番外編:水槽の経過報告①

川魚のカワムツとオイカワに追い掛け回されていたヤマトヌマエビは、まだ無事に過ごしています。ふわふわと漂って危ない時もありますが、基本的には水草の中など、安全な場所に潜んでいます。そして今一番お気に入りの隠れ場所、これがとても素晴らしいです。

流木と水草とエビとコリドラス

どこにいるか分かりますか? ここです!

流木の隙間に上手に隠れているんです。川魚たちは気づいているのかいないのか、ちょっとよく分かりませんが、特につつくこともなく素通りしています。

川魚たちの縄張り争いの軽減を目的に、コリドラスを投入しましたが、うまくいっているようです。コリドラスたちも問題なく馴染んでくれているようなので、もう2匹コリドラスを増やしました。実は筆者、昔からコリドラスが大好きなんです。新しく仲間入りしたコリドラスがこちら。

コリドラス・パンダ
コリドラス・ステルバイ

どちらも比較的安価で、よく市場に出回っているコリドラスです。特にパンダは人気が高いと思いますョ。ステルバイは体が丸々としていて、他のコリドラスと比べて成長が早いように思います。よく食べて、よく動いて、存在感のあるコリドラスです。

コリドラスは水草の下でじっとしていることが多いです。

そしてコリドラスは仲間で群れるのも好きなんです。なんだかカピバラに似てると思いませんか? 周りをあまり気にせず、じっとしていて、なんとなく群れる。水槽の中のカピバラです(^◇^) ヒゲもとてもかわいいですね。

水草も一株増えました。 ウォーターマッシュルーム です。

ウォーターマッシュルーム

屋外の鉢で育てられているのをよく見かけます。水中でも大丈夫なんですよ。どんどん伸びて水面まで到達し、後は這うように増殖していきます。この水草もとても丈夫は種なので、問題なく馴染んでくれると思います。葉っぱが丸くてかわいいですね。

川魚と大暴れしていた黄色のアルジイーターは、コリドラスとは仲良くやっているようです。アルジイーターがコリドラスに近寄って行くことが多いのですが、コリドラスはあまり気にしてない様子です。目の前にアルジイーターが来ても、コリドラスは底砂の上をモグモグし続けます。

アルジイーターと赤コリ

アルジイーターはドジョウの仲間、コリドラスはナマズの仲間、ドジョウとナマズだと思って見てみると、またおもしろいですョ。

大原美術館:『自画像』ムンク

白黒写真のような版画ですね。

大原美術館
エドヴァルト・ムンク(1863-1944)
『自画像』1895
石版(リトグラフ)

【鑑賞の小ネタ】
・1895年は不吉な作品が多い
・手がスケルトン
・ムンク32歳にしては疲れた印象
・まるで遺影のような自画像

1895年あたりのムンクの作品は、とにかく危うい感じのものが多いです。生と死、愛とは何か?というような、かなり重いテーマを常に考えていたのではないでしょうか。

家族内では、1895年に、父親と同じく医者になっていた弟が肺炎で亡くなり、妹が精神病で入院を続けていたりと、なかなか大変な時期だったようです。弟の死は、かなりショックだったのではないでしょうか。

ムンクの写真

写真と見比べてみても、かなり忠実に描かれていることが分かります。版画の方が疲れた印象ではありますが。1895年に描かれた別の自画像がこちら。

オスロ美術館
エドヴァルト・ムンク
『煙草を持つ自画像』1895

なんかすごい雰囲気ですよね。色んな思いを感じ取れるような作品だと思います。白黒の『自画像』について、NHK放送の「日曜美術館」で、まるで墓標のようだと語られていました。版画の上部に、ムンクの名前と1895の文字が刻まれています。作品にサインと制作年を書き込むこと自体は普通なのですが、本作品のような書き込み方はあまり見られないように思います。腕も骸骨ですし。墓標のようだと言われれば、そんな感じもしますね。

有名なムンクの作品『叫び』にしても、ムンクにとっては「生きる」ということ自体がとても大変だったのではないかと思います。

大原美術館:『マドンナ』ムンク

いろいろ意味深な作品ですよね。

大原美術館
エドヴァルト・ムンク(1863-1944)
『マドンナ』1895-1902
石版(リトグラフ)

【鑑賞の小ネタ】
・これはマドンナなのか?
・マドンナの周りに注目
・同じ構図の作品が複数あり
・ムンクはノルウェーの世紀末画家

マドンナとは、そもそも聖母マリアのことで、憧れの対象となる女性のことも意味していますよね。それにしても聖母マリアをこんな感じに表現することはあまりないように思います。憧れの対象となる女性だとしても、なんかちょっとすごいですよね。ムンクは同じような構図の作品を複数制作しているので、相当な思い入れがあったことは確かです。

ムンク美術館
『マドンナ』1893-1894
オスロ 国立美術館
『マドンナ』1894-1895
ハンブルグ美術館
『マドンナ』1895

大原美術館の「マドンナ」は版画(リトグラフ)ですので、色違いの作品もあります。

ムンク美術館
『マドンナ』1895-1902
国立美術館
『マドンナ』

版画の作品の左下に小さな人がいますが、これは胎児を表しているそうです。そして円い頭を持った紐状のものは、精虫(精子)らしいです。なんとも謎めいています。そして、版画版では分かりにくいのですが、マドンナは妊娠しているようです。

このマドンナ、 ムンクの友人ダグニー・ユール ではないかといわれています。ユールは、1895年9月28日に第一子を出産していますので、妊娠の時期的にもぴったりです。きっとダグニー・ユールで間違いないのでしょうね。

出展:Wikipedia ダグニー・ユール

当時ムンクは、「黒豚亭」という居酒屋で芸術家たちと交流を深めていました。そこのマドンナ的存在だったのがダグニー・ユールなんです。ムンクの理想の女性像だったようです。ユールはムンクの友人と結婚するのですが、結婚の条件が「性の自由」だったとか。後に恋人の1人だった青年に拳銃で撃たれて亡くなりますが、34歳の誕生日の3日前だったそうです。ユールの死は、ムンクに相当なダメージを与えることとなります。

ところで、胎児と精虫にはどんな意味があるのでしょうか?マドンナの表現にしても、何か女性に対してコンプレックスがあるように思います。ムンクの父親は医者で、比較的裕福な家庭に育ったようなのですが、ムンクが5歳の時に最愛の母を亡くしています。そして14歳の時に母代わりだった姉も結核で亡くしているようです。愛する女性たちの相次ぐ死は、その後のムンクの人生に大きく影響しそうですよね。ムンク自身も病弱だったようですから、生と死を常に意識する生活だったことでしょう。胎児は、ムンク自身なのでしょうか?そしてそれは生の象徴なのか死の象徴なのか? そうではなく、全く違う感情の表れというのもありですね。色んな解釈が出てきそうで興味深いです。

ちなみにムンクは、街ゆく人が振り返るほどの美青年だったそうですョ。

若い頃のムンク

大原美術館:『荒地の老馬』コッテ

痩せてはいますが、骨格はしっかりしているように思います。

大原美術館
シャルル・コッテ(1863-1925)
『荒地の老馬』1898

【鑑賞の小ネタ】
・ブルターニュ地方の海岸沿いの荒地
・この馬はどんな馬?
・なぜ老馬がモチーフに?
・この頃の作品は全体的に暗い色調

コッテがフランスのブルターニュ地方を訪れた時に描いた絵のようです。ブルターニュ地方は大西洋に面した半島です。後景に海が見えますね。石垣と柵が描かれているので、野生馬ではなく飼われている馬だと思います。ブルターニュ地方原産の中量級の輓(ばん)用馬 、「ブルトン」馬でしょうか? 輓用馬 とは、車を引っ張る馬のことです。ブルトン馬の特徴は、頸が短く、胴が太くてたくましく、距毛(足元の毛)が少ないということのようです。この絵の老馬を見てみると、痩せてはいますが胴回りが大きいですよね。そして、顔が大きく感じるほど、頸が短いと思います。筆者の第一印象は、ロバ?でしたから。

出展:Wikipedia ブルトンウマ

海岸付近の荒地で、石垣と柵で区切られている様子が描かれている絵が他にもありました。

シャルル・コッテ
『茅舎(ぼうしゃ)』

コッテの絵の紹介は、これで3作品目です。『セゴヴィアの夕景』、『聖ジャンの祭火』、そして本作品『荒地の老馬』です。どの作品もかなり暗い色調ですよね。

コルドバ美術館
シャルル・コッテ
『Las veredas enBretana』1890-1900

コッテは、「バンド・ノワール(黒の一団)」と呼ばれる画家グループの一員だったようです。 ギュスターヴ・クールベ(1819-1877) の写実主義のスタイルを継承している画家たちのグループで、 エミール=ルネ・メナール(1862-1930) もその一員です。

クールベ美術館
ギュスターヴ・クールベ(1819-1877)
『シヨン城』1874
国立西洋美術館
エミール=ルネ・メナール(1862-1930)
『秋の森』

クールベの絵は、『秋の海』という作品が 大原美術館にもありましたね。

ところで、ブルターニュ地方は中世の間、ブルターニュ公国というほぼ独立国家でした。ケルト系民族のブルトン人(ブルターニュ人、ブレイス人ともいう)が暮らしていたようです。ブルターニュがフランス国家に組み込まれたのは、フランス革命後の1789年なんだそうです。ブルトン語も話されていましたが、フランス政府によって格下の言語の扱いを受けました。ブルトン語の保護を求める動きが出たのは近年になってです。2008年、地域言語を「フランスの文化遺産」とする憲法改正案がフランス国民会議で通過しています。

現代のブルトン・ナショナリズムは、19世紀後半から20世紀初めにかけて発展しています。コッテが活動した時期とあてはまります。素朴な自然、信仰と結びついた祝祭、伝統が残る自給自足の生活などが評判を得たようです。ますますこの絵の馬が「ブルトン」馬に見えてきました。ブルターニュ地方原産のしっかり働いてきた老馬に対して、敬意をもって描いたのかもしてませんね。絵のモチーフとしては普通駿馬を描きそうなところですが、痩せた老馬を選ぶあたりにコッテの様々な想いを感じるところです。

番外編:ナマズの仲間コリドラス

水槽の中に、カワムツとオイカワが1匹ずついて、縄張り争いばかりするので、どうしたものかと色々調べていたら、魚の数を増やしてみるというのがありました。1対1だと魚も煮詰まるということでしょうか? なんだか考えさせられます。

川魚を増やすつもりはなかったので、熱帯魚で、底の方で生活する(カワムツやオイカワが泳いでいる中間域を外す) 魚だったらうまくいくのではないかと考えました。そこでナマズの仲間コリドラスの登場です。

コリドラス・ジュリー
コリドラス・パレアトゥス(青コリ)
コリドラス・アエネウス(赤コリ)

比較的どのコリドラスも安価で、初心者向けです。筆者も飼育経験済みです。この3種の中では、ジュリーが一番繊細で、赤コリが一番よくエサを食べて丈夫だと思います。コリドラスは環境の変化に敏感という一面を持っているものの、他の魚たちには無関心なのではないかと筆者は思っています。

水槽にコリドラスが加わって、しばらく様子を見ていると、早々にカワムツとオイカワが近寄って行ってつついてました。どうなるかと思いましたが、コリドラスたちは特に慌てることなく、粛々と底砂の上に落ちているエサを探してチョコチョコ動き回っていました。今のところ大丈夫そうです。

カワムツとオイカワの縄張り争いの様子は、若干ですが、落ち着いたように思います。1匹に集中していたものが程よく分散されたということでしょうか?これまた奥深いです。

今後も水槽の魚たちの様子、経過報告したいと思います。