熱中症と新型コロナ感染症

新型コロナ感染症(KP3株)が微増して来ています。猛暑のため熱中症患者も増加しています。新型コロナ感染症と熱中症の鑑別には、抗原キットによる迅速検査が必須となります。熱中症は通常特徴的なパターンで進行します。注意しさえすれば発症を予防できる熱中症について知識をここでアップデートしておきましょう。

◯熱中症の3病型(熱痙攣、熱疲労、熱射病)について

①熱痙攣:heat cramps (新分類I型)

電解質(塩分)を含まない水やお茶などの飲水を行いながらの高温環境下の作業、運動などにより大量の発汗が生じた際に起こります。基本的には低ナトリウム血症の症状が前面に出現し、最も使用した筋群に有痛性痙攣を生じるのが典型的です。多くは高温環境下の作業1日目の発症が多いと言われています。体温上昇を伴うことはまれで悪心、嘔吐、腹痛を伴うことがあります。

[対策]
◯直接現場で塩分補給できるタブレットタイプの電解質(塩飴など)を携帯しておく
◯手足が攣るようになる前に作業を中止し、休憩してミネラル補給
◯冷却の効果は得られないので、やみくもに冷却を行わない
◯現場で制御困難ならすぐ医療機関で生理食塩水の点滴を受ける
大部分の場合、外来で対応可能

②熱疲労 : heat exhaustion(新分類II型)

一般常識で言う熱中症はこのレベルの病態で、38〜40℃前後の発熱と頻脈、起立性低血圧などの高度脱水症状、高ナトリウム血症、めまい、全身倦怠感などの症状が見られる状況ですが意識障害は認めません。

[対策]
◯現場でできる処置は、涼所で安静/臥床、腋窩、鼠径部などを氷結ペットボトルにタオルを巻いて冷やす、濡れた衣服を脱がせぬるま湯程度(水道水でいい)の水を霧吹きで体表面にスプレーして扇風機で蒸発させる等
◯救急要請(119番コール)を行い、早々に救急外来を受診して処置を受ける
大部分の場合、外来で対応可能、一部入院の可能性あり

③熱射病:heat stroke(新分類 III, IV型)

最重症型で、死亡率は10〜80%と言われています。体温調節機能の破綻に伴い、前兆なく突然発症し、重度の中枢神経障害(昏睡、全身痙攣、せん妄など)と臓器障害を伴います。血液検査でCPK上昇(横紋筋融解)や乳酸アシドーシスを伴う症例は急性腎不全に移行することもありハイリスクと言えます。突然路上で倒れたまま死亡に至るケースなどが稀にあります。
新分類ではIII型のうち、深部体温40℃以上で意識障害(GCS≦8点)のあるものをIV型としています。

[対策]
◯現場でできる処置は、ほとんどありませんのでこのような方に遭遇された場合直ちに安全な場所へ移動させて救急要請(119番コール)を行い、救急車の到着を待ってください。
基本的に全症例入院が必要で、一部集中治療室での管理となります。

新型コロナウイルスKP3株が再流行し始めておりますので、救急現場での対応がまた少し難しくなって来ております。今のところKP3株の人体障害性が強化されてたと言う報告はございませんが、大勢来院されますと基幹病院救急受入が再びストップする可能性があり得ます。熱中症と新型コロナウイルス感染症に対して可能な対策を十分個人で行っていただけますようお願いいたします。

参考文献:熱中症ガイドライン2024. 日本救急医学会

                             Updated on July 26, 2024.

 

  

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