倉敷国際ホテル近くのガス灯

過去記事(美観地区:レトロな街路灯)で、倉敷アイビースクエア西門前のガス灯を紹介しました。今回紹介するのは、美観地区最寄りのホテル、倉敷国際ホテル近くのガス灯です。美観地区界隈のガス灯は、倉敷アイビースクエアと倉敷国際ホテルのこれら2つのみとなります。

倉敷国際ホテル近くのガス灯 昼間
倉敷国際ホテル近くのガス灯  夕暮れ時
倉敷国際ホテル近くのガス灯  夜間

写真左端上に見切れている建物は、倉敷国際ホテルの一部になります。
このガス灯は、倉敷駅から南北に通る道路からもバッチリ見えます。向かって左側の方が明るめですね。そういえば、倉敷アイビースクエアのガス灯も、どちらかが明るかったような…。

次のガス灯のアップは、倉敷アイビースクエアの方です。デザインはほぼ同じだと思います。

倉敷アイビースクエア西門前のガス灯

バックが白い雲なので分りやすいと思いますが、ガス灯のガラス部分が水色になっています。きれいですね。そして、中をよく見てみると、網状の布のようなものが見えます。これはマントル(ガスマントル)というもののようです。マントルは電球で例えると、フィラメントの役割をするものです。マントル自体は合成繊維から出来ていて、金属硝酸塩が染み込ませてあります。

ガス灯の光の色は、オレンジ色かなと思っていたのですが、レモン色だという記述がありました。確かに、もっとオレンジ色の照明、他にもありますよね。何れにしても、筆者はガス灯の光が好きです。特に、秋から冬にかけてのガス灯はいいですョ。

美観地区:白い彼岸花と白い萩

彼岸花の季節ですね。美観地区南端の一角に、白い彼岸花が毎年咲きます。
今年の白い彼岸花がこちら。

2020年10月5日撮影 シロバナマンジュシャゲ

初めて見つけた時、テンションが上がったのを覚えています。2014年の秋でした。6年前になりますが、ちゃんと撮影してました!こちらです。

2014年9月20日撮影 シロバナマンジュシャゲ

次の写真は現在の様子です。
中央に白い彼岸花、奥に美観地区が見えます。

2020年10月5日撮影 美観地区の南端

彼岸花は別名、曼珠沙華(マンジュシャゲ)ですね。その他にも、天蓋花(テンガイバナ)や狐花(キツネバナ)など、多くの別名をもっている花です。特徴は、花が咲いてから葉が伸びることで、多年草の球根植物です。リコリンなどの有毒なアルカロイド(天然由来の有機化合物の総称)が含まれる有毒植物で、特に球根部分に多いといわれています。毒は全体にあると考えた方がいいのですが、口に入らなければまず問題ないようなので、彼岸花を触った後はしっかり手を洗うことが重要です。

この白い彼岸花の生息位置は、過去記事(美観地区の『前神橋』)で紹介しました美観地区の南端に架かる橋、前神橋のたもと近くです。

2020年10月5日撮影 シロバナマンジュシャゲと前神橋

黄色の楕円の中に白い彼岸花が咲いています。オレンジの線の中に前神橋の欄干(龍の形)が一部見えます。

美観地区内の倉敷川沿いにも咲いていました。

2020年10月5日撮影 倉敷川沿いのシロバナマンジュシャゲ
2020年10月5日撮影 倉敷川沿いのシロバナマンジュシャゲ

白い彼岸花は、赤色の彼岸花と黄色の鍾馗水仙の自然交雑種といわれています。九州などの暖かい地域に自生するようで、その他の地域で見られる場合は、人工的に植えられたものが多いそうです。今回紹介した白い彼岸花は、かなりまとまって群生しているので、きっと人工的に植えられたものだと思います。
ところで、なぜ白い彼岸花だったのでしょう?ここからは筆者の想像ですが、花言葉ではないかと思います。白い彼岸花の花言葉は、「また会う日を楽しみに」「思うはあなた一人」です。白い彼岸花が珍しいということもちろんあると思いますが、「美観地区にまた来てね!」みたいな意図があったのではないでしょうか?どうなんでしょうね(^-^)

    

白色の萩も咲いていました。

2020年10月5日撮影 シラハギ
2020年10月5日撮影 シラハギ

萩といえば、ピンクや紅紫色の花を咲かせるイメージで、筆者的には 白色の花は 珍しいと思ったのですが、植物通の方によれば、よく見かけるとのことです。※今回は白萩に注目しましたが、ピンクの萩もちゃんと咲いていましたョ。

白い彼岸花、白い萩、そして白壁。美観地区の秋ですね。

大原美術館:『キュビスム的コンポジション―男』ジャコメッティ

ピカソの描く絵が立体になったような作品だなと思いました。

大原美術館
アルベルト・ジャコメッティ(1901-1966)
『キュビスム的コンポジション―男』1926
石膏に着色

【鑑賞の小ネタ】
・ジャコメッティ初期の彫刻
・同じ形の作品がいくつかあり
・アフリカやオセアニアの影響あり
・キュビスム、シュルレアリスムの影響あり

抽象絵画などの作品名でよく見かける「コンポジション」。「構造、組立」を意味する言葉ですが、絵画や写真などでは「構図」とされるようです。キュビスムは、複数の視点から眺めたものの形を平面上に合成して表現しようとした芸術運動ですね。ピカソブラックが有名です。

ジョルジュ・ブラック(1882-1963)
『ギターを弾く女性』1913

『キュビスム的コンポジション―男』と ほぼ同じ形の作品がいくつかあるようです。

大原美術館の作品は、石膏に着色です。着色が有る無しで、随分見え方が違うものですね。

過去記事(大原美術館:『ヴェニスの女Ⅰ』ジャコメッティ)で紹介しましたが、後にあの細い作品になって行くとは思えない感じのどっしりとした 『キュビスム的コンポジション―男』 シリーズです。1920年代の作品は、キュビスムの影響の強い作品が多く見られます。

『コンポジション(男と女)』 1927

次の作品は、アフリカのダン族が儀式に用いるスプーンに想を経て、制作されたようです。

『女=スプーン』1926-1927
ブロンズ
ダン族のスプーン

ちなみに、ダン族 (コートジボワールの北西部に住む) の仮面は、ヨーロッパで人気の高い仮面なんだそうですョ。

ジャコメッティは1922年にパリへ転居していて、ロダンの弟子のアントワーヌ・ブールデルに学んでいます。この頃、ピカソやミロと交流していて、シュルレアリスム(超現実主義)の影響を受けたようです。シュルレアリスム運動が理想としていたのは、「夢と現実の矛盾した状態の肯定」でした。教科書でよく見かけるシュルレアリスムの画家と言えば、サルバドール・ダリ、ジョルジョ・デ・キリコ、ジョアン・ミロ、パブロ・ピカソなどですが、その作品はどれも不思議なものが多いように思います。静けさの中にちょっと不安になるような何かを感じます。かなり内面に向かうこのシュルレアリスム運動、ジャコメッティも色んなことを考えたのでしょうね。後の極端に細い彫刻に見られる「空虚」の世界観が出来上がるのも分かる気がします。

      

ジャコメッティは、スイスの100フラン紙幣のデザインになっています。

スイスの100フラン紙幣

裏面の彫刻は「歩く男」です。細い男性が歩いていますね。こんなに細いのに、なぜか力強く前へ進んでいるように見えるのが不思議です。

【追伸】
大原美術館には、ロダン、その弟子のブールデル、その教え子のジャコメッテイの彫刻が展示されています。併せて鑑賞すると良いかもしれませんね。

番外編:2020年の「中秋の名月」

2020年10月1日、昨夜が中秋の名月でした。

2020年10月1日22時撮影 中秋の名月

1回目の撮影1時間後はこちら。

2020年10月1日23時撮影 中秋の名月

過去記事(番外編:ストロベリームーン)の時と同じく、一眼レフカメラで撮影しています。カメラ購入時の付属の望遠レンズで撮影したものです。オートではなくマニュアルモードで頑張っています。天体撮影用の望遠レンズではないのですが、まあまあ撮れるものですね。手振れしないように息を止めてパチリです。

「中秋の名月」と言えば、きれいな満月というイメージだと思うのですが、今回の満月は次の日、10月2日となっています。しかも、中秋の名月の日は、その年によって前後します。

中秋の名月は陰暦(旧暦)の8月15日に当たります。陰暦は月の満ち欠けを基にした暦です。月は、新月(何もない状態)から約15日かけて満月となり、約15日かけて欠けて行き新月に戻ります。陰暦的には、1カ月が約29.5日になり、1年は約354日となります。

現行の太陽暦(地球が太陽の周りを回る周期を基に作られた暦)の1年は365日なので、陰暦と太陽暦でだんだん季節がずれてしまいます。このずれは、「閏月(うるうづき)」を入れて修正します。約3年に1度、13カ月の年が現れるようです。このような陰暦と太陽暦とのずれが、中秋の名月の日のずれに繋がっています。

ちなみに陰暦では、春(1月 2月 3月)、夏(4月 5月 6月)、秋(7月 8月 9月)、冬(10月 11月 12月)となります。中秋とは、秋のど真ん中の8月ということになりますね。

陰暦で 8月15日というのは、秋のど真ん中「中秋」で、しかもその年の8回目の満月の日ということだったんですね。( ※陰暦は月の満ち欠けを基に作った暦なので、15日というと、多少の前後はあるものの、ほぼ満月となります。)

ところで「中秋の名月」だけなぜ「お月見」のならわしがあるのでしょうか?諸説あるようです。だんだん空気も冷たくなり、空も高く感じられ、月もきれいに見えるからという説や、作物の収穫祭と結びついているという説等です。

何れにしても、過ごしやすい気持ちの良い季節なので、ゆっくり空を見上げるのもいいかもしれませんね。

     

  

【追伸】次の日の満月です。十六夜です。

2020年10月2日23時撮影 

左斜め上あたりが、若干膨れたような…。まん丸ですね(^-^)

大原美術館:『ヴェニスの女Ⅰ』ジャコメッティ

「Ⅰ」ということは、他にも何体かあるのでしょうか?

大原美術館
アルベルト・ジャコメッティ(1901-1966)
『ヴェニスの女Ⅰ』1956 鋳造1958

【鑑賞の小ネタ】
・とにかく細い作品
・「ヴェニスの女」シリーズの1点
・顔の表情に注目

2階から1階へ階段を下りてすぐのところに展示されています。 階段はまっすぐなので、『ヴェニスの女Ⅰ』を眺めながら下りることができます。結果として眺める位置がどんどん変わることになるので、なかなか興味深いです。

2017年に国立新美術館開館10周年ジャコメッティ展が開かれました。

出展:美術手帖
『ヴェネツィアの女Ⅰ-Ⅸ』1956

その時、「ヴェネツィア(ヴェニス)の女」9体が一堂に展示されました。中心に立っている彫刻が『ヴェニスの女Ⅰ』だと思います。この時「Ⅰ」はセンターに展示されていたんですね!

1956年、ジャコメッティはフランス代表として ヴェネツィア・ビエンナーレ(現代美術の国際美術展覧会) に参加しています。その時に制作したのが10点の女性立像から成る「ヴェネツィアの女」シリーズだったそうです。10点も制作されていたようですね。 1から10の番号は、制作順ではなく、ジャコメッティ自身が決めたものだそうです。そしてこのシリーズのモデルとなった女性は、妻のアネットと言われています。

ジャコメッティ財団所蔵
『黒いアネット』1962
油彩画

大原美術館には、紙に鉛筆で描かれた『立てる裸像』(1955年)という作品も所蔵されています。次の作品は、大原美術館所蔵作品ではないのですが、参考までに紹介します。

『スタンディングヌード』1955 
紙に鉛筆

筆者は実物を見たことがあるのですが、この作品より、もう少し鉛筆の線が目立つデッサンだったと思います。共通するのは、手足の長いモデル体型のかなり細い裸婦が描かれているということです。制作年は1955年で、『ヴェニスの女Ⅰ』の制昨年の前年です。彫刻制作にあたり、色々とイメージを膨らませていたのでしょうか?

ジャコメッティの作品は、とにかく細い作品が多いです。

マルグリット&エメ・マーグ財団美術館
『犬』1951

痩せ細っていますが、ちゃんと犬と分かりますね。むしろより犬らしく見えるような気がします。ちょっと不思議です。

ところで、ジャコメッティの作品はなぜこんなに細いのでしょうか? ジャコメッティ的には、見たままを表現しようとしていて、余計なものをそぎ落としたらこうなったということのようです。余計なものとは何でしょう?これは難解です。
実存主義哲学者のジャン・ポール・サルトルが、早い時期に論文を書いています。筆者にとっては難しい論文なのですが、きっとキーワードは「空虚」なんだと思います。その他、様々な学者や研究者がジャコメッティについて言及していて、「空虚」と似た表現として、「空間」「虚無」「距離」「禅の空」というものがありました。まだまだあるのかもしれませんが、とにかく、一言でいえば「空」絡みの世界観なんだと思います。

結局、よく分かってない筆者なのですが、「余計なもの」とか「空虚」とは何かを意識しながらまた鑑賞してみたいと思います。いつか何か分かるかもしれません(^-^)

【おまけ】
『ヴェニスの女Ⅰ』の顔に注目してみてください。特に口元。横顔に表情の違いが見られるかもしれませんョ。