大原美術館:睡蓮の池のメダカ

大原美術館の中庭には四角い池があります。モネの睡蓮の記事でも紹介しましたが、池には鉢に植えられた睡蓮が沈められていて、毎年きれいな花を咲かしています。睡蓮を見ていると、たくさんのメダカが泳いでいることに気づきます。春先から夏にかけてどんどん増えていく印象です。

日本のメダカは、ミナミメダカとキタノメダカの2種類に分けられるそうです。2種の見た目の大きな違いはあまりないのですが、キタノメダカは本州の日本海側、東北・北陸地方に生息するようなので、この池のメダカは、ミナミメダカでいいと思います。そして、ミナミメダカとキタノメダカの2種類を総称して、二ホンメダカと呼んだり、黒メダカと呼んだりしています。

出展:Wikipedia
ミナミメダカ 上オス 下メス
二ホンメダカ 略図

【メダカのオスとメスの違い】
背びれ(黄だ円)→オスは切れ込がある。
尻びれ(赤だ円)→オスの方が大きく、
        ほぼ平行四辺形。
尾びれ(青だ円)→メスは若干直線的。

  

池のたくさんのメダカを見ていると、明らかに色の違うメダカが泳いでいることに気づくと思います。

出展:Wikipedia  ヒメダカ

ヒメダカです。野生の黒メダカが突然変異した品種です。筆者が見た時は、結構泳いでいたように思うので、黒メダカからの出現確率はまあまあ高いのかもしれません。

ところで、日本のメダカは、環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類とされています。水田や用水路で普通に泳いでいるように思うのですが…。 知っている人も多いと思いますが、メダカのように見える小さな魚は、大抵、カダヤシという特定外来生物なんです。1916年に、蚊の幼虫ボウフラ駆除のために、台湾島経由で導入されたそうです。 蚊絶やし (カダヤシ)です。

出展:Wikipedia
カダヤシ 上オス 下メス
カダヤシ 略図

【カダヤシのオスとメスの違い】
・背びれ(黄だ円)→ほとんど違いなし。
・尻びれ(赤だ円)→オスは交尾器に変形。
         メスは幅が狭い。
・尾びれ(青だ円)→どとらも丸い

カダヤシはカダヤシ目に分類され、メダカとは全く別の種です。そしてカダヤシ目の仲間にはグッピーがいます。よく見るとグッピーに似ていますね。

メダカとカダヤシは、尻びれと尾びれに注目することで、見分けることができます。メダカの尻びれの幅は広くカダヤシの尾びれは丸いのです! 筆者が見た時の大原美術館の池の小さな魚は、尻びれの幅がしっかりあって、尾びれが丸くなかったので、メダカで大丈夫だと思います。

倉敷アイビースクエアの睡蓮の池の錦鯉ほどの華やかさはありませんが、睡蓮の側をチョロチョロ泳ぐメダカもなかなか可愛いですよ。

大原美術館:『睡蓮』モネ

モネの『睡蓮』シリーズ、大原美術館にもあります。

大原美術館
クロード・モネ(1840-1926)
『睡蓮』1906年頃

【鑑賞の小ネタ】
・モネの自宅ジヴェルニーの庭の睡蓮
・大原美術館には株分けされた睡蓮あり
・「睡蓮」がテーマの作品は複数あり
・モネは親日家
・水面の映りこみに注目
・『印象・日の出』は印象派の名前の由来

モネは「睡蓮」をテーマとした作品を数多く残しています。大原美術館のこの『睡蓮』は、児島虎次郎(画家であり、大原美術館の美術作品の収集活動をした人物)がモネの住むジヴェルニーを直接訪れて譲ってもらった作品のようです。モネが作品を譲るにあたり、候補の作品がいくつかあったようなのですが、児島虎次郎はモネが15年もの間、手元に大切においていたこの作品を選んだそうです。(参考資料:大原美術館HPより)

制作時期が同じ頃で、構図が似ている作品がありました。こちらです。

シカゴ美術館
『睡蓮』1906
アサヒビール大山埼山荘美術館
『睡蓮』1907

構図はよく似ているのですが、筆使いが随分違いますね。大原美術館の『睡蓮』は、全体的にふわっとした柔らかさを感じます。霧か靄(もや)がかかったようにも見えます。ジヴェルニーの庭の池は、かなり大きいので、その時実際そうだったのかもしれませんね。

出展:Wikipedia  
ジヴェルニーの「水の庭」。中央に「日本の橋」。

ほんとに大きな池です。ちょっと分かりにくいのですが、中央に日本の太鼓橋が見えます。立派な枝垂れ柳も植えられていますね。『睡蓮』の絵の水面に注目してください。柳が映り込んでいるのが分かるでしょうか?空や雲も。モネは水面も大事に描いたようですョ。

フィラデルフィア美術館
『ジヴェルニーの日本の橋と睡蓮の池』1899

モネは葛飾北斎や歌川広重を愛好していて、浮世絵から発想を得ていたのではないかと考えられているそうです。 モネは親日家でした。  こうしてみると、日本の浮世絵に影響を受けたという印象派の画家は結構多いですね。

ボストン美術館
『ラ・ジャポネーズ』1876
第2回印象派展出品

ところで、印象派の「印象」という名前は、モネの代表作『印象・日の出』が由来です。モネは仲間たちと、サロンとは独立した展覧会(第1回印象派展)を1874年に開催していて、その時にモネが出展した作品が『印象・日の出』でした。この作品の社会からの評価は酷いものだったようです。元々、揶揄する意味で使われた「印象」という言葉ですが、印象派の画家たちによって、逆に使われるようになっていきます。

マルモッタン・モネ美術館
『印象・日の出』1872

晩年の同じような構図の『睡蓮』です。筆使いがさらに違ってきているのが分かります。

国立西洋美術館
『睡蓮』1916

モネは晩年、白内障を患いました。1908年頃に目の異常を感じ始めて、1912年の夏頃、白内障と診断されています。この『睡蓮』は1916年なので、白内障の影響が何かあったかもしれません。ちなみに、モネの最晩年の作品は抽象画っぽいです。

個人所蔵
『日本の橋』1920-1922

橋は判別できますね。なんとなく柳も。きっと睡蓮も描かれているんだと思います。モネの中にある「印象」をぶつけた抽象画って感じだなと思いました。

大原美術館の中庭には池があり、毎年、黄色やピンク色の睡蓮が見事に咲きます。2000年にジヴェルニーの庭の池から株分けされた睡蓮です。「モネの睡蓮」の実物というわけです。現在の睡蓮の様子を撮影して投稿したいところですが、大原美術館は長期休館中なので、またの機会にします。

美観地区の犬矢来(いぬやらい)

美観地区を歩いていると、路地と建物の外壁の境界あたりに、趣のある工作物を見かけます。

「吉井旅館」の犬矢来

昔ながらの町家でよく見られる「犬矢来(いぬやらい)」というものです。犬?と思ったので、由来を調べてみました。

細長い通路や平地部分を、建築用語で「犬走り」と言います。建物の軒下の空間は、「犬走り」に相当します。確かに散歩中に犬がよく通りそうな空間ですよね。そして犬は、大抵、壁にオシッコをひっかけます。外壁がオシッコで汚れるのを防ぐために作られたのが「犬矢来」ということだったようです。

「矢来」とは竹や丸太で作った仮の囲いのことです。また「やらい」という言葉には「遣(や)らい」という漢字もあって、これは「追い払うこと」という意味になります。何れにしても犬のオシッコ除けですね。

犬のオシッコ除けから始まったであろう「犬矢来」は、その他の実用性も高かったようです。道路から泥がはねて外壁が汚れるのを防いだり、道路との境界線や泥棒除けの役目も果たしていたそうですョ。劣化したらその部分だけ取り替えたら良いわけですから、とても効率的ですね。

「犬矢来」に注目して美観地区を歩いていると、違うタイプのものが目に入りました。 場所的には、「犬矢来」の設置場所と同じだと思うのですが、形状がかなり異なっています。

「犬走り」の空間を、柵でしっかり囲んでいますね。
これは、「駒寄せ(こまよせ)」と言うそうです。馬に乗って来た客が、手綱をくくり付けたものの名残りと言われますが、人馬の侵入を防ぐために設けられたという説もあるようです。そうなると、犬除けじゃなくて、馬除けですね。

「犬矢来」と「駒寄せ」、 現在の基本的な役割は、ほぼ同じとみて良いと思います。通りの景観的にもなかなか良いですよね。

    

【追伸】
前出の「犬矢来」が見事な「吉井旅館」、坂本龍馬が立ち寄ったという話があるようですよ。
2022年1月現在の吉井旅館の犬矢来はこちら👇

木製でなく、竹製のものになっています。
竹製のものを木製の犬矢来の上に被せたんでしょうか?

近くに寄って見てみました。
本物の竹で丁寧に作られた犬矢来でした(^-^)

番外編:生き残っていたスーパーのシジミ

2020年4月下旬に、スーパーの宍道湖産のシジミを、自宅の川魚水槽に7匹投入していました。残念ながら、数日でほとんどのシジミの殻が開いてしまいました。 過去記事で紹介した通りです。

昨日、水槽の底砂を掃除しようと少し掘っていたら、なんと、シジミが出てきたのです!全滅したと思っていたスーパーのシジミが、1匹しぶとく生き残っていました!妙に感動しました。

スーパーの宍道湖のシジミ

一回り大きくなっていました。元気そうです。しばらく見ていたら、中身の白いものが出てきました。貝の「足」です。

シジミの足

どうやって砂の中に潜るのかなと思って見続けていたら、結構な勢いで縦に体勢を変えました。

体勢を変えたシジミ

ここからは早かったです。少し休んではグッ、グッ、と潜って行きました。

砂に潜るシジミ

15分くらいで潜りは完了したと思います。
シジミ、アサリのような二枚貝は、水質浄化作用があります。汚れた水を吸ってきれいな水を吐いてくれるわけですが、今回、それも観察することができました。

シジミの出水管と入水管

底砂の掃除中だったので、この時水が全体的に濁っていたんです。そのため、吸った水が浄化しきれなくて、濁ったまましばらく吐き出されていました。まるで茶色の煙のようでした。おかげで、どちらが出水管なのか、はっきり分かりました。決定的瞬間を撮影しようと頑張りましたが、撮れませんでした。

シジミの水管と赤コリ

好奇心旺盛なコリドラスたちが寄って来ていましたが、水管だけ出した状態で、シジミはじっとしていました。

翌日、底砂から水管が出ているか観てみましたが、よく分かりませんでした。さらに潜ったのでしょうか?必要な時に、底砂の表面ギリギリまで出て来るのでしょうか?なんだか夏休み自由研究のようになってきましたが、今後も生き残ったシジミが潜ったあたりを、ジロジロ観察して行きたいと思います。

【追伸】
思い出したんですが、7匹投入した時に、速攻で潜ったシジミが1匹いたんです。もしかしたら、生き残ったシジミはそのシジミかもしれません。状況の変化を素早く察知し、安全な場所に身を隠し、じわじわと環境に適応していく。なんか凄いですね。

倉敷アイビースクエアの睡蓮

倉敷アイビースクエアの敷地内には池があります。そこには睡蓮が植えられています。錦鯉も泳いでいて、とても風情があります。 そしてこの睡蓮、ただの睡蓮ではありません。モネの睡蓮です!

倉敷アイビースクエアの説明書き

印象派の巨匠クロード・モネは、フランスの小さな町ジヴェルニーに家をもっていて、そこに見事な庭園を造りました。庭園には睡蓮の池があるのですが、 大原美術館は そこの睡蓮を株分けしてもらいました。そして、その株分けされた大原美術館の睡蓮を、さらに倉敷アイビースクエアが株分けしてもらったということです。

大原美術館
クロード・モネ(1840-1926)
『睡蓮』1906

大原美術館の池の睡蓮の現在の様子も紹介したかったのですが、長期休館中なので見ることができませんでした。記憶によると、倉敷アイビースクエアの睡蓮と同じく、黄色とピンク色の花が咲いていたと思います。白色もあったかもしれません。

2020年7月1日撮影 倉敷アイビースクエアの池
2020年7月1日撮影 
倉敷アイビースクエア の黄色の睡蓮
2020年7月1日撮影 
倉敷アイビースクエア のピンク色の睡蓮
2020年7月1日撮影 
倉敷アイビースクエア の睡蓮と錦鯉と真鯉

以前はカメ(アカミミガメ)がたくさんいたように思うのですが、この時はいませんでした。池の上に張られた糸は、鳥よけでしょうか?均等にきっちり張られていました。間隔が結構あるので、大きめの鳥用? ターゲットは美観地区によく飛んで来るアオサギかカラスかもしれませんね。

睡蓮は、大きく分けて、温帯スイレンと熱帯スイレンに分けられるそうです。熱帯スイレンは、色もエキゾチックで、花茎を水面より上に伸ばして花を咲かせる特徴があるようなので、 今回紹介した大原美術館や倉敷アイビースクエアの睡蓮は、温帯スイレンだと思います。

出展:Wikipedia 熱帯スイレン

それにしても、温帯スイレンと錦鯉、よく合いますネ。