Obturator Hernia (OH): 閉鎖孔ヘルニア
閉鎖孔ヘルニア(OH)は、非常に稀なタイプのヘルニアでヘルニア症例全体の0.07-1%、小腸機械的イレウスの0.2-1.6%、全イレウスの0.4%を占めると報告されている。OHは、特徴的な症状が指摘困難(通常の閉塞性小腸イレウスと鑑別困難)なため術前診断に難渋することもあり、死亡率が13-40%と高いと報告されている。OHは、俗称”old little lady hernia”とも表現されており、高齢の痩せ型、多産女性に発症しやすいという傾向がある。
OHは直径1cm x 長径2~3cmの閉鎖孔に主に小腸が嵌入することで生じる。ヘルニア内容物は虫垂やメッケル憩室、大網を含むこともある。OHの69%は右側に生じると報告されており、OHには①腹膜外の脂肪組織が閉鎖孔に引き込まれただけの状態、②閉鎖孔の腹膜面に陥凹が生じている状態、③小腸が嵌入してRichiter型ヘルニアを生じた状態の3パターンが存在すると考えられている。
閉鎖孔の入り口に当たる閉鎖管は辺縁が強靭で細長い斜管であるため嵌入した小腸が不可逆性に嵌頓するRichiter型ヘルニアのパターンをとることが多く、80%までのOH症例が閉塞性イレウスの症状を示す。嵌頓した小腸は壊死しやすく穿孔を来たしやすい一方、自然還納されて寛解することもあるため原因のよくわからない再発を繰り返す小腸イレウス症例はOHの可能性を考慮する必要性があると言える。嵌頓腸管(ヘルニアサック)はしばしば同側の閉鎖神経を圧迫するためHowship-Rhomberg Sign(HRS)を認める。HRSは、大腿内側に放散する痺れや疼痛でOH症例の15-50%に伴うと報告されているが腰椎にもともとアクシデントを有する症例では坐骨神経痛と区別するのが困難であり自覚症状を拾い上げるのは困難なことも多い。
HRCT(High Resolution Computed Tomography)の普及に伴い術前診断されたOH症例が散見されるようになった。典型的なOH症例では、外閉鎖筋と恥骨筋の間隙にヘルニアサックと考えられる軟部腫瘤陰影を指摘できる。OHに対するHRCTの感度/特異度に関する文献は検索した範囲では見つけることができなかった。
OHの治療は手術療法であり、最近は腹腔鏡手術の有用性が報告されている。