(1)中和抗体とは何か?
中和抗体(Neutralizing Antibody : Nab)とは、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)が細胞に結合するのを阻害する抗体を示します。SARS-CoV2は、ウイルス粒子表面に複数存在しているスパイク蛋白(Spike Protein)を用いて、表面にアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体を発現している細胞に侵入し増殖します。NAbは、図1の様にスパイク蛋白に結合することでウイルスのACE2受容体への結合を阻害することで感染成立を阻止する作用を発揮します(1)。
NAbは、基本的に新型コロナウイルス感染から回復した患者血清には存在することが確認されています(2)。人種/性別その他様々な要因によりウイルスに対する免疫反応は人それぞれ多様性があり、中和抗体の力価(阻害する能力)も様々なレベル でいろんな部位に結合する抗体が産生されますが、多くの回復患者血清から抗体を定性して力価を調べることで主にスパイク蛋白(S蛋白)のRBD(Receptor Binding Domain)、および、NTD(N–terminal Domain)に対応する強い中和活性を示す抗体が存在することが現在解明されています(3)。しかしながら、強い中和活性を示す抗体群のうち、多く分画を占めているのがRBDに対する抗体であるのでこの部位に対する抗体産生を誘導することに主眼を置いてデザインされたワクチンが現在主に使用されているmRNAワクチン、アデノウイルスベクターワクチンです。