが、その多くは左室駆出率が正常に維持(LVEF≧60)されている病態とはいえない。左室拡張能とdp/dt曲線、inertia force、 左室サクション、BNPに関してのUPDATEとEFが正常なHFpEFの1ケースレポート

HFpFF:拡張不全(左心室の拡張能低下)が主体の心不全

先進国では人口の約1%がHFpEFに罹患していると報告されており、心不全入院患者の半数はHFpEFが占める。日本でのHFpEFによる入院は年間100.000件を超える。HFpEFは拡張能の低下が特徴ではあるが、多くはEFが正常範囲であるわけではなく、並存疾患がHFrEFとは異なる。多くのコホート研究では高血圧が最大の並存疾患(60〜80%、日本人では77.2%(JASPER registry))であり、続いて冠動脈疾患(35〜70%、日本人では27.7%)、2型糖尿病(20〜45%、日本人では38.1%)、肥満などがあげられる。心房細動の合併は15〜40%と報告されているが日本人では62%に認められた。日本人において高血圧と心房細動の合併は高率であり、肥満の合併はむしろ低かった。これら2疾患の早期積極的治療介入によりHFpEFへの進展を抑制できるかもしれない。従って発症初期段階での高血圧管理は非常に重要な課題であると言えます。HFpEFの30%位に右室機能障害が合併するのではないかと推定されている。

診断基準は、:①心不全症状 ②LVEFが保たれている(>50%)、③心エコー検査(UCG)またはカテーテル検査で左室拡張能障害の存在が確認できた場合となりますのでUCG検査は非常に重要な役割を果たす事になります。

LVEF>50%として上限閾値をどこに置くかという事に関しては現在コンセンサスがありませんが、LVEF=58%を上限閾値に置くのが良いという報告がある。その根拠として、LVEFが50-60%の段階ではすでにinertia force (IF:*慣性力?と訳すのでしょうか)を失っているため十分な弾性反跳(Elastic Recoil: ER )が得られない状態であると説明されています。IFに関して原著論文をネット閲覧できるようでしたのでこの辺りを考察してみました。

以下図は下記論文より参考、引用させていただきました。

❶.Motoaki S, Keisuke U et al.  Aortic blood momentum – the more the better for the ejecting heart in vivo? Cardiovasc Res 1977; 33: p433–p444 
❷.Takayuki Y, Nobuyuki O,  et al. Lack of inertia force of late systolic aortic flow is a cause of left ventricular isolated diastolic dysfunction in patients with coronary artery disease.  J Am Coll  Cardiol 2006; 48: p983-991
❸.Toshihiko G, Kazuaki W, et al. Patients with left ventricular ejection fraction greater than 58 % have fewer incidences of future acute decompensated heart failure admission and all‐cause mortality. Heart Vessel 2016; 31: p734-p743.

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