大原美術館:芝生の中の彫刻(分館前)

大原美術館の分館前には、手入れの行き届いた芝生が広がっています。今は冬なのでこの色ですが、夏には綺麗な緑を一面に見ることができます。

2022年1月撮影 大原美術館分館前

分館はコロナの影響で現在も休館中です。

芝生の中にはいくつかの彫刻が野外展示されています。敷地の東と西にある門が閉まるまでは、自由に鑑賞することができます。

まずはこちら。

大原美術館
ヘンリー・ムーア(1898-1986)
『横たわる母と子』1975-76年
ブロンズ

ヘンリー・ムーアはイギリスの彫刻家です。「母と子」をテーマに多くの作品を制作しています。「横たわる像」もムーアのテーマだったようです。古代彫刻に関心を示し、中でもメキシコのマヤ文明の遺跡から出土した「チャック・モール」から大きな影響を受けたようです。チャック・モールとは、人(神?)が横たわっている人物像のことです。

         

大原美術館
イサム・ノグチ(1904-1988)
『山つくり』1982

イサム・ノグチの父は詩人の野口米次郎、母はアメリカ人作家で教師のレオニー・ギルモアです。父親との関係は複雑で、イサムは愛に飢えていました。
コロンビア大学の医学部に進学しましが、あの野口英世から野口米次郎は素晴らしい作家であることを聞かされ、すぐ大学を退学し、レオナルド・ダ・ヴィンチ美術学校に入学したそうです。父親に対する憧れもあったようです。
また、美術の教科書にも載っているフリーダ・カーロ(1907年-1954年、メキシコの画家)と大恋愛をし、1951年には女優の山口淑子(李香蘭)と結婚しています。5年ほどで離婚していますが、世界各地を旅したりと国際色豊かなものだったようです。
それにしてもイサム・ノグチのまわりはビッグネームだらけですよね。

                      

大原美術館
津久井利彰(1935- )
『樹に染まり』1994

ステンレスで制作されています。設置当時はここまで植物が茂っていなかったと思います。月日が流れ、いい感じになっていますよね。色々調べていると『樹に染まり96』という作品が東京都の港区乃木公園にあるのを見つけました。同じくステンレス製で、ジャングルジムのような形状の作品の上に、蔓状の植物が乗っています。
ステンレスと植物のコラボはどうでしょう? 一見、鉄と植物ということでミスマッチのような気がしないでもなかったのですが、見ているとだんだんしっくりくるのが不思議です。

                   

大原美術館
速水史郎(1927― )
『道標』1987、1999年
御影石

速水史郎は香川県多度津町出身の彫刻家・造形作家です。『道標(みちしるべ)』という作品なんですが、よく見ると、本館・工芸館・東洋館と分館の方向を示す、まさに道標となっているのが分かります。芝生内の丸みを帯びた黒い彫刻も速水史郎の作品です。筆者は、瀬戸内海に浮かぶ島のようだなと思いました。ちなみに、香川県の高松市中央公園には『SANUKI』という形状のよく似た作品が野外展示されています。

        

大原美術館
木村賢太郎(1928― )
『祈り』1986
御影石

頭(こうべ)を垂れて、合掌しているのが分かるでしょうか? サイズも比較的小さめということもあり、筆者にはとてもかわいく見えました。作品『祈り』は、素材やサイズなどが違うものも含めると、他にも結構あるようです。
東京国立近代美術館には、『祈り6』『祈り7』という大原美術館の『祈り』ととてもよく似た作品が所蔵されています。制作年がどちらも1993年となっているので、大原美術館の『祈り』の方が早い時期に制作されていますね。

   

敷地の門が開いている時は自由に鑑賞しても大丈夫なので、ぜひ。