Hypertrophic Obstructive CardioMyopathy (HOCM): 閉塞性肥大型心筋症
心筋症(CM)は、”心筋に構造的、機能的異常をきたす心筋障害であり、この障害を説明できるような冠動脈疾患、高血圧、弁膜疾患、先天性心疾患を有さないもの”と定義されますが、この中で心室筋の肥大を特徴とするものを肥大型心筋症(HCM)として分類します。HCMは指定難病 No.58です。
①HCOMの有病率、生存率、死因
HCMの有病率は、人口10万人あたり374人と報告されており、男女比は2:3で年齢別分布は60〜69歳にピークを認めます。HCMの5年生存率は91.5%、10年生存率は81.8%で、年間死亡率は2.8%、突然死(不整脈関連)、心不全死、心房細動に由来する脳血栓塞栓症が主な死因と報告されています。HCMの突然死の発現頻度は年間1%未満と報告されていますが、突然死の危険因子として、①HCMに伴う突然死の家族歴(40〜50歳未満)、②原因不明の失神、③著明な左室肥大(30mm以上)、④ホルター心電図による非持続性心室頻拍、⑤運動中の血圧異常反応(低下)の5因子が挙げられ、危険因子2つ以上で高度危険群に相当します。C型肝炎ウイルス感染はHCMの原因の一つと考えられています。
②HCOMの症状
HCMは、①胸部症状として、胸痛、動悸や呼吸困難、②脳虚血症状として立ちくらみ、眼前暗黒感や失神などを認めることが多いですが、初期の段階では無症状のこともあります。心電図検査では、異常Q波、ST-T変化、陰性T波、左室高電位などの所見を高率に認めます。特に胸部誘導でのR/T波高比が小さいことは特徴的な所見でもあります。無症状症例では検診での心電図異常が診断の切っ掛けになりますので上記のような心電図異常を検診で指摘された場合は放置しないように注意していただく必要があります。診断の決め手となる検査は心エコー図法(UCG)で、非均等型の左室壁肥厚を描出することにありますが対称性壁肥厚を認める場合もあります。描出が困難な場合は、CT/MRIにより壁肥厚を捉えることが可能です。