美観地区にかつてあった茶屋山(城山)

倉敷アイビースクエアの北東辺りに、かつて小さな山があったのを知ってますか?古地図で確認してみると、確かにありました。

出展: 倉地克直『絵図で歩く倉敷のまち』
   窪屋群倉敷村屋敷割絵図(1710年) の一部

この地図では「茶屋山」と書かれていました。「城山」とも呼ばれたといいます。小高い丘のような山だったのでしょうか?以前から気になっていて、今でもその名残がないか、倉敷アイビースクエアの北東部周辺を散策してみました。

アイビースクエアの石垣と薄い水色の歩道橋

北東に行くほど石垣のサイズが大きくなり、段も縦に一段増えていて、緩やかに傾斜しているのが分かります。これは「茶屋山」の名残と考えていいのではないかと思います。薄い水色の歩道橋も架かっていますね。この歩道橋を渡って、倉敷市民会館方面へ行くことができます。

薄い水色の歩道橋 倉敷アイビースクエア側

歩道橋の欄干に注目してください。この形、どこかで見たような…。

薄い水色の歩道橋の欄干

「龍」をかたどっているのだと思います。ヒゲまでちゃんとあります。過去記事でも紹介しました「前神橋」の欄干に似てますよね。龍は縁起物で、しかも大原孫三郎の干支でもあるので、美観地区内の橋には、龍のデザインが施さたものをよく見かけるのですが、ここにもありました。倉敷アイビースクエアの奥まったところにある歩道橋なので、ちょっと分かりにくいかもしれませんが、興味のある方はぜひ行ってみてください。なかなかかっこいい龍ですョ。

ちなみに、「茶屋山」の名前の由来は、大名茶人であった小堀遠州の茶屋があったからといわれています。

美観地区の夜の写真①

2020年5月撮影 大原美術館

大原美術館は8月中旬まで休館となりました。館内の絵に思いを馳せながら開館を待ちたいと思います。  夜のライトアップは変わらす美しいですョ。

2020年5月撮影 白壁と常夜燈

美観地区内の倉敷川は、そもそも運河だったこともあって、川の流れがほとんどありません。そのため、水面に白壁や樹木が見事に映り込みます。美観地区の夜を撮影する時の1つのポイントだと思います。水面に映る景色は、よく絵画にも描かれますよね。まさに絵になるのです。

 

2020年5月撮影 大きめの路地

  

過去に撮影したお気に入りの写真をいくつか紹介します。

2018年9月撮影 日本郷土玩具館

まるで影絵のような世界観でした。倉敷川を挟んで対面(向こう岸)から撮影しました。中央のオレンジに光る窓は、「日本郷土玩具館」のディスプレイ空間です。この時のディスプレイは、ガラス作家の方が手掛けたものだったと聞いています。とても芸術性の高いもので感動しました。 ※この写真の筆者なりの撮影のポイントは、柳のシルエットと行き交う人の影です!

2018年3月撮影 美観地区の樹木と街路灯

下から見上げると、「モチモチの木」のようでした。小学校国語で習いますよね。「モチモチの木」の正体はトチの木です。この木は多分、センダンの木だったと思います。また調べておきます。街路灯はガス灯ではありませんが、世界的な照明デザイナー石井幹子プロデュースの街路灯(過去記事「レトロな街路灯」で紹介)で、形状等とても雰囲気があります。また、写真中央の奥に小さく見える木のシルエットも気に入っています。

2018年3月撮影 人力車

一本奥に入った路地を撮影していたら、後ろから静かにスッと人力車が通り過ぎました。人力車は美観地区内を軽やかに走っています。路地、白壁、なまこ壁、街路灯、人力車。ザ・美観地区といったところでしょうか。夕暮れと相まって、お気に入りの一枚となりました。

番外編:夕焼け(夕日)

筆者は夕焼けを見るのが昔から好きです。

2014年10月撮影  帯状巻雲

一直線にのびる雲が印象的でした。多分、帯状巻雲だと思います。

 

2014年12月撮影 夕日

瀬戸内海です。絵に描いたような夕日でした。

 

2014年12月撮影 積雲
2014年12月撮影 日没後

瀬戸内海です。日没後、雲がスーッとなくなりました。

  

2019年1月撮影 漁船と樹木のシルエット

瀬戸内海です。行き交う漁船と手前の樹木のシルエットがポイントです。

  

2019年9月撮影 漁船出港

瀬戸内海沿いの漁港です。漁船が出港しています。美しい景色の中に日常の生活があるこの感じが好きです。

何年も前に、海の近くに住んでいたことがあるのですが、その時、赤紫色の夕焼けをよく見に行っていました。その時の写真は残念ながらないのですが、こんな感じの色でした。

2018年6月撮影 赤紫色に編集加工

ちょっと怖くなるような色だったことを記憶しています。調べたところによると、時期的に、フィリピンのルソン島西側にあるピナツボ火山の影響だったと思われます。ピナツボ山は、1991年に20世紀最大規模の大噴火を起こしています。噴き出した細かい粒子が地球全体を覆い、大気(空気)がエアロゾル(気体中に浮遊する液体または個体の粒子と周囲の気体の混合体)状態となって、その結果、いつもと違う夕焼けの色を見せていたというわけです。

小学生の頃、犬の散歩時間を夕焼けの時間に合わせていたことを思い出しました。夕焼け観賞歴は結構長いです。

2020年 美観地区の早春

全国に緊急事態宣言が出される少し前の美観地区の春です。

2020年3月撮影 旧大原家住宅付近1
2020年3月撮影  旧大原家住宅付近
2020年3月撮影   旧大原家住宅付近3 

桜とモミジの新芽がこの時期とても美しいです。そして、後景の旧大原家住宅の石垣と塀、倉敷川も絶妙です。モミジの種類は大きく3つに分けられます。イロハモミジヤマモミジオオモミジです。イロハモミジは太平洋側の暖かい地域が発祥で、ヤマモミジは日本海側に多く生息していて、オオモミジは太平洋側の標高の高い所に自生しているそうです。そうなると、このモミジはイロハモミジ系でしょうか? 秋の紅葉は赤色で、ほんとに美しいのですが、新芽のこの時期も負けず劣らすほんとに綺麗だと思います。桜とのコラボが目を引きますョ。

そして春を告げる花の1つタンポポ。

2020年4月撮影 倉敷川沿いのタンポポ

ちょっと見えにくいですが、タンポポが咲いています。人通りがほとんどなく、信じられないような静けさの中、タンポポはいつも通り咲いていました。なんだかちょっとホッとしました。

日本のタンポポは、在来種と外来種が混在している状態です。見分け方は、花を包んでいる緑色の部分が、反り返っているかいないかです。緑の部分がクルっとなっていたら、外来種のセイヨウタンポポとなります。在来種のタンポポのうち、西日本のほとんどで見られるタンポポはカンサイタンポポなんだそうです。そして早春に地面にはりついたように咲くそうなので、この美観地区のタンポポは在来種のカンサイタンポポなのかもしれません。次の機会に緑色の部分を確かめてみたいと思います。

大原美術館:『秋の海』クールベ

波の表現がすごいですね。

大原美術館
ギュスターヴ・クールベ(1819-1877)
『秋の海』1867

【鑑賞の小ネタ】
・遠くにヨット
・これから天気はどうなる?
・ノルマンディの海岸
・クールベは現実を描く画家
・波の白い部分をパレットナイフで描く

波が荒いです。嵐の前なのか後なのか。どう見えるでしょうか?遠くにヨットが描かれています。かなり沖に出ているようですが、高波で戻れないのでしょうか?何れにしても風に左右される帆船なので、この天候だと操縦が難しそうですよね。

クールベはノルマンディの海岸をテーマとした作品を数多く残しています。国立西洋美術館の『波』と構図的にはよく似ています。

国立西洋美術館
『波』1870

次の2作品は岸に船が描かれています。漁船だと思いますが、よく見ると種類も色々です。

オルセー美術館
『嵐の海』1870
フィラデルフィア美術館
『Vague(波)』1869

どの作品も嵐の雲のようですが、共通して晴れ間(明るい部分)が覗いています。ところで、ノルマンディの海岸と言えば、「エトルタの断崖」が有名です。多くの画家たちがモティーフとして取り上げた場所です。もちろん、クールベも描いています。

ベルリン国立博物館
『エトルタの岩』1869
オルセー美術館
『エトルタの崖、嵐のあと』1870

大原美術館の作品は、空と海(波)、そしてその場の空気を重視して描いてるように思います。嵐が来るのか去ったのか、どの作品もとても臨場感のある仕上がりとなっています。

まだまだ伝統的な歴史画や風俗画が良しとされていた時代に、クールベは現実をありのままに捉えて表現(写実主義)しようとしました。なかかな受け入れてはもらえなかったようですが、サロン(官展)にもどんどん発表していきました。そんなクールベは、近代絵画の重要な革新者のひとりなんだそうです。後の印象派に大きく影響を及ぼすこととなります。

「嵐」の絵が多いのも、すこし分かったような気がします。クールベが今後の展開を予感していたかどうかは分かりませんが、これから印象派という大きな波が、確実に押し寄せて来るのですから。