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ジュール・フランドラン(1871-1947)
『聖母によせる頌歌』1920
師事したギュスターヴ・モロー(1826-1898)が逝去してからは、フランドランはナビ派に接近しました。なかでも、ナビ派の一員であるモーリス・ドニ(1870-1943)からの影響は大きかったようで、ナビ派の美学と調和する灰色を尊重した鈍い色調のスタイルに転じた(引用:大原美術館Ⅰ海外の絵画と彫刻-近代から現代まで-)とありました。
ナビ派とは、19世紀末のパリで活動した前衛的な芸術家の集団です。自然の光を画面上にとらえ、絵にテーマは必要ないとする印象派に反対しました(反印象派)。日常的な要素(庭、室内、家族、公園など)と神秘的な要素(宗教、夢、幻想など)の両方をテーマとし、その絵画はとても装飾的です。
筆者は、灰色を尊重した鈍い色調という特徴に興味を持ちました。大原美術館の『聖母によせる頌歌』は確かにパキッとした色はほぼなく、全体的に特に空が灰色ですよね。なんだかほのぼのとした感じがするのは灰色のおかげかもしれません。
他にも灰色の絵がありました👇
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『ル・バル・ブリエ』1931
人々がダンスをする様子が描かれています。画面の中には、多くの人が密集して描かれているにも関わらす、騒がしい感じがしません。穏やかに時が流れているようにさえ見えます。これも、灰色効果なのかもしれませんね。
では、フランドランが影響を受けたモーリス・ドニの作品はどうでしょうか? 色々見てみると、灰色を基調とした作品が結構ありました。その中の1つがこちら👇
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モーリス・ドニ(1870-1943)
『池のある屋敷Residence with a Pond』1895
この作品も、ほのぼのとした雰囲気ですよね。ナビ派の美学の言及で、「優しく近づきやすい」というものがありました。まさにそんな感じだなと思いました。この作品についても、灰色効果は大きいかもしれませんね。
調べてみると灰色は、どちらともとれない不安や曖昧、迷いなどのイメージがありますが、主張の少ない色なので気持ちを落ち着かせたりする効果があるそうです。筆者は大納得しました👍
今後ナビ派の画家の作品を見る時、灰色を探してしまいそうです(^-^)