大原美術館:『カット・アウト』ポロック

人のような形の切り抜きがありますね。

大原美術館
ジャクソン・ポロック(1912-1956)
『カット・アウト』1948-1958
油彩・エナメル塗料・アルミニウム塗料その他、
厚紙・ファイバーボード

【鑑賞の小ネタ】
・人型の切り抜きがある
・ポロックの死後、作品が完成
・切り抜きのある作品が他にもあり
・ポロックはアクション ペインティング 
 の代表的画家

切り抜かれた部分は、何に見えるでしょうか?人型と書いてしまいましたが、人ではなく違うものに見えるようだったら、それで良いと思います。抽象絵画は、特に、自由に解釈して問題なしの世界だと思いますから。

切り抜きのある作品は他にも何点かあるようです。

『Untitled (Cut-Out Figure)』1948
『リズミカル ダンス』

『Untitled (Cut-Out Figure)』1948 の切り抜きは、大原美術館の『カット・アウト』の切り抜きの形とほぼ同じだと思います。これは何か基になるデッサンか絵があるのかなと思って探してみたら、ありました。

『Figure』1948

輪郭をたどると、ほぼ切り抜きの形になるのではないでしょうか? 制作年も1948年なので、時期的にも大丈夫そうです。
そして、作品名のFigureの意味ですが、基本的には「形・図形」です。Figureにはその他にもたくさんの意味があって、その中には、人物や人形の意味もありますよね。この作品名の意味は、人物か人形で良いのではないかと思っています。

そうして見ると、『リズミカル ダンス』の切り抜きは、人が踊っているように見えますね。筆者には2人踊っているように見えます。もしかしたら、大原美術館の『カット・アウト』の切り抜きも踊っているのかもしれませんョ。

ところで、大原美術館の『カット・アウト』の制作年に注目してみてください。1948年から1958年になっていますね。ポロックが自動車事故で不慮の死を遂げたのは1956年ですので、死後に完成された作品ということになります。これは、同じく画家だった妻のリー・クラスナーが完成させたようです。切り抜きの背後をふさぐものを、ポロックの別の作品から選んできてはり付けたそうです。夫婦で完成させた作品だったんですね。

  

最後に、話題を呼んだ作品を紹介します。こちらです。

個人蔵
『Number 17A』1948
ファイバーボードカンヴァスに油彩

『Number 17A』は、 2016年、美術コレクターのケネス・グリフィンによって、2億ドル(約224億円)で購入された作品です。驚異的な値段の取引だったので当時話題になりました。 抽象絵画、色んな意味で凄いですね。

大原美術館:『ブルー―白鯨』ポロック

作品名から想像すると、海の絵でしょうか?空にも見えますね。

大原美術館
ジャクソン・ポロック(1912-1956)
『ブルー―白鯨』1943年頃
グワッシュ・インク、ファイバーボード

【鑑賞の小ネタ】
・小説「白鯨」がテーマ
・ポロックは抽象表現主義の代表的画家
・不透明水彩絵具で描かれている
・ミロの影響あり

ジャクソン・ポロックというと、次のような絵をイメージする人が多いのではないでしょうか?

シアトル美術館
『海のような変化』1947

『海のような変化』はドリッピング(絵の具を垂らして描く)という技法で描かれています。ポロックは1947年頃から本格的にドリッピング作品の制作を開始しているようです。ただ、1943年頃からドリッピングやポーリング(絵の具を流し込んで描く)を試み始めているので、『ブルー-白鯨』1943は、ドリッピングの手法に本格的に移る前の興味深い作品ということになりますね。

『ブルー-白鯨』 は、アメリカの小説家ハーマン・メルヴィル「白鯨」がテーマとなっているそうです。そして小説「白鯨」は、ポロックの愛読書だったようで、小説に出てくる捕鯨船ピークォド号の船長ハイエブの名を、飼い犬につけていたそうですョ。

『ブルー-白鯨』 は、全体的にかなり抽象化されているものの、よく見ると、なんとなく形が分かるものが数多く描かれているように思います。白鯨、波(大波)、海の生物(怪物?)など。どの部分がどのように見えるかは、例によって人によって違うと思います。オレンジ色と黄色が印象的ですが、黄色の部分は、月が海面に映っているように筆者には見えます。そして、最も気になったのは、絵の中央に格子模様の線があって、その線の中にや■や✖が描かれていることです。何か意味があるのでしょうか?結構きっちり描かれているので、余計気になります。 捕鯨船の乗組員が、休憩中に楽しんだ ボードゲームだったりするとおもしろいですよね。

1943年頃の作品をいくつか紹介します。

フィラデルフィア美術館
『男女』1943
サンフランシスコ近代美術館
『秘密の守護者たち』1943

比較的、形が保たれているように思います。

ポロックは、1938年頃~1942年頃、精神科に通院しています。アルコール依存症の治療としてユング派の精神分析、そして絵画療法を受けています。深層心理に潜む無意識の芸術について、既に注目していたかもしれませんね。

「精神分析用ドローイング」と呼ばれているもの

また、ドリッピング作品へ向かう前のポロックは、ピカソやミロの影響を多分に受けています。 『ブルー-白鯨』は、特にジョアン・ミロ(1893-1993)の影響が強いように思います。大原美術館にはミロの作品も所蔵されていますので、ぜひ見比べてみてほしいものです。

岡山県北のコスモス畑

昔からよく行っている北房(ほくぼう)のコスモス畑へ久しぶりに行ってみました。高速道路岡山道を北上し、北房JCTから中国道へ入り、広島方面へ向かいます。間もなく北房ICが見えてきますのでそこで下ります。倉敷からだと1時間もかかりません。

北房ICを下りて右方向に目をやると、川沿いのコスモスやコスモス広場がすぐに確認できるので、道に迷うことはほぼないと思います。

2020年10月21日撮影  北房 コスモス広場

前日2020年10月20日の地方ニュースで、本日満開と放送されました。そして、今年の色はとても良いとも。筆者は濃い色が好きです。

コスモスは秋桜と書きますね。秋の花と言えばコスモスを思い浮かべる方も多いと思いますが、次の写真の下の方を見てみてください。

小さく黄色い花が。

秋と春の共演ですね。
このタンポポは、在来種でしょうか?ちょっと近寄って見てみました。

過去記事(2020年 美観地区の早春続報:タンポポと樹木のシルエット)で書きましたが、 花を包んでいる緑色の部分が反り返っているかいないかで判断するということでした。 このタンポポは、緑の部分がクルっとなっているので外来種のセイヨウタンポポでいいと思います。

タンポポに話がそれました。コスモスに戻します。
コスモス広場のコスモスは、どのコスモスもスッと上に伸び、ダラ~と横に倒れていません。筆者は特に疑問を感じなかったのですが、一緒に行ったガーデニング通の方々にとっては、これはどうも不思議なことのようです。そういえば、一般の庭で見かけるコスモスは、巨大化して周辺の別の植物に覆いかぶさっていたり、だらしなく横に倒れていたりしていますよね。収拾がつかなくなり、荷紐で縛られているのを見たこともあります。
では、コスモス広場のコスモスはなぜ倒れないのでしょうか?コスモスの背が高くなると、どうしても倒れがちになるということで、剪定(摘心?)をして背を低く保つという方法もあるようですが、コスモス広場のコスモスはどれも背が高いです。

背が高いのに倒れない、これは考察しなくてはなりません。まず思いついたのが、そもそも倒れない強い品種のコスモスではないか?ということです。ガーデニング通の方々にちょっと話をチラつかせてみましたが、全く相手にされずスルーでした。花は大きいが普通のコスモスのようです。次に、これは筆者の頭の中で考えていたことなんですが、群生しているからではないか?ということです。一般の庭では、ここまでの群生はまず無理だと思います。群生することで、お互いが風除けになり、そして距離が近い分なんとなくお互いを支え合っているというわけです。

色々調べた結果、倒れるのを防ぐには、種をまく時期、水分量、コスモスの種類、矮化剤(植物成長抑制剤)などによってある程度コントローる出来るということが分かりました。そして最も興味深い記述に、「コスモスは肥沃な土地では倒れる。痩せた土地、多少乾いているような所だと締まった姿になる。」というものがありました。これだ!と思いました。北房コスモス広場のコスモスはまさにこの状態に当てはまります。締まった姿とは、スッと上に伸びた姿ということではないでしょうか?ちなみにコスモスには肥料はあまり要らないそうです。

痩せた土で、何本か群生させて、風通しの良い場所で、ちょっと乾き気味にして、肥料をほとんどやらずに栽培してみてほしいものです。特に土は、プランター等のために用意する場合、ガーデニング用の良い土を使用しがちになると思うので要注意です。

コスモスは、過保護に育てるとなよなよしてしまい、独り立ちできなくなるということだなと思いました。そして、仲間が大勢いると、より力強くスッと立っていられる。なんか奥深いです。絵画鑑賞と同じく、色々自由に想像するとおもしろいですね。

※今年2021年10月の「岡山県北のコスモス畑」についてはこちらです👉お出かけ:北房コスモス広場(2021年10月下旬)

番外編:スジエビとヌマチチブ

30㎝川魚水槽のカワムツ、なかなか立派になってきました。熱帯魚用の乾燥したエサを与えています。特に嫌がることもなく、バクバク食べて順調に大きくなっています。

2020年10月撮影 カワムツ

この度、スジエビヌマチチブ が加わりました。

2020年10月撮影 カワムツとスジエビ

スジエビは2㎝~3㎝ぐらいなので、カワムツの大きさが大体分かると思います。

2020年10月撮影 ヌマチチブ

スジエビもヌマチチブも、倉敷川(美観地区内の倉敷川管理区域外)からすくってきました。スジエビは、結構、攻撃的です。カワムツを怖がるのかと思いきや、オラオラと言わんばかりにカワムツへ向かって行きます。今まであまり意識して観察したことがなかったのですが、ヤマトヌマエビ (アクアリウムで混泳可能のエビとして定番) とは大違いだということがよく分かりました。
というのも、スジエビはテナガエビ科なんです。テナガエビは、ザリガニともやり合えるかなり強いエビ (大型のものは20㎝にもなる) です。ヤマトヌマエビはヌマエビ科で、おとなしくとても穏やかなエビです。科が異なるとこうも違うものなんですね。生き物について考える時、それが何科なのか調べることは、やはり大事だなと改めて思いました。
スジエビ的には、体は小さくても(成長してもせいぜい3㎝くらいまで)、気持ちはテナガエビ、なんでしょうね。オラオラとカワムツに近寄って行くのも分かる気がします。

そしてヌマチチブ、見たことがあるでしょうか?普通にいる魚ですが、ジロジロ観察しないと見逃す魚かもしてませんね。よく見ると、なかなか興味深い魚なんですョ。後ろ側の背ビレ(第二背ビレ)の黄色と水色が混ざったような色に注目です。結構カラフル!日本の川魚は地味な色が多いように思いますが、美しい色をもつ魚が案外いるんです。例えば、婚姻色が現れたオイカワのオス、ヤリタナゴ(在来種)、カワムツなどです。

ところで、ヌマチチブとよく似た魚にチチブがいます。最初、このすくってきた魚はチチブだと思っていたのですが、じっくり観察した結果、ヌマチチブではないかと今では思っています。ちなみにどちらもハゼ科の魚です。

チチブには、前側の背ビレ(第一背ビレ)、黄色の矢印のあたりに硬いヒゲのようなものが幼魚のことからあるようです。この魚の体長は現在2.5㎝くらいで、まだ幼魚なんですが、その硬いヒゲのようなものがありませんね。ちなみに、チチブもヌマチチブも10㎝くらいにはなります。ヌマチチブに硬いヒゲのようなものが現れるのは成熟期のみのようです。
また、胸ビレ (赤色の矢印)に、 黄土色の帯が見えますが、その中にオレンジ色の筋がヌマチチブにはあるということです。残念ながらこの判別はかなり難しいようです。
ちなみに、ヌマチチブとチチブは過去には同一種とされていたそうですョ。

ヌマチチブがエサを食べています。予想通り、底砂をゴソゴソしていますが、なんと、水中を浮遊するエサにも飛びついたりするんです。意外でした。そして流れがあるところも好きみたいです。

泡が見えますが、これは濾過フィルターから水が落ちているからです。水槽内で最も水の流れがある場所です。黄色の楕円の中にヌマチチブがいますね。鯉の滝登りのようです(^-^) カワムツも寄ってきています。

見た目のイメージと違うものって結構あるものですね。

番外編:水槽の経過報告④

水槽の経過報告、久しぶりです。この期間、大変革がありました。底砂をかなり減らしたんです。アクアリスト的には、あまりやりたくないことです。迷いに迷って、踏み切った形です。やりたくない理由は、水質が激変するからです。作業中に底砂の粒子が舞い上がり、当然水が濁ります。その中には、魚たちによくない物質も含まれて、我々の感覚で言えば、空気中に有害なものをばらまかれるという感じなってしまいます。

なぜ、底砂を減らそうと考えたかというと、コリドラス (ナマズの仲間) のヒゲ問題なんです。コリドラスにはヒゲがあります。筆者はこのヒゲが、コリドラス最大のチャームポイントだと思っています。その大事なヒゲが、どうも、短くなる傾向にあって、原因は底砂の厚さではないかと判断したからです。赤コリや黒コリのヒゲは問題ないのですが、コリドラスステルバイやコリドラスジュリーのヒゲは明らかに短くなりました。

コリドラス飼育者の中には、底砂を敷かないというタイプの方が結構いることは知っていました。もしかしたら、コリドラス的にはそれが良いのかもしれませんが、筆者の水槽には、水草もあるので、底砂(ソイル)はある程度敷いていたいんです。ただ、底砂にも濾過バクテリアは存在しますので、要は、バランスなんだと思います。

底砂撤去作業中、サブ水槽(30㎝水槽)に魚たちを移そうかとも思いましたが、そちらには大きく成長した川魚のカワムツがワイルドにギラギラ泳いでいるのでこれはなしだと思いました。コリドラスはきっと大丈夫だと思いますが、小さなメダカのような熱帯魚たちは、カワムツのエサになってしまうこと間違いなしです。想像すると恐ろしい光景ですが、野生とはそういうことなんですよね。

ということで、魚たちはそのままに、底砂を大幅に取り除く作業に取り掛かりました。

大変なことが起きていることを察知したコリドラスたちは、水槽のすみっこに大集合していました。普段は自由に生活しているコリドラスたちですが、何か異変を感じた時、ギュッと集まる傾向にあるのではないかと筆者は思っています。作業が行われている方にお尻を向けて、みんなで耐えている様子でした。

作業終了後、しばらく水は濁っていましたが、程なく透明になり落ち着いたように見えました。濾過バクテリア(水をきれいにしてくれる大事なバクテリア)の激減、大量の水換えによるpH(水の性質)の激変が心配でした。そして、もちろん環境の変化によるストレスも。水草や流木のレイアウトはあえてそのままにしました。

アルジイーター(ドジョウの仲間)はバタバタしていましたが、全く問題なしでした。相変わらず、赤コリと仲良しです。

作業から2週間ほど経過して、色んな事が起きました。まず、一番ヒゲが短くなっていたコリドラスステルバイと、一番体が小さかったコリドラスパンダが亡くなりました。ステルバイのために行った作業といっても過言ではなかったのですが、残念です。パンダは、体が小さく、環境の変化に耐えられなかったのだと思います。
そして、過去記事でも度々紹介してきましたあの生き残っていたシジミ

大ショックでした(-_-) まさかシジミがやられるとは思っていませんでした。シジミにはやはり底砂の厚さは重要だったのか⁈ 身を守るためにも?

以前より、アルジイーターにほじくり返されているのをよく見かけるようになっていました。底砂が薄くなった分、シジミを見つけやすかったのかもしれません。不思議なことに、貝が閉じている(生きている)時は、突いたり貝の上に貼り付いたりしていたのに、貝が開く(死んでいる)と、少し突いてはいましたが、中身を食べるようなことはなかったです。アルジイーター的には、思っていたのと違ったといったところでしょうか? やれやれです。

ついでに、水草の葉っぱの謎の穴です。

葉脈を残しつつ、きれいな丸い穴が開いています。あと1つ別の葉にもありました。アルジイーターの仕業ではないかと思っています。よく水草の上に乗ってフカフカしていますから。

水槽内では、日々、色んな事が起きています。