③HCOMの診断/分類
HCMのうち、左室流出路狭窄(連続ドプラ法を用いた計測で安静時に少なくとも30mmHgの左室流出路圧格差を認める)を伴うものを閉塞性肥大型心筋症(HOCM)と呼びます。HCMの約25%を占めると言われています。HOCMの重症例では、心エコー図法のMモード描写で僧帽弁の収縮期前方運動(SAM)が認められます。ガドリニウムを用いた心臓造影MRI(DCEMRI)では、肥大部心筋の中層や右室心筋接合部に遅延造影効果が認められることがHCMの特徴的とされ、約80%に認められるとの報告があります。心筋の繊維化に関連していると考えられており、遅延造影効果が広範囲に見られる症例ほど高リスクな状態であると考えられています。流出路圧格差を認めるHCOMとして、左下記の図(参考文献1より引用)のように
1.特発性肥厚性大動脈弁下狭窄症
(Ideopathic HypertrophicSubaortic Stenosis: IHSS)、
2.心室中部閉塞型心筋症(Mid-Ventricular Obstruction: MVO)
の2つのタイプに分類されます。
⑤HCOMの治療
HOCMの薬物療法には、①β遮断剤、②カルシウム拮抗剤、③Ia群抗不整脈薬などが用いられますが、内科治療抵抗性で症状が強い場合は非薬物療法(外科療法(心筋切開/切除術)、経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)、DDDペースメーカー植え込み術)の適応となります。
*経皮的中隔心筋焼灼術(Percutaneous Transluminal Septal Myocardial Ablation: PTSMA)
左室流出路障害の原因となる肥厚した中隔心筋を高純度エタノール用いて壊死(梗塞)に導くことで流出路狭窄を改善させる治療法であり、壊死部心筋の縮小による壁肥厚の減少、症状の改善が得られる。手技はは冠動脈造影の常法に基づき、狭窄の原因となっている箇所の心室筋を還流する中隔枝までカテーテルを挿入し、コントラストエコー法により標的部位を確認した後、0.5mlの純エタノールを30秒以上かけて注入することで超選択的に梗塞巣を作成する。流出路圧格差が25mmHg以下に制御されれば成功と評価される。心筋切開手術に比べ難易度が高くないので、近年導入されてきている治療法であるが長期予後や合併症に関するエビデンスがまだ十分とは言えない治療法ではある。