『洗礼者ヨハネ』は大原美術館本館正面向かって左側に展示されています。
【鑑賞の小ネタ】
・「考える人」で有名なロダンの作品
・ 戦時中の金属類回収令から免除される
・ヨハネはキリストに洗礼を授けた人物
『歩く人』は大原美術館分館の前庭に展示されています。
【鑑賞の小ネタ】
・トルソに両脚をつけた彫刻作品
・『洗礼者ヨハネ』との関係性
・ロダンにとって「歩く」とは?
『洗礼者ヨハネ』は『カレーの市民-ジャン=デール』(過去記事:『カレーの市民-ジャン=デール』ロダン)と同じく、戦時中の金属類回収令から免除されていることに注目です。
そして、『洗礼者ヨハネ』と『歩く人』は深く関係しています。
この「説教する聖ヨハネ」は、分館前庭に設置されている「歩く人」に頭と手をつけて完成されたものです。 この二つの彫刻を見くらべると、人体の動きを見事にとらえたロダンの眼の確かさを感じとることができることでしょう。
大原美術館HP
筆者はこの事実を何年か前に知りました。右足を一歩踏み出しているので似ている彫刻だとは思っていましたが、『歩く人』の方がどっしりムキムキしている印象だったので、2作品は全くの別物と考えていました。
ただ、腕の付け根辺り(肩周辺)をよく見ると、確かに、右腕は前、左腕は下に向くような感じがします。腕を付けると『洗礼者ヨハネ』になりそうですね。
ちなみに、国立西洋美術館にも『説教をする洗礼者ヨハネ』という作品があります。
気になる作品解説がありましたので引用します。
この作品のモデルはイタリア人の農夫であった。アトリエを訪ねてきたこの男は、その挙措動作にも強靭な肉体にも荒々しい力をみなぎらせ、また素朴で神秘的な雰囲気を漂わせていた。ロダンは彼を見てただちに洗礼者ヨハネを思い浮かべたという。着衣を取り去ってモデル台に上がった彼は「面を上げ、上半身をまっすぐに伸ばし、コンパスのように両脚を開いてしっかりと立った」。ロダンは、この決然たる彼のポーズを目にして「歩み」のテーマを着想した。本作品の制作過程において生まれた《歩く人》は、トルソに両脚だけが付け加えられた立像である。
国立西洋美術館名作選. 東京, 国立西洋美術館, 2006. cat. no. 127
これによると、「洗礼者ヨハネ」の制作過程で『歩く人』が生まれたことになります。 色々調べていたら、「洗礼者ヨハネ」のモデルと石膏像の写真が見つかりました。
石膏像は、ブロンズ像を制作する過程(鋳造)で原型となる大事な像です。『洗礼者ヨハネ』だけでなく『歩く人』もこの石膏像がもとになっているのではないかと思うのですが…。どうでしょう?
どちらの作品の制作が先だったのでしょうね。ちょっとよく分かりません。実際、『歩く人』の制作時期については諸説あるという記述もありました。 何れにしても、『洗礼者ヨハネ』と『歩く人』は同時期の制作過程で生まれた作品であるということでいいのだと思います。
ところで、写真の中の石膏像は、ちょっとムキムキした感じに見えますね。『歩く人』に近い筋肉量のような気がします。気になっていた見え方の違いは、単に角度によるものなのかもしれませんね。
※『洗礼者ヨハネ』も『歩く人』も屋外展示なので通常時であれば入館料はいりませんが、現在コロナの影響で敷地内の入場数が制限されています。
【豆知識】
洗礼者ヨハネはイエス・キリストに洗礼を授けた人物。イエスの弟子である使徒ヨハネとは別人。ラクダの毛皮を着て描かれることが多い。