大原美術館:『キリストとマドレーヌ』デヴァリエール②

投稿記事(大原美術館:『キリストとマドレーヌ』デヴァリエール①)の続きです。

大原美術館の図録に次のような記述がありました。引用します👇

激戦地ヴェルダン近 郊に献堂されたドゥオモン納骨堂内のステンドグラスに、デヴァリエールはかつて受難と慈愛を表した《キリストとマドレーヌ》の構図を転用します。しかし、ここでキリストが強く腕に抱いたのは、大戦で十字架にかけられた兵士でした。

大原芸術研究所・大原美術館.異文化は共鳴するのか? 大原コレクションでひらく近代への扉.公益財団法人大原芸術財団, 2024, p.56

『キリストとマドレーヌ』の構図を転用したとされるステンドグラスの作品が気になって、色々探してみました。そして、やっと見つけました👇

ドゥオモン納骨堂の礼拝堂
ステンドグラス
1927

多分、このステンドグラスだと思います。この画像の説明に「La Redemption(償還)」とありました。新約聖書で「償還」は、「捕らわれの身または罪から自由への救出」の意味で使用されるそうです。

少し解像度の高い画像を見つけました👇

キリストが兵士をギュっと抱きしめ包み込んでいるのがよく分かります。キリストの腕の中で兵士は救出され、天に昇ることでしょう。

大原美術館
『キリストとマドレーヌ』1905
ジョルジュ・デヴァリエール(1861-1950)

デヴァリエールは『キリストとマドレーヌ』の構図をこのステンドグラスに転用したということなので、やはり、キリストがマドレーヌの肩をかりて立っているということだけでなく、マドレーヌの肩を抱いて包み込んでいるという解釈で良いのではないかと思いました。キリストが抱きしめる様子は、ステンドグラスの方が分かりやすいですよね。両腕でしっかり兵士を包み込んでいます。

ステンドグラス作品の制作年は1927年なので、デヴァリエールが戦争で息子を失った(1915年に戦死)後です。様々な思いが込められた作品でしょうね。

※ドゥオモン納骨堂礼拝堂のステンドグラスデザインはデヴァリエールですが、ステンドグラス職人はジャン・エベール=スティーブンスです。