Case 17; ARCD vs ALCD: 真性憩室の炎症である右側大腸憩室炎は左側大腸憩室炎より重症化しにくい。憩室炎罹患後には、約半数に過敏性腸症(post diverticulitis irritable bowel syndrome)を認める。右側結腸憩室炎の2ケースレポート。

Acute Colonic Diverticulitis (ACD): 急性大腸憩室炎 

<Part2:Rightsided Colonic Diveticulitis  (RCD) : 右側結腸憩室炎

 右側結腸憩室炎(RCD)はアジアではよく認められる疾患とされているが、西洋ではほとんどが左側結腸憩室炎(LCD)でありWSES(World Society of Emergency Surgery )でもRCDの治療方針に関しては言及していない(憩室症症例のうち、右側憩室症の指摘頻度は、アジアでは50-70%、西洋では1.5%の頻度と報告されている)。

大腸憩室症は一般に、腸管壁の筋層欠損部位から粘膜面が腸管内腔面と反対側に突出することで形成されると解釈されているが原因は特定できていない。大腸憩室症は大腸憩室炎発症のリスクファクターであることは容易に想定できるが、実際に急性憩室炎を発症する症例はこのうち1〜4%に過ぎない。また、大腸憩室症として何らかの症状(過敏性腸症、憩室出血など)を呈する症例は約25%とも報告されている。

RCDは、LCDと比べ若年者に多く認められ外来抗生剤経口投与にて改善が得られることが多い。当院でもRCD症例は今のところ全例外来保存的治療で完治している。外科治療が必要な症例は、再発症例(憩室炎全体での再発率は16.7%)や穿孔などの重篤な合併症症例に限られる。しかしながらLCD同様に抗生剤投与が全症例に必要なわけではなく腸管安静(低残渣食など)による経過観察で十分な症例も存在すると考えられる。だだし、虫垂炎時に稀に門脈炎や肝膿瘍の合併が認められることを考慮すると私見として、少なくとも熱発を伴う症例に対しては抗生剤投与は必要ではないかと考える。

RCDが重症化しない理由の一つとして、右側憩室が真性憩室(腸管壁の全層が管腔外に突出したもの)であるのに対して左側憩室が仮性憩室(筋層を伴わない)という解剖学的特徴が挙げられている。左側憩室は、便秘や食習慣などに基づく腸管内圧上昇により生じた圧出性憩室と考えられる。もう一つの理由としては右側結腸(特に上行結腸)は後腹膜に固定されている為炎症が広がりにくいと考えられている。

RCDは臨床所見が虫垂炎と酷似している為、画像診断を用いない場合の両者の鑑別は困難なものとなる(CTを用いると正診率は約98%と報告されている)が、臨床症状で嘔気/嘔吐を伴う場合は憩室炎よりは、むしろ虫垂炎の可能性を示唆しうる。

ACD初発後の完治した症例経過に関しては、急性憩室炎後過敏性腸症(post diverticulitis irritable bowel syndrome)を半数近くに認めると報告されている、これは憩室炎が完治した後も、慢性の腹痛や排便異常症状が継続するということがありうるということを示している。

憩室炎治療にて完治した症例の1/5が再発し、初回再発症例の次回再発リスクは最大50%/5〜10年と報告されている。初回再発のリスクを上昇させる因子として非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDS)の常用、アスピリンの常用、喫煙、肥満が挙げられている。一方、運動、高繊維含有食は再発リスクを減少させると言われている(ただし高繊維含有食に関するevidenceははっきりしたものがない)。種類、ポップコーン、ナッツも再発リスクを上昇させるという根拠に乏しい、

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメントの入力は終了しました。