サーカス場のバックヤードかなと思いました。

リュシアン・シモン(1861―1945)
「曲馬場」1917
【鑑賞の小ネタ】
・フランスの画家
・ブルターニュ風景を描く
・バンド-ノワールを結成
・芸術(美術)学校の教師
赤(オレンジ)の服に黒の帽子の男性と赤い車輪付きの緑の小屋が目を引きます。馬も3頭いますね。座って犬を撫でる女性、階段を下りてくるステージ衣装を着た女性、赤い服の男性の横に赤ちゃんを抱っこした女性等が描かれています。
作品名が「曲馬場」となっています。画中の登場人物がどの人もリラックスして見えるので、曲馬場のバックヤードといったところでしょうか。これから出演するところなのか、ショーが終わったところなのか。どっちでしょうねぇ。画面右端では、ステージ上で何らかのショーが行われているように筆者には見えます。観客もいるかな?
シモンの似たような絵を見つけました👇

「ブルターニュの祭り」1919年頃
緑の小屋と大きなテント、馬もいますね。そして、ステージ上で何らかのショーが行われています。まるで「曲馬場」の画面右端部分を正面から見ているようです。
もう1つ似たような絵を見つけました👇

「サーカス・パレード」
またまた緑の小屋と大きなテントが描かれています。そして後景に回転ブランコが見えますね!
3つの絵が同じ場面を描いたと断言は出来ませんが、3つに関連性があるとすると、フランスの移動遊園地を描いたものではないでしょうか。移動遊園地の源は19世紀のサーカスと似ています。(※2024年、ベルギーとフランスの移動遊園地文化はユネスコの無形文化遺産に登録されたそうです。)
曲馬とは、馬を駆けさせながら、馬上で様々な曲乗りを演ずる芸のことです。筆者の好きなロートレックも作品にしています👇

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(1864―1901)
「サーカス・フェルナンド女曲馬師」1888
ベルナール・ビュッフェ(1928―1999)も曲馬の場面を描いていました。曲場師はロートレックの作品と同じく女性でした。
大原美術館「曲馬場」に戻ります。
馬のそばに立っている赤い服の男性が曲馬師かと思っていましたが、こうしてみると、左端の階段を下りてくるステージ衣装の女性が曲馬師に見えてきました。背筋を伸ばし、しっかり前を向き、颯爽と階段を下りて行っているように筆者には見えるので、これからショーが始まるのかもしれませんね。
ちなみにシモンは、1895年にシャルル・コッテ(1863―1925)と出会い、影響を強く受けました。そしてコッテ、アンドレ・ドーシェ(1870―1948)と共に、「バンド・ノワール(黒の党)」を結成しました。作品の色調は暗く、黒や暗褐色を多用しますが、シモンの色調はなんだか明るいですよね。(※コッテの作品「聖ジャンの祭火」が現在展示中です。「曲馬場」も展示中ですので比べてみてほしいものです(^.^))