番外編:自宅の川魚水槽

散歩も難しい日々が続いています。自粛生活の癒しになっている自宅の水槽を今回は紹介したいと思います。

2020年4月撮影 60㎝水槽

水草は 初心者に最適 なアヌビアス・ナナです。筆者の水槽歴は、20年以上になるのですが、この水草はほんとに強いと思います。水槽に適した水草は色々あるのですが、水質によっては溶けるように枯れたり、魚たちに食べられたり、光が足りなくて枯れてしまったりと、その育成はなかなか難しいのです。流木はホームセンターで購入したものです。時々、水に沈まなかったり、水質が悪化したりするので、沸騰したお湯に入れる等、あく抜きをお勧めします。

普段は熱帯魚(小型の淡水魚)を飼っているのですが、数年前から、近くの川からすくってきた川魚も少し入れています。

2020年4月撮影 水槽内の川魚

どちらも在来種です。稚魚の時にすくってきました。カワムツの体には黒いスジがあって、だんだんはっきりしてきています。そしてヒレは赤みを帯びてきて、なかなか綺麗です。オイカワは初め、(ちょっと様子が違っていたので)カワムツのメスかなと思っていました。白っぽい銀色で、鼻の先(口の先)が赤いのです。詳しく調べてみたら、オイカワの稚魚の特徴にぴったりでした。オイカワは「カワムツより光沢のある銀白色で、徐々に口先の部分に赤い点が現れる」のだそうです

2020年4月撮影 川魚の混泳

オイカワが離れて泳いでいる時もありますが、比較的仲良く泳いでいます。

水草の上の黄色い魚に気づきましたか?熱帯魚です。ゴールデン・アルジイーターと言います。ドジョウの仲間で、吸盤のような口を使って水槽のコケを食べてくれます。稚魚の頃の性格は比較的おとなしいので混泳向きなのですが、成魚になると、かなり暴れん坊です。しかも10㎝くらいにはなるので、ちょっとドキドキです。仲良くやってくれるといいのですが…

2020年4月撮影 ゴールデン・アルジイーター

そして、シジミもいます。消費期限が切れてしまったスーパーのシジミです。宍道湖(汽水湖:淡水に海水が混ざっている湖)のシジミだったので、淡水では無理かなと思いつつ7個体投入してみました。1個体のみ適応したようです。

2020年4月撮影 シジミ

ところで、オイカワはとてもよく跳ねます。水槽の掃除の時、ガラスの蓋をとっていて、コンッと音がしたなと思ったら、上部に設置してある水槽用のライトにオイカワがぶつかって水中に落ちて行くところでした。オイカワの生態を調べてみると、よく跳ねると書いてありました。水槽には必ず蓋ですね。オイカワに限らず、魚が飛び出てしまいますから。

大原美術館:『オーヴェルシーの運河』シニャック

塗り方がとてもおもしろい絵だなと思いました。

大原美術館
ポール・シニャック(1863-1935)
『オーヴェルシーの運河』1906

【鑑賞の小ネタ】
・この絵はオランダのOverschie
・シニャックの趣味はセーリング
・海岸風景画が多い
・スーラと共に新印象派の巨匠

点々、凄いですよね。根気がいりそうな塗り方です。時間もかかりそうです。点描(テンビョウ)という点やとても短いタッチで表現する技法で描かれています。印象派の画家たちは、視覚混合(遠くから見ると混じり合ってひとつの色に見える光学現象)を絵画に応用し、筆触分割(パレットの上で絵の具を混ぜずに、原色に近い絵の具の小さなタッチをキャンパスの上に並べる)の方法を生み出しました。点描画法では、筆触分割の小さなタッチがもっと細かいタッチ、点に近いものになっていますね。シニャックが大きな影響を受けたジョルジュ・スーラの作品を見ると、さらに細かいタッチの点描になっているのが分かります。

シカゴ美術館
ジョルジュ・スーラ(1859-1891)
『グランド・ジャット島の日曜日の午後』1884-1886

『オーヴェルシーの運河』には大きな風車が描かれています。オランダなんだろうなと思い、地図を見てみると、オランダにはオーヴェルシーはなくて、フランスにオーベルシーがありました。え?と思いましたが、よくある読み方の問題でした。筆者の見た地図では、オランダのオーフェルスヒー(Overschie)となっていました。そしてフランスのオーベルシー(Aubercy)でした。ちなみに、オランダのオーフェルスヒーには立派な運河がありますが、フランスのオーベルシーには運河はありません。

シニャックは1884年にスーラに出会っています。スーラの描写方法や色彩理論に心打たれ、忠実な支持者となり、スーラ(1891年31歳で死去)亡き後、新印象派の発展と体系化に努めました。スーラに出会う前の作品はこちら。

オルセー美術館
ポール・シニャック
『パリ郊外、ジュヌヴィリエ街道』1883

オーヴェルシー(オーフェルスヒー)はどんなところだったのでしょうか?同時代の画家の作品がこちら。

ボイマンス・ヴァン・べーニンゲン美術館
ポール・ハブリエル
『オーフェルスヒー近くの風車のある干拓地』1898

風車が描かれていますね。オーフェルスヒーは、オランダのロッテルダムの中の都市なので、ロッテルダムを描いた作品も紹介します。

ボイマンス・ヴァン・べーニンゲン美術館
ヨハン・ヨンキント(1819-1891)
『ロッテルダム』1867

中央に特徴的な建物が描かれていますが、この建物、大原美術館の『オーヴェルシーの運河』の中にも描かれているような…

特徴的な建物

黄色で囲った部分です。ちょっと似てると思いませんか?塔の上部辺りが、ポコポコと丸みを帯びて特徴的だったので、前から気になってました。この建物に似たロッテルダム(オーフェルスヒー)の建築物がないか、色々画像を調べてみました。

アムステルダム国立美術館
ヨハン・ヨンキント(1819-1891)
『月明かりの下でのオーフェルスヒー』1871
ヨハン・ヨンキント(1819-1891)
『オランダ、オーフェルスヒーの眺め』

作品名にはっきりとオーフェルスヒー(オーヴェルシー)とあります。大原美術館の『オーヴェルシーの運河』のあの建物と同じと考えて良いのではないかと思います。そして、やっと見つけました!

出展:Wikipedia 
「Nederlands Hervormde Kerk van Overschie」

「オランダ改革派オーバーシー教会」ではないかと思います。Kerkとはオランダ語で教会で、Overschieをここではオーバーシーとしていますね。

 

次は風車に注目です。『オーヴェルシーの運河』の風車もこの系列の風車だと思います。この絵はヨハン・ヨンキントによるものですが、詳細に描かれているので風車の構造がよく分かります。

ティッセン=ボルミネッサ美術館
ヨハン・ヨンキント
『デルフト近くの風車小屋』1857

鐘楼に鐘楼守がいたように、かつて風車にも風車守がいました。その技術は親方から弟子へ受け継がれていたそうです。2017年にオランダの「風車守の技術」が ユネスコ世界無形文化遺産 に登録されています。

シニャックは、水彩画も多く残しています。

国立西洋美術館
ポール・シニャック
『燈台』19世紀
ポール・シニャック
『ラ・ロシェルの釣り船』1920
ポール・シニャック
『バルフルール』1931

シニャックはセーリングが趣味だったので、海岸風景をたくさん描いてます。水彩画もなかなか良いですよね。

大原美術館:『漁夫』シャヴァンヌ

大原美術館の他の2作品と比べて、かなり描き方が違うなと思いました。

大原美術館
ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(1824-1898)
『漁夫』1856

【鑑賞の小ネタ】
・シャヴァンヌ初期の作品
・かなり写実的
・作品名に「漁夫」が入る他作品あり
・この作品の少し前から壁画装飾を始める

大原美術館にはこの作品の他に、『幻想』と『愛国(習作)』があります。『幻想』は壁画装飾のフレスコ画っぽい仕上がりになっていて、『愛国(習作)』は光を感じる印象派っぽいタッチで塗られています。そしてこの『漁夫』は、とても写実的でアカデミックな感じがします。3点同時に展示されているのを見たことがありますが、比べて見てみるとほんとに違いますョ。筆者は最初、3点それぞれ別の作家が描いたと思っていましたから。

様々な画風(塗り方)を見せてくれるシャヴァンヌですが、どの派とも一線を画していて、象徴主義の先駆者の1人とされています。

『漁夫』1856はシャヴァンヌの初期の作品と言えます。もっと初期の1848年の作品がこちら。

クライスラー美術館
『アレゴリー』1848

シャヴァンヌは1850年にサロン・ド・パリ(官展)にデビューしていますが、8年連続で落選しています。『漁夫』1856は落選中の作品というわけです。ただこの期間、1854ー55年に私邸の食堂のために、初めての壁画装飾も制作しています。1859年にその壁画の1つを再制作した『狩猟からの帰り』が入選してからは、壁画装飾の腕が注目され始めることとなります。

ところで、シャヴァンヌは「漁夫」をテーマとした作品をいくつか残しています。

国立西洋美術館
『貧しき漁夫』1877-1892
プ-シンキ美術館
『貧しき漁夫』1879
オルセー美術館
『貧しき漁夫』1881

作品名は3点とも『貧しき漁夫』となっています。男性は、前で手を組んで祈っているように見えます。細身で疲れているような印象です。大原美術館の『漁夫』は、ドカッと横になってはいますが、筋肉質で健康的な細マッチョに描かれていると思います。「漁夫」がテーマの作品なのですが、「貧しき」がつくと随分違うものですね。

シャヴァンヌは神話や聖書の世界を題材とすることが多く、「漁夫」も何か関係しているのでしょうか?聖書に詳しい方はピンとくると思いますが、キリスト教12使徒の中に、前職が漁師という使徒がかなりいるんです。ペテロ、アンデレ(ペテロの弟)、大ヤコブ、ヨハネ(大ヤコブの弟)が漁師で、フィリポ、トマスも漁師ではないかと言われています。何か関係ありそうですね。

『貧しき漁夫』の女性と子どもはどうでしょう?女性は漁夫の妻で子どもは漁夫の子どもという解釈と、2人とも漁夫の子どもという解釈があるようです。シャヴァンヌ自身は、「妻を亡くした貧しい漁夫を描いた」と説明しているそうです。妻が亡くなっていることは間違いなさそうですが、女性は妻の幻影でも良いわけで、どちらの解釈もありのように思います。ちなみに、オルセー美術館の公式ホームページの解説では、妻を亡くした漁夫と2人の子どもたちとされています。

大原美術館の『漁夫』は、まだ独身って感じがします。妻と子どもがいるようには見えないのですが、いかがでしょう? 解釈は自由だと思いますョ。

大原美術館:『愛国(習作)』シャヴァンヌ

登場人物の関係性が気になる絵だなと思いました。

大原美術館
ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(1824-1898)
『愛国(習作)』1893

【鑑賞の小ネタ】
・女性は誰なのか?
・少年はどうして裸?
・男性が持っている布に注目
・背景はどこの海?
・全体に光を感じる描き方

男性か男性の後方を指す女性は誰なのでしょうか? きっと、聖ジュヌヴィエーヴ (419/422ー512) だと筆者は思っています。

 

パンテオン(パリ)
ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ
「眠るパリの街を見おろす聖ジュヌヴィエーヴ」1989

シャヴァンヌはパリのパンテオンで、聖ジュヌヴィエーヴの連作を手掛けていて、当時のシャヴァンヌにとって大事なテーマになっていたことは間違いなしです。そして聖ジュヌヴィエーヴはパリの守護聖人なので、『愛国』という作品名にもぴったりです。

ゴッホ美術館
ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ
「祈りを捧げる少女時代の聖ジュヌヴィエーヴ」1876

聖ジュヌヴィエーヴはパリ近郊で生まれ、少女の頃は羊飼いだったと言われています。 ゴッホ美術館所蔵のこの絵は、聖ジュヌヴィエーヴの少女時代を描いたもので、白い服を着て祈っている姿が見えますね。後景にはたくさんの羊がいます。

『愛国』の女性は、目の前の男性に、男性か男性の後方を指しながら、強く何かを言っているように見えます。そして右手で布に手をかけています。この白い布に注目してみてください。うっすらと何か見えてきませんか? 

フランスの国旗なんです!縦にした感じです。男性に対して、フランスのために力を尽くして!とか言ってるのでしょうか?

フランスの国旗(トリコロール)

では、この男性はどんな人なんでしょう?なかなか難しいです。服は、普段着のような作業着のような、軍服には見えませんよね。帽子がヘルメットのような硬い素材に見えなくもないですが… 聖ジュヌヴィエーヴは5世紀の人なので、その当時の人かもと思い考えてみましたが、帽子や服の襟元、そして履いているブーツなどから、5世紀の服装にはとても見えません。ある意味、イマドキな感じがするのです。 とりあえず、この男性は、この絵が描かれた19世紀頃の庶民で良いのではないかと思います。 男性が持っているフランスの国旗、トリコロールは5世紀にはまだありませんしね。

ところで、男性の服の色、なんとなく青っぽく見えませんか?青色の服は、羊飼いがよく着ています。聖ジュヌヴィエーヴは少女の頃羊飼いだったので、この男性が羊飼いというのもありなのかもしれませんね。そして、旗が括られているように見える男性の持つ「棒」、この棒にも注目です。「棒」は、羊飼いを表現する時によく描かれるアイテムなんです。ますます羊飼いに見えてきました。

残るは裸の少年です。3人の中で、一番白く光るように描かれているように思います。そこに実在しない感じで、幻影のようです。左手に麦のような何かを持ち、右手にリング状のものを持っています。リング状のものをよく見ると、葉っぱが描かれているようにも見えます。月桂冠でしょうか?月桂樹はギリシャ神話の光明神アポローンの霊木です。光明神とは光り輝く神ということです。この少年、白く光るように描かれていますよね。アポローンは、芸能・芸術の神羊飼いの守護神なんだそうです。羊飼いの守護神、やはり男性は羊飼いで、少年は光明神アポローンなのかもしれませんね。そして人ではない神ならば、裸で描かれるのもありです。

少年が持つ左手ののようなものは何でしょう?なんと、聖ジュヌヴィエーヴには麦にまつわる話がいくつかあるんです。フランク族にパリが包囲され、市民が飢餓に陥った時、ジュヌヴィエーヴの指示で勇気ある人々がパリから脱出し、を持ち帰り、パリの人々を助けたという話が残っています。そしてこの頃から、ジュヌヴィエーヴはパリの守護聖人になっているようです。また、12世紀のフランスで、死にいたる重篤な症状を惹き起こすことがある麦角病(麦などの穀物に寄生する麦角菌による食中毒)が流行した時、聖ジュヌヴィエーヴの棺を見たり触ったりした多くの市民が癒されたと伝えられています。ということで、少年が持っているのは麦でどうでしょうか?

アポローンをさらに調べてみると、病を払う治療神というのがありました!

この流れで考えていくと、背景の海はきっと地中海なんだと思います。シャヴァンヌは古典文学や神話から題材を取ってきて作品にしていることが多いので、ギリシャ神話・ローマ神話と言えば、やはり地中海でしょうね。

『愛国』は、時代を越えて、異なる立場の人たちが、何らかの目的のために集っているような絵だと思います。流行り病に打ち勝て!とでも言うような…。

大原美術館:『幻想』シャヴァンヌ

物語の挿絵のような絵だなと思いました。

大原美術館
ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(1824-1898)
『幻想』1866

【鑑賞の小ネタ】
・実は真の壁画装飾家のシャヴァンヌ
・フレスコ画(壁画の技法)の研究をしている
・『幻想』は4点の装飾画のうちの1つ
・画中の女性は蔓(ツル)を天馬に投げている
・白い花は何の花?

ほんとに幻想的な絵だと思います。全体的に青いのが効いてますね。シャヴァンヌは19世紀後半のフランスで、唯一、真の意味での壁画装飾家なんだそうです。1846年のイタリア旅行を機に画家を志し、ロマン主義の巨匠ドラクロワやアカデミスムの画家トマ・クチュールらに師事しました。この『幻想』は油彩画なのですが、イタリア旅行の際にシャヴァンヌはフレスコ画(生乾きの壁面に直接描く壁画の技法)にとても魅せられたそうです。そしてその後の作品に、フレスコ画の影響(色調や表現)が強く見られるようになります。

『幻想』は4点の装飾画のうちの1つで、彫刻家クロード・ヴィニョンの邸宅を飾るために描かれました。他の3点はこちら。

トゥルコワン美術館所蔵

シャヴァンヌは、フランスの美術館やパリ市庁舎、図書館や大学講義堂など、公共の建物の壁画を数多く残しています。パンテオン(パリ)の壁画も手掛けています。

パンテオン(パリ)
「眠るパリの街を見おろす聖ジュヌヴィエーヴ」1898

パンテオンの壁画の一部で、聖ジュヌヴィエーヴ(パリの守護聖人)の生涯を描いたシャヴァンヌ連作の一枚です。1898年に亡くなるまで、壁画に従事していました。この作品は最後の作品のようです。(※壁画ではあるのですが、この作品はフレスコ画ではなく、キャンバスに描かれた油彩画で、完成後に壁に貼り付けられたもののようです。)

  

それでは、『幻想』を観てみたいと思います。『幻想』ということなので、自由に想像してみることにします。

まずは天馬ペガススです。ギリシャ神話では、勇者ペルセウスが怪物メドゥーサを退治して、首を討ち取った時に飛び散った鮮血の中から生まれたとされています。気性の荒い馬で、人間を誰も近づけようとしませんでした。女神アテナが黄金の馬勒(バロク※くつわのこと)をつけてようやくコントロールできるようになったと言います。この馬勒には、手綱説もあり、今回は手綱を採用したいです。というのも、この女性、よく見ると細い蔓(ツル)のようなものを天馬に向って投げているんです。手綱と蔓、イメージが繋がります。

アテナは、知恵、芸術、工芸、戦略を司る女神です。アテナのアトリビュート(絵画や彫刻などで神や人物の役目・資格などを表すシンボル)は、オリーブ、蛇、フクロウ、メドゥーサの首、兜、雄鶏、槍などです。勇ましいアトリビュートが多いですね。『幻想』の女性の周りには、それらしいアテナのアトリビュートはないように思います。あるのは青い衣服(マント)らしき布です。

青いマントと言えば、聖母マリアのアトリビュートです。アテナではなく、聖母マリアなのでしょうか?聖母マリアのアトリビュートには、青いマントの他に棘(トゲ)のないバラの花というのもあって、女性の足元の白い花はバラ科の花に見えなくもないです。花がちょっと小さいですが、野イチゴとかどうでしょう?鋭い棘もありませんし。

出展:みんなの趣味の園芸HP
   ワイルドストロベリー(野イチゴ)

ワイルドストロベリー(野イチゴ)はバラ科で原産地はヨーロッパ、アジアです。イチゴの花は、キリスト教では、聖ヨハネと聖母マリアのエンブレム(人物を表す抽象的、具象的な画像)になっているそうです。花弁が5枚、これもどうも意味があるようで、「」は聖母マリアの五つの徳(知恵、従順、謙虚、清貧、慎重)を表すようです。『幻想』の中にも、花弁が5枚の花が確認できますね。

バラと言えば、美の女神ヴィーナスのアトリビュートでもあります。そしてヴィーナスの側にはキューピット(ローマ神話ではヴィーナスの子どもとされる)がよく描かれます。そうなると『幻想』の中の花を摘む少年は、キューピットでしょうか?少年が摘んでいる白い花は、野イチゴらしき花よりも少し大きいように思います。これは何の花なのでしょう?形が似ているのは原種系のクレマチスだと思うのですが…。

出展:みんなの趣味の園芸HP
   クレマチス・アーマンディー
   (原種・アーマンディー系)

この写真のクレマチス・アーマンディーは中国原産なので『幻想』の花とは違うと思いますが、こんな感じの原種系のクレマチスではないかと思うのです。花弁が5枚というのもいいですね。ちなみに、クレマチスのルーツは南ヨーロッパ、中国、日本なんだそうです。そして少年は花輪を持っていますよね。クレマチスは蔓(ツル)性多年草なので、花輪も作れそうです。クレマチスの西洋の花言葉は「精神の美」「創意工夫」「策略」です。

その他、スイセンに見えなくもないですよね。

出展:みんなの趣味の園芸HP
   スイセン

スイセンだとすると、ナルシス(ナルキッソス)と繋がります。水面に写った自分の美貌に恋をして口付けしようとし、そのまま落ちて水死し、そこにスイセンが咲いたというギリシャ神話(諸説よるようです)でおなじみのあのナルシスです。花を摘んでいる美しい少年が描かれているだけに、スイセンそしてナルシスの線もありかもしれませんね。

色んな角度から考えてみましたが、この絵はやっぱり、色んな要素を混ぜ合わせた作品ではないかと思います。『幻想』ですから、それで良いのだと思います。画中の女性は、アテナであり聖母マリアでありヴィーナスでもある。花を摘む少年は、幼いイエス、またはキューピット、そしてナルシストの語源エピソードで有名なナルシスなのかもしれませんね。

最後に後景の山、これは、ヘリコン山でどうでしょう?ヘリコン山は、芸術の神々が住む山です。アテナが飼い馴らした天馬ペガススは、このヘリコン山に住むムーサ(芸術の神々)に与えられたとされています。また、ナルシスが自分の美貌に恋をした泉もヘリコン山にあったと言われています。(※ヘリコン山は実在の山で、ギリシャ中部にある標高1748メートルの連山です。)

神話の世界に引き込まれそうな、なんとも幻想的な絵だと思います。