Atrial Fibrillation(AF): 心房細動/Atrial Flutter(AFL): 心房粗動
①AF/AFLとCHADS2スコア/DOAC
AF/AFLともに、心原性脳血栓塞栓症の原因となる不整脈で、血栓塞栓発症リスク(年率)はCHADS2スコアの点数を2倍した値(%)に相当すると言われ、直接経口抗凝固剤(DOAC)による血栓予防が必要となる不整脈です(AFLは、AFとは塞栓リスクが異なるかもしれないが現行では同じ範疇で取り扱われている)。頻脈性心不全、徐脈性失神などによる心血管事故は、適切な心拍数のコントロール(レートコントロール)により抑制されます。
②DOAC服用の基準
DOAC服用の適応基準はCHADS2スコアの点数により階層化されており、基本的にはDOACの重大な副作用である大出血のリスクをDOACの血栓予防効果が上回る場合に適用されます。
③心房細動(AF)とは
AFは、400〜600Hz(1分間に400 〜600回)の頻度で心房が不整収縮を起こしている状態で、このため提示した心電図の様に基線が波打って見えます。心房の興奮に心室筋の応答が十分な場合頻拍を生じ、脈拍数が120bpm(120 拍/分)を越えるあたりから動悸発作として自覚されます。
AFは発作の持続時間から3種類に分類されます。
①発作性心房細動(PAF):発作性に出現し7日以内に自然停止
②持続性心房細動:7日以上持続し発作の停止に薬剤または、電気的除細動が必要
③永続性(慢性)心房細動:除細動できずに発作が永続している
*AFLは200~400Hz(1分間に200〜400回)に頻度で規則的に心房収縮を生じた状態です。
AFの40%は症状がなく無症候性であると言われていますが、無症候性AFの予後は何らかの症状を有する有症候性AFよりも悪く、これは症状がないことによる診断/治療介入の遅れが起因しているとも考えられます。さらにAFの死因の半数は心不全であり、これは単に抗凝固療法で血栓形成を回避できれば予後が改善する訳ではないことを示しているとも言えます。こういった背景から、カテーテルアブレーションによるAF根治療法が脚光を浴びるようになってきていますが、カテーテルアブレーションによるAFの根治率は、発症からの経過年数依存性に低下するため治療成績向上の観点からは、発作性心房細動を繰り返している時期早々にカテーテルアブレーションによる根治療法を受けることがもっとも効率的な治療となります。
⑤カテーテルアブレーションの適応
現在のカテーテルアブレーションの適応は症状のあるAFということに限定されていますが、年齢や疾患予後を考慮すると無症候性の壮年期AFに対してはカテーテルアブレーションによる根治療法をお勧めするスタンスを取りたいと考えます。現行のAFのカテーテルアブレーションに関して日本循環器学会の適応基準を下記に引用しました。
クラス I |
1. 高度の左房拡大や高度の左室機能低下を認めず、かつ重症肺疾患のない薬物療法抵抗性の有症候性の発作性心房細動で年間50例以上の心房細動アブレーションを実施している施設で行われる場合 |
クラス IIa |
1. 薬物治療抵抗性の有症候性の発作性および持続性心房細動2.パイロットや公共交通機関の運転手など職業上制限となる場合3. 薬物治療が有効であるが心房細動治療を希望する場合 |
クラス IIb |
1. 高度の左室拡大や高度の左室機能低下を認める薬物治療抵抗性の有症候性の発作性または持続性心房細動2. 無症状あるいは、QOLの著しい低下を伴わない発作性および持続性心房細動 |
クラス III |
1. 左房内血栓が疑われる場合2. 抗凝固療法が禁忌の場合 |
Uploaded on September 21, 2018.
参考文献:
1. Benjamin EJ, Wolf PA. et al. Impact of atrial fibrillation on the risk of death: The Framingham Heart Study. Circulation 1998; 98: p946-952
2. 山下 武志. 不整脈に対するアブレーションの適応と限界. 心臓 2015; 7(5): p 634-636
3. 奥村 謙, 相澤 義房, 他. “カテーテルアブレーションの適応と手技に関するガイドライン”. 循環器の診断と治療に関するガイドライン 2012. 日本循環器病学会 2012: p27-40
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