菌糸ビン。聞いたことがあるでしょうか?
クワガタ飼育業界ではお馴染みです。菌?細菌⁈大丈夫なのか⁈と、初めて目にした時はそう思ったものです。もちろん、大丈夫です。菌糸ビンの菌には、普段からよく食べている「キノコ」の菌が使われています。安心してください。キノコの菌は、木の成分の1つである「リグニン」を分解して、幼虫が食べやすい状態にしてくれます。つまり菌糸ビンは、効率の良い幼虫のエサが入ったビンというわけです。
リグニンは、セルロースなどと結合して存在する高分子化合物です。細胞壁に堆積して木質化を起こし、植物を強固にするそうです。クワガタの幼虫たちは、リグニンがあると消化できないらしく、リグニンを分解してくれるキノコの菌は大事なんですね。確かに、クワガタの幼虫たちは、広葉樹の朽ち木をよくエサにしています。それは、木が朽ちて、キノコの菌が木にまわり、その結果リグニンが分解され、幼虫の消化できるエサ状態になっているからなんですね。
ところで、この菌糸ビン、そもそもオオクワガタ飼育のために開発されたものと言ってよいと思います。クワガタ飼育と言えば、今も昔も日本産オオクワガタが一番人気です。大きく育てるために、色々と試行錯誤した結果、菌糸ビンが登場したようです。オオクワ飼育のための菌糸ビンとなると、菌糸ビン不向きのクワガタも当然出てきます。なんでもかんでも菌糸ビンというわけにはいかないんです。ちなみにクワガタではありませんが、カブトムシの菌糸ビン飼育は不向きです。
では、コクワガタはどうなんでしょう? オオクワガタはドルクス属です。ヒラタクワガタも。そして、筆者が飼育中のコクワガタもドルクス属なんです。体は小さいですがドルクスです。菌糸ビンにも対応できるクワガタということになりますが、過去の飼育経験上、オオクワガタほどの効果が期待できる感じではありません。現在幼虫たちは、クヌギマットの中にいますが、菌糸ビンだけでなく、新しい朽ち木にも引っ越しさせようと思っています。
さて、お母さんコクワが、またプチ脱走しました。続けて2回も。これは居心地が悪いのかと思い、中に置いていた朽ち木を取り除いて環境を変えることにしました。朽ち木にまた卵を産んでいたらいけないので、念のため割ることにしました。
樹皮は簡単に剥がれました。あれ?産卵痕が有るような無いような…。今回もいい感じに朽ちています。割ってみます。
なんといました‼ 見えるでしょうか?写真中央です。また産卵していたんですね!前回の産み残しかもしれません。これはもしかしたらまだいるかもと思って、慎重に割って行きました。
結局、2匹、いました。お母さんコクワは、数は少ないですが、再度産卵していたということです。卵は無かったと思います。まあまあのサイズだったので、クヌギマットの幼虫たちよりお先に、菌糸ビンに入れてみることにしました。菌糸ビンの表面にちょっと穴を開けて、そこに幼虫をそっと置きます。
下側の幼虫はどんどん潜って行きましたが、上側の幼虫はなかなか潜りませんでした。朽ち木から取り出した時から、あまり元気がなかったので、この幼虫はダメかもしれませんね。
そして今回、細長い幼虫も朽ち木から出てきました。なんだこれは…です。コメツキムシの幼虫?よく分かりませんが、クワガタの幼虫ではないことは確かです。筆者は、クワガタの幼虫は大丈夫なのですが(手の上に乗せることもできます)、こういう幼虫はだめです。何がどう違うのかと言われそうですが、大違いなんです。見つけた時は、一瞬、思考停止状態になります。まあでも、朽ち木を割っていたら、よくあることではあるんですが、慣れる気がしません。この謎の幼虫には去ってもらいました。
コクワの幼虫たちが、上手く菌糸ビンに馴染んでくれることを願っています。クヌギマットの方の幼虫たちの引っ越しは、また近々報告します。