お出かけ:ときわ公園(山口県宇部市)① ~UBEビエンナーレ~

UBEビエンナーレ」、聞いたことがあるでしょうか? ビエンナーレとは、1年おきに開催される美術の展覧会のことですね。似たような言葉で、トリエンナーレがありますが、こちらは、3年に一度開かれる美術展覧会を意味します。ちなみに2010年から開催されている国内最大規模の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」は何かと話題ですよね。

今回、機会あって山口県宇部市にある「ときわ公園」へ行ってみました。公園のあらゆるところに大型のオブジェ(野外彫刻)が設置してあるので、これはラッキーと思って見て回りました。そして途中で、「UBEビエンナーレ」のメイン会場であることに気づいた次第です。「UBEビエンナーレ」自体は聞いたことがあったのですが、ときわ公園が会場だったと認識していませんでした。「UBEビエンナーレ」目当てで行ったわけではなかったので、とても得した気分になりました。

ときわ公園へは、最寄りの駅(宇部新川駅)からバスに乗って行ったのですが、道中、ボーッとしていられませんでした。街のいたる所に立派なオブジェ(野外彫刻)があったからです。あっちにもこっちにもです。後で調べて分かったことですが、歴代のUBEビエンナーレ入賞作品は、市街地や公園などに設置されているとのことでした。納得です。

ときわ公園内の「彫刻の丘」で印象に残った作品をいくつか紹介します。

三宅之功
『はじまりのはじまり』2019
第28回UBEビエンナーレ  大賞(宇部市賞)
中出武彦
『深夜バス』2011
第24回UBEビエンナーレ  宇部興産株式会社賞
土屋公雄
『底流』1991
第14回現代日本彫刻展  大賞(宇部市賞)
岡田健太郎
『catch and release』2017
仲田守
『ク・ラ・ゲ・だぞー』
第28回UBEビエンナーレ  毎日新聞社賞

以上、ほんの一部です。まだまだたくさんの彫刻作品が野外展示されていました。外国人アーティストの作品もありましたョ。

ときわ公園の目の前には常盤湖とい大きな湖が広がっています。あいにくの天気だったのでちょっと残念でしたが、素晴らしいロケーションだと思いました。  曇り空の色が、真っ青な空色になったと想像してみてください。 きっと彫刻の見え方も随分違ってくるのでしょうね。

彫刻を見て回ると結構歩くことになります。ちょっと休憩しました。

ときわレストハウス

「彫刻の丘」の近くにある「ときわレストハウス」の2階は無料休憩所となっていて、かなり大きな空間が広がっていました。 それぞれの机の配置も、ソーシャルディスタンスが十分とられたもので、ゆっくりすることができました。

「ときわレストハウス」の2階からの眺め

天気が良い日にまた行ってみたいなと思いました(^-^)

ムンクの『叫び』の落書き

Yahoo!ニュースから凄いニュースが飛び込んできました! 過去記事(ムンクの『叫び』と壁画『太陽』)で少し書きましたが、あの有名なムンクの『叫び』の落書きについてです。

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オスロ国立美術館
エドヴァルト・ムンク(1863-1944)
『叫び』1893

青で囲まれた辺りに落書きがあるということでした。ノルウェー語で「狂人にしか描けない」という意味のことが書かれています。

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ムンク本人が書いたものなのか、他人が書いたものなのか、長年不明だったんです。ただ、ムンク生前中の落書きであることは判明していました。

AFP BB Newsによると、

今回、ノルウェーの国立美術館の専門家らは赤外線技術を使って筆跡を分析し、ムンク本人が書いたものだと結論付けた。学芸員のマイ・ブリット・グレング氏は発表で、「この筆跡は間違いなくムンク自身のもの」と説明。「筆跡のものもに加え、ムンクがノルウェーでこの絵画を初めて展示した1895年に起きた出来事のすべてが同じことを示している」と述べた。

2021年2月23日 AFP
出典:AFP BB News 赤外線写真

素晴らしい✨ 落書きはムンク本人が書いていたんですね‼ だからどうしたという話かもしれませんが、美術ファン的には、テンションが上がるニュースです(^-^)

ちなみに、『叫び』を初めて展示した1895年に起きた出来事というのは、あまりに前衛的過ぎたためか精神状態を疑問視され、激しい批判をあびたことを指しています。かなり批判されたようなので、ムンクは深く傷つきました。その結果、ムンクが自分で「狂人にしか描けない」と書き残した(落書きした)と推測されるということのようです。

レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』もそうですが、研究が進むことで色んな事が判明してくるとほんとにおもしろいですね。

番外編:カワムツとヌマチチブ

筆者の家の川魚水槽には、現在、カワムツとヌマチチブが泳いでいます。熱帯魚ではないので、水槽用ヒーターをセットしていません。基本的に、室温の変化と同じように水温も変化しているはずです。

まだ小さかったヌマチチブの最近の姿がこちら。

2012年2月撮影 ヌマチチブ

どうでしょう? すくってきた頃は、2~3㎝くらいだったと思います。今は5~6㎝くらいには成長しているのではないでしょうか。なんだかあれですね…。あまりかわいい感じではないような…。まだ大きくなる(12㎝くらい)ので、ちょっと不安です。

カワムツも元気にしています。

目が大きくて、頭が若干角ばっているように思います。水槽を飛び出るまでではありませんが、バシャバシャとよく跳ねています。筆者が水槽の前を通るとバシャッです。

2021年2月撮影 カワムツとヌマチチブ

2匹がかなり接近した時をパチリです。奥にヌマチチブが貼り付いているのが分かるでしょうか? カワムツ、なかなか美形に写ってますね。現在のカワムツは10㎝くらいあると思うので、ヌマチチブがいかに大きく成長したか判ると思います。

   

2匹の縄張り争いは今も地味に続いています。ただ、カワムツがヌマチチブを攻撃することはほとんどありません。ヌマチチブがいきなりドスッとカワムツのお腹の辺りをめがけて突っ込む感じです。

色んな意味であまりかわいくないヌマチチブ。 とはいえ、筆者の家にやってきて5カ月になりますので、大事に観察して行きたいと思います。

大原美術館:『イル=ド=フランスのトルソ』マイヨール

頭と腕がないですね。

大原美術館
アリスティド・マイヨール(1861-1944)
『イル=ド=フランスのトルソ』1921
ブロンズ

【鑑賞の小ネタ】
・トルソとは?
・彫刻家ブールデルと同世代
・ナビ派の画家たちと交流
・絵画も手掛ける

頭部と両腕がありませんが、女性の美しい裸婦像だと思います。トルソ(トルソ―)とは、人間の胴体部分だけの彫像のことです。元々は、未完成または古代彫刻の破損された状態のものを指す言葉だったようです。19世紀に入ってから、頭や腕がない不完全な彫刻のなかにある「美」として認められました。特にロダン以降は、完成作品としてのトルソが制作されるようになったということです。

古代の破損された状態の有名な彫刻と言えば、『サモトラケのニケ』でしょうか?

ルーブル美術館原型所蔵
『サモトラケのニケ』紀元前2世紀
大理石

『サモトラケのニケ』は、本来の意味でのトルソというこになりますね。どんな顔をしていて、腕の様子はどんな感じだったのかなと想像したことはないでしょうか? 

顔の表情が分かると、無限にある想像の幅をかなり絞りこむことが出来ます。そして、腕の状態 (身振り手振りで感情を表現することってありますよね) が分かると、その彫刻が表す状況をなんとなく読み取れたりするものです。それはそれで興味深く観賞できると思いますが、そういった情報が一切ないトルソは、また違った楽しみ方ができるのではなかと筆者は思っています。 胴体だけ?と、甘く見てはいけませんね(^-^)

ところで、『イル・ド・フランス』という作品があります。
(※イル・ド・フランスとは、パリ市を中心にその周囲を取り巻く地方を指します。)

埼玉県立近代美術館
『イル・ド・フランス』1925

作品名から、大原美術館の『イル=ド=フランスのトルソ』のトルソ状態ではない全身の像ではないかと思っているのですが、どうでしょう? 右足が前に出て、胸を張った感じがよく似ていると思います。

トルソと比べてみてください。裸婦像の美しさとして、どちらが印象的でしょうか? 鑑賞者によって意見が分かれるところだと思います。

マイヨールはナビ派(19世紀末のパリで活動した前衛的な芸術家集団)の画家たちとも交流を持っています。

オルセー美術館
『パラソルを持つ娘』1890

彫刻のイメージが強いマイヨールですが、絵画も数多く残しています。1900年頃から視力が低下し、絵画を断念することとなり、その頃から彫刻へ重きを置いていったようです。

【おまけ】
アントワーヌ・ブールデルは1861年10月30日生まれ、アリスティド・マイヨールは1861年12月8日生まれで、同い年の彫刻家です。

大原美術館:『果物を持つ裸婦』ブールデル

果物を持って、少し上を向いた感じで、全体的に軽やかですね。

大原美術館
エミール=アントワーヌ・ブールデル(1861-1929)
『果物を持つ裸婦』1906
ブロンズ
100.0×35.0×23.0㎝

【鑑賞の小ネタ】
・縦に少し引き伸ばされたような女性像
・この女性は誰なのか?
・何の果物なのか?

この彫刻を所蔵する美術館は他にもいくつかあります。

ひろしま美術館
エミール=アントワーヌ・ブールデル(1861-1929 )
『果物を持つ裸婦』1906
ブロンズ
223.0×79.0×52.0㎝

ひろしま美術館の『果物を持つ裸婦』です。大原美術館の彫刻より2倍ほどの大きさがありますね。

ひろしま美術館の方はそこまで思いませんが、大原美術館の彫刻は、全体のバランス的に、縦に引き伸ばされたような感じがします。特に、腕が長いと思います。肩幅が狭いので余計にそう感じるのかもしれません。 写実的な作品というよりは、ちょっとコミカルな仕上がり。過去記事(大原美術館:『年をとったバッカント』ブールデル)でも紹介しましたが、ロマネスク様式っぽい作品だなと思いました。

ちなみに、ちょっとコミカルなロマネスク彫刻がこちら。

ロリン美術館
ギスレベルトゥス
『イブの誘惑』1130年頃

ところで、『果物を持つ裸婦』のモデルは誰なのでしょうか? ブールデルは女性像彫刻をあまり多く残していないようですが、ギリシャ神話の女神は好んで制作しています。「ギリシャ神話 女神 果物」をキーワードに色々と調べていたら、「ポモナ」という女神に辿り着きました。

ブダペスト国立美術館
ニコラス・フーシェ(1653-1733)
『ポモナ』1700年頃

ポモナ」はローマ神話(※ローマ神話とギリシャ神話はかなりリンクしています)の果実の女神です。手に果物を持っていますね。髪も結い上げられて、『果物を持つ裸婦』の髪型とちょっと似ていると思いませんか?

また、ブールデルの同い年の彫刻仲間にアリスティド・マイヨール (1861-1944)という彫刻家がいるのですが、『ポモナ』の彫刻を制作しています。こちらです。

パリ市美術館
アリスティド・マイヨール(1861-1944)
『ポモナ』1937
大理石

リンゴのような果実を持った裸婦像になっていますね。

これらのことから、ブールデルの『果実を持つ裸婦』のモデルは、「ポモナ」ではないかと筆者は思っています。

次に、果物についてです。 マイヨールのポモナが持っている果実はリンゴっぽいですが、ブールデルの裸婦が持っている果実は、リンゴにしては少しサイズが小さいように思うのですが、どうでしょう?

ルーヴル宮殿のポモナは色んな果実を持っています。こちらです。

ルーヴル宮殿
『ポモナ』

色んなサイズの果物が見えますね。「ポモナ」が持つ果物はリンゴだけというわけではなさそうです。

大原美術館の『果物を持つ裸婦』を実際に観たことがありますが、筆者的にはイチジクのように見えました。 ギリシア神話でイチジクは、ティターン神族の1人リュケウスが神々の母レアによって姿を変えられたものとして登場しています。そしてローマ神話では、酒神バッカスがイチジクの木にたくさん実をならせる方法を考えたとするエピソードで登場しています。バッカス祭では女たちがイチジクを数珠つなぎにして首にかけて踊るということのようですョ。 あれ?バッカス祭で踊る女性といえば、バッカント(過去記事、大原美術館:『年をとったバッカント』ブールデル)ですねよ。ここへ来て、「ポモナ」ではなく「バッカント」の可能性が出てきました!

普通に果物を持った女性ということで良いのかもしれませんが、色々と深読みするとおもしろいですね(^-^)