大原美術館:『ミュージック・ホール』デヴァリエール

派手目のドレスと帽子を身につけた女性が3人、いますねぇ。

大原美術館
ジョルジュ・デヴァリエール(1861-1950)
『ミュージック・ホール』1903

【鑑賞の小ネタ】
・フランスの画家
・ギュスターヴ モローと親交あり
・宗教芸術復興運動に貢献
・都会の風俗も多く描く

怖いくらいキッとした表情の女性が3人描かれています。この雰囲気を作り出しているのは、3人の鋭い眼光だと思っていました。でも、はっきりと目が確認できるのは意外にも中央に座っている女性のみなんです。もう少しじっくり見てみることにします。

奥に座っている女性、この画像では暗くて目がどうなっているのかよく分かりませんよね。現在展示中の実物をよく見てみると、なんと瞳孔の輪郭が描かれているのが確認できるんです。気付いた時、おっ!となりますョ。奥に座っている女性はしっかりこちらを見ていました👁👁 立っている女性の方はどうでしょう?目を細めて少し遠くを見ているように筆者には見えます。

この雰囲気を作り上げている重要なアイテムがもう1つあります。煙草です。気が付いたでしょうか? 座っている女性2人とも指に挟んでいます。火もついていて、煙も描かれています。煙草があるかないかで雰囲気も随分変わってきそうですね。

「ミュージック・ホール」とは、ビクトリア王朝時代(1837年~1901年)のイギリスで流行した、歌、踊り、寸劇、奇術などの大衆芸能を上演する施設のことです。

ピーター・ジャクソン
『ビクトリア朝のミュージックホール』

イングランド地方の小さなタバン(tavern、居酒屋兼宿屋)で、客が酒を飲みながら演芸を楽しむタップルーム(taproom、酒場になっている部屋)でのコンサートがミュージックホールの起源のようです。Music Hall(ミュージックホール)は、フランスでは英語と同じ綴り(つづり)でミュジコールと発音するそうです。20世紀に入るとミュージックホールは大規模なバラエティ劇場に押されて勢いを失いました。第二次世界大戦後はロンドンにごくわずか残存したに過ぎなかったようです。

デヴァリエールはフランスの画家ですが、この『ミュージック・ホール』はロンドンのナイト・クラブを描いたものであるという記述がありました。本場イギリスのミュージック・ホールだったんですね。

『ミュージック・ホール』の制作年1903年と同じ頃の作品がこちら👇

プティ・パレ美術館
『マダムPBの肖像』1903
個人蔵
『ビッグハット』1903-1904

ゴージャスな婦人の肖像画を多く描いていたようですね。デヴァリエールはその後、徐々に宗教画へ傾いて行きます。