ルネ・マグリットの『光の帝国』

最近のお気に入りポスターです👇

ベルギー王立美術館
『光の帝国』1954
ルネ・マグリット(1898-1967)

熱帯魚水槽の右横に展示しています。

ルネ・マグリットはシュルレアリスム(超現実主義)を代表する画家です。美術の教科書でもお馴染みだと思います。生涯のほとんどをベルギーで過ごしました。

『光の帝国』の第一印象はどうでしょう? 筆者は風景画のなかでも建物の絵が好きなので、最初から惹かれるものがありました。中心に位置する街灯、そして窓から漏れる暖色系の明り、いい感じですよね✨ 建物の周辺(絵の下半分)は夜の雰囲気で描かれています。

ところが、興味深いことに空は昼間なんです。青空に白い雲が浮かんでいて、とても不思議な風景画となっています。まだ薄暗い明け方に似たような景色を見たことがあるような気もしますが、ここまではっきりとした夜と昼の共存は難しいと思います。ありえない風景なのになぜか落ち着くこの感じ。何なんでしょうかねぇ。人は、ありえない物や事に対して、ざわざわするはずなんですが…。

『光の帝国』はシリーズもので、主に1953年から1954年にかけて制作されているようです。

ソロモン・R・グッゲンハイム美術館
『光の帝国』1953-54年
マグリット美術館
『光の帝国』1954
ニューヨーク近代美術館
『光の帝国Ⅱ』1950

街灯が効いてますね。マグリットは身近にあるものを絵の中に描き込むことが多かったようです。この街灯も、マグリットが1930年から1954年の24年間暮らしたブリュッセルの家の前にあった街灯なんだそうですョ。

『光の帝国』シリーズ、どの作品を見ても、昼と夜が共存しているのが分かると思います。これは、シュルレアリスムの表現手法の1つで、デペイズマンと呼ばれます。フランス語で「異なった環境に置くこと」を意味します。昼と夜が共存することは本来ないので、「あれ?」ってなりますよね。感覚が揺さぶられるわけです。人の心に衝撃を与えることがねらいのデペイズマンです。

筆者的には何だか落ち着く絵なのですが、人によっては、異世界に導かれるようなざわざわする絵になるのかもしれませんね。