阿智神社の参道からの景観

2年前に撮影したものです。

2018年1月撮影 阿智神社の西側の参道1

2018年のお正月です。阿智神社の西側の参道から撮影しました。阿智神社へ向かう途中、ちょっと振り返ったらこの景色だったんです。写真編集をしていないのですがセピア色で、ノスタルジックな気分になりました。新海誠監督の『君の名は。』の世界みたいと言った人がいます。筆者は、宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』かなと思ったり。

出展:倉敷物語館前の立て看板
岡本直樹「倉敷川畔美観地区鳥瞰絵図」の一部 使用

赤色の楕円辺りに立って、赤色の矢印の方向を撮影しました。夕暮れ時です。参道の明りは、年末年始等、祭事の時に灯っているように思うのですが、どうなんでしょうか?灯る明りの数が状況によって違うのかな?何れにしても、筆者が撮影した時は年始でしたのでしっかり灯っていました。

少し西へ降ると、こんな感じです。

2018年1月撮影 阿智神社の西側の参道

これもなかなか良いかなと思うのですが、筆者は参道の段々と樹木のシルエットが絶妙だと思っているので、少しもの足りない感じがします。

参道を降った先は、倉敷えびす通商店街になります。

2018年1月撮影 阿智神社の西側の参道

それにしても、美観地区なので撮影ポイントはいっぱいです。同じ場所でも季節や時間帯によってまた違った景色を見せてくれます。ずっと楽しめて、有難いことだと思っています。

番外編:夜空の小ネタ

何でもないことなんですが、夜空の身近な小ネタです。

1⃣ 私たちはいつも月の同じ側を見ている。
知っている人も多いと思います。「餅をつくウサギ」っていつも見えていますよね。これは、月の自転周期(月が自ら回る周期)と公転周期(月が地球のまわりを回る周期)が同じだからなんです。ちなみに、この月の模様、地域によって見え方が違っています。南ヨーロッパではカニ、南アメリカではワニやロバ、東ヨーロッパや北アメリカでは髪の長い女性など色々でおもしろいですね。

2⃣ 満月が昇ってくる時間はほぼ18時頃
東から大きな満月が昇ってくるのを見たことがあると思います。山際や建物の間から昇ってくる月は、ほんとに大きくてまん丸ですよね。でも、東から三日月や半月が昇ってくるのを見たことはないはず。「満月の月の出は18時」と覚えておくとちょっといいですョ。※時間は季節によって多少前後します。

3⃣ 上弦の月下弦の月は、西の空の状態で判断。
「弦」は弓に張る糸の部分のことですね。月のまっすぐな部分に当たります。弦の位置は月が動くと当然変わります。となると、上弦、下弦って何?!ってことになります。そこで、西の空、沈む頃の月の形に注目です。この時、上側がまっすぐだったら上弦の月、下側がまっすぐだったら下弦の月となります。

4⃣ 北極星も少しは動いている。
理科で必ず習う北極星。どちらが北か、この星を見つけることで分るんでしたよね。地球の自転軸を北極側に延長したところにある星が北極星ということなんですが、現在の北極星はピッタリ延長上にあるというわけではないんです。他の星たちと同じように、小さく日周運動をしています。

5⃣ 天の川の正体は銀河系
七夕でお馴染みの天の川。実は我々の銀河系を見ている形になります。地球は太陽系の惑星ですが、太陽系は銀河系に所属しています。天の川を見るということは、銀河系の中心を見ているということになるんです。周りが明るいとなかなか難しいのですが、天の川は一年中見ることができますョ。

6⃣ 金星の明るさは変化している。
「明けの明星」「宵の明星」「一番星」と呼ばれ、とても身近な存在の金星。いつもより明るく見えるなと思ったことはありませんか?夕暮れ時、飛行機かな?と思うくらい。金星は月と同様、満ち欠けしています。となると、まん丸の時が一番明るく見えているのかなと思いがちですが、まん丸の時は位置的に地球から遠くにいてむしろ暗めなんです。欠けてる時の方が地球の近くにいて、明るく見えているんです。これは金星が内惑星だからなのですが、難しい話はともかく、欠けてる金星は地球の近くにいるのでより明るく輝くということです。

7⃣ 「すばる」はおうし座のプレアデス星団
「すばる」は有名ですね。冬を中心に、秋から春先にかけて見ることができます。肉眼でも5~7個の星の集まりが確認できます。おうし座に中にあって、丁度、雄牛の首辺りで輝いています。和名が「すばる」で、プレアデス星団と言います。特徴的で目立つので、季節が合えば必ず見つかるはずです。ぜひ見てみてほしいものです。実際目にするとちょっと感動しますよ。清少納言も枕草子で、「星はすばる・・・」と紹介していますしね。

シドニーホール(1788-1831)
『ウラニアの鏡 おうし座』1825

番外編:ギリシャ神話と星座

絵画について色々調べていると、題材がギリシャ神話ってことがよくありますよね。筆者は絵画を観るのが好きなのですが、星を観るのも好きなんです。なかでも星座はとても魅力的だと思います。多くの星座はギリシャ神話が元になっていますから、その関係性を理解すると、より一層夜空を楽しむことが出来るのではないかと思っています。

例えば、夏の星座の代表格、さそり座。小学4年の理科で習いますが、アンタレス(赤く輝く恒星)を中心に、比較的明るい星で構成されているので探しやすいと思います。南の空です。

出展:スマホアプリ「星座盤」masahiro chosa
『さそり座』

そして冬の星座の代表格、オリオン座。腰の辺りの3つに並ぶ星が特徴的で、これまた探しやすいです。同じく南の空です。

出展:スマホアプリ「星座盤」masahiro chosa
『オリオン座』

テストにもよく出るこの2つの星座ですが、とても関わりがあることを知ってますか?オリオン(海神ポセイドンの息子)はギリシャ神話に登場する力持ちの狩人です。あまりにも強かったので傲慢になってしまい、その様子に腹を立てた女神ヘラがさそりを送りました。オリオンはさそりの毒針に刺されて死んでしまいます。死後天に昇ったオリオンは、さそりに遭遇しないように、夜空を廻っていると伝えられています。(※オリオンの死因については諸説あるようですが最も有名なのがこの説)夏の星座さそり座冬の星座オリオン座は、決して出会うことはないのです。どちらかが春の星座や秋の星座だとちょっと中途半端。夏と冬に大きな意味があるように思います。同じ空では見えません。

ヨハン・バイエル(1572-1625)
『orion(Uranometoria)』1661

この神話を知っていたら、テストで迷うこともなくなるかもしれませんョ。

また、ヘルクレス座と蟹座のギリシャ神話もおもしろいです。
ヘルクレス座のモデル、勇者ヘラクレスは、ギリシャ神話の中で最も有名な英雄かもしれませんね。ヘラクレスは12の冒険に行くのですが、その一つにヒュドラ退治があります。ヘラクレスとヒュドラの戦いを化け蟹のカルキノスが見ていました。次第にヒュドラの形勢が不利になってきたので、ヒュドラの友人であった化け蟹(カルキノス)はヘラクレスの足を挟みました。ところが、逆にヘラクレスに踏みつぶされてしまうのです。哀れに思った女神ヘラは、勇敢な化け蟹(カルキノス)を天に上げたという神話 (※諸説あり)です。
ヘルクルス座も蟹座も、明るい恒星がなく、残念ながらあまり目立たない星座なのですが、蟹座にはプレセぺ星団があります。月のない晴れた夜には裸眼でもぼんやり見えます。丁度、蟹の甲羅辺りにある星団なので、ヘラクレスが踏んだ痕ということでしょうか? ロマンですね。

プラド美術館
フランシスコ・デ・スルバラン(1598-1664)
『ヒュドラと戦うヘラクレス』1634

黄色の楕円の中に化け蟹がいます。なんだかザリガニみたいに描かれていますね。頑張ってヒュドラに加勢しています。

米国議会図書館
シドニーホール(1788-1831)
『ウラニアの鏡  蟹座』1825

黄道12星座(星占いで使われる星座)には、オリオンやヘラクレスが入っていません。足元で頑張ったさそりがランクインしています。筆者的にはかなりツボです。

大原美術館:『ラ・フェルテ=ミロンの風景』コロー

美しい田園風景ですね。

大原美術館
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー(1796-1875)
『ラ・フェルテ=ミロンの風景』1855-1865

【鑑賞の小ネタ】
・コローはバルビゾン派の中心人物の1人
・風景画を多く描いている
・60歳過ぎてからの傑作多数
・中央の建物に注目

パステル画のような色合いの油彩画だなと思いました。ミレーと同じく、バルビゾン派の画家の1人とされています。中央の角ばった大きめの建物、何だと思いますか?中世のお城かなと思ったのですが、お城にしてはどうも中途半端な造りなんです。遠近法的には、かなり遠くに見えていますよね。そうだとすると、結構大きな建物ということになります。やはり、お城でしょうか…?

お城でした。

出展:Wikipedia
Chateau La Ferte-Milon (シャトーラフェルテミロン)

未完成の城の廃墟なんだそうです。中途半端な造りはそのためでした。このお城、歴史は古いそうです。9世紀には存在していたようですよ。11世紀初頭、城の礼拝堂は大学になっていたという記述がありました。1394年、オルレアン公ルイドルレアン(ルイ・ド・ヴァロワ)は、既存の建造物を破壊して再開発を行っています。ところが、1407年にオルレアン公が暗殺されて、9年後に城の建設は止まってしまいます。そして、1594年にアンリ4世により解体されたということです。

出展:WIKIMEDIA COMMONS
Chateau La Ferte-Milon (シャトーラフェルテミロン)

お城の内側の写真ですが、なんかすごいですね。よく現在まで残ったと思います。コローの時代でもしっかり廃墟感は出ていたと思いますが、そんなことは関係なく、ずっとこの辺りのランドマークであり続けているのだと思います。
大砲がありますよね。第一次世界大戦前のロシア製の大砲らしいです。「M1909 152㎜榴弾砲」というフランスのシュナイダー社設計(ロシア帝国が発注)の大砲が存在するようなのですが、何か関係があるのでしょうか?

出展:WIKIMEDIA COMMONS
シャトーラフェルテミロン
19世紀頃の古いポストカード

お城の左側に、お城ほどではありませんが、背の高い長方形の建物が見えます。上部が平らではなくいくつか突起があって特徴的です。この建物は何でしょうか?

出展:Wikipedia
Eglise Notre Dame(ノートルダム教会)

この教会だと思います。地図を見るとお城の近くにありました! カトリックの教会です。建物の上部の形状もコローの絵とよく似てますよね。先のとがった尖塔で飾られています。余談ですが、「ノートルダム」とは、フランス語で「我らの貴婦人」という意味で、聖母マリアのことを意味します。聖母マリアを信仰の対象としているということなので、カトリック系の教会というわけです。

 

絵の一番手前に、大きく農民の女性が描かれています。右奥には、農作業をする農夫と牛がいますね。「農民画家」ミレーと同じく、コローも風景の中に農民(一般の人々)をよく描き込んでいます。
コローが凄いのは、60歳過ぎてから多くの傑作作品を残しているところだと思います。大器晩成型だったわけです。恵まれた環境に育ったコローは、生涯金銭面で不自由することはありませんでした。友人や後輩を援助したり、パリの貧しい人々に寄付をしたりもしています。人柄も穏やかだったようですョ。じっくり画業に取り組めた人生だったことがうかがえます。作風に表れてますよね。特に大原美術館のこの作品は、ガツガツしてなくて、ほのぼのとした印象を受けます。
次の作品も、コローの特徴がよく表れていると思います。同じ頃に描かれています。

ボルトン美術館
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー
『ボーヴェ近郊の朝』1855-1865

ちなみに、コローの弟子にカミーユ・ピサロがいます。

グラスゴー美術館
カミーユ・ピサロ(1830-1903)
『曳船道(マヌル河の岸辺、荷を運ぶ小道)』1864

コローの影響を受けているのがよく分かる作品だと思います。ピサロはその後、印象派の中心的存在になっていきます。コローとピサロに限らず、画家同士の関わりを調べると、作風にその影響が見られて、なかなか興味深いですョ。

大原美術館:『グレヴィルの断崖』ミレー

緑の断崖、空、海、美しい絵ですね。

大原美術館
ジャン=フランソワ・ミレー(1814-1875)
『グレヴィルの断崖』1871

【鑑賞の小ネタ】
・なんとパステル画
・ミレーの愛称は「農民画家」
・バビルゾン派の中心人物
・画中の人の大きさに注目

油彩画だと思って見ていたので、パステル画と分かってびっくりしました。筆者にとってパステル画はもう少しざっくり描くイメージなのですが、細かくきっちり描けるものなんですね。画材にも注目して絵を見てみると、また見方が違ってきておもしろいと思います。『グレヴィルの断崖』という作品は、他にもいくつかあります。

オルブライト=ノックス美術館
ジャン=フランソワ・ミレー
『グレヴィルの断崖』1871 -1872
山梨県立美術館
ジャン=フランソワ・ミレー
『 グレヴィルの断崖 』1870

『グレヴィルの断崖』ではないのですが、『グレヴィルの海岸』という作品もあります。 オルブライト=ノックス美術館 の 『グレヴィルの断崖』 とよく似ています。描いた場所は同じではないかと思います。

国立美術館(ストックホルム)
ジャン=フランソワ・ミレー
『グレヴィルの海岸』

その他、福井県立美術館所蔵の『グレヴィルの海岸の岩壁』1871年という鉛筆と木炭で描かれた風景素描作品もありました。

ミレーはグレヴィル村に生まれました。フランスのノルマンデイー地域圏の村で、マンシュ県のコミューン(地方自治体の最小単位)のラ・アギュに吸収されて、現在はグレヴィル=アギュとなっています。コタンタン半島の突端にある村です。

出展:WIKIMEDIA COMMONS 「Greville-Hague」

ミレーは1830年から1870年にかけてフランスで発生した絵画の一派のバルビゾン派(フランスのバルビゾン村やその周辺に画家が滞在や居住をし、自然主義的な風景画や農民画を写実的に描く)の中心的存在でした。ミレーもバルビゾンで暮らしてきたわけですが、この時期に代表作『種をまく人』や『落穂拾い』を描いています。一般庶民や農民を描くことは、当時としては驚くべきことだったようです。昔から芸術の主題と言えば、神話や聖書の世界、または偉人たちでしたから。

ボストン美術館
ジャン=フランソワ・ミレー
『種をまく人』1850
オルセー美術館
ジャン=フランソワ・ミレー
『落穂拾い』1857

グレヴィルをテーマとした作品は、ミレーが晩年、生まれ故郷へ里帰りした時に描かれたもののようです。聖堂も描かれていました。きっとミレーも通ったんでしょうね。

オルセー美術館
ジャン=フランソワ・ミレー
『グレヴィルの聖堂』1871

ところで、『グレヴィルの断崖』の手前に描かれている青っぽい岩、とても印象的で、丁寧に描かれているように思います。きっとこの地域で特徴的な岩なんだと思い、写真画像を調べてみました。やはりそうでした。断崖付近の草原の中に点在していました。地質学的には、この辺りは古生代末期のアルモリカ造山運動の影響を受けていて、主に先カンブリア時代の結晶片岩、片麻岩、花崗岩、閃長岩質の岩石からなっているようです。また、近くの村ジョブ―ルではフランス最古の岩が収穫されているとありました。この青っぽい岩と同じ岩かどうかは分かりませんが。

最後に、横たわる人についてです。一見、特に問題なく見えるのですが、かなり大きく描かれていると思います。遠近感が分からなくなるだまし絵みたいですね。何か杖(棒)のようなものを持っています。そして青っぽい服。となると、よく絵画に描かれる羊飼いなのかもしれません。横たわる人の左斜め奥の灰色のモクモクしたもの、何に見えるでしょうか?筆者には雨雲に見えます。これから雷が落ちてきそうな積乱雲です。そして、この雲と横たわる人は、なんとなくとってつけた印象で、ここだけ別世界のような感じがしませんか?もしかしたら、神話の世界を描き込んだのかもしれません。写実的な「農民画家」として有名なミレーですが、過去には、神話をテーマとした作品も描いています。

カナダ国立美術館
ジャン=フランソワ・ミレー
『樹から降ろされるエディプス』1847

ギリシャ神話の一場面を描いたものです。赤子の時に捨てられてエディプス(オイディプス)が羊飼いの夫婦によって発見されるところを描いたもので、サロンで初めて成功した作品のようです。

羊飼い、描かれていましたね。
ギリシャ神話に登場する羊飼いで最も有名なのは、パリスかもしれません。トロイア戦争の発端とされる「パリスの審判」で有名なあのパリスです。一番美しい女神は誰かということで3人の女神が争います。そしてこのややこしい審判を、主神ゼウスが羊飼いの美しいパリスに任せるというギリシャ神話です。主神ゼウスというと、宇宙や天候を支配する天空神なので、雲や雷には馴染みがあります。横たわる人がパリスで、雨雲がゼウスだったらおもしろいですね。

[おまけ]
横たわる人、仰向けか横向きか、どう見えますか?