ミュシャのリトグラフ(石版画):四季(1900)『春』①

ミュシャの装飾パネル画のなかの1つです。

アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)
四季『春』1900

この『春』を初めて見たのは、どこかの展示即売会だったと思います。その展示会では、ミュシャではない他の画家の作品も展示されていましたが、ミュシャがメインだったと思います。オリジナルのリトグラフ(石版画)作品も何点かあって、感動したことを覚えています。

『春』は、数ある展示作品の中で一際目を引きました。ミュシャの官能的に表現された女性のあの雰囲気とはちょっと違うなと思ったんです。かなりの美形であることは間違いないのですが、それだけでなく、目力があって意志の強さがにじみ出ているなと。

この作品は、『春』『夏』『秋』『冬』の4枚セットの中の1枚です。

『四季』(1900年)

『春』だけ比較的身体がまっすぐなのが分かるでしょうか?首もスッと伸びていて、顔も正面を向いていますよね。

『四季』はこの他にも2パターン制作されています。

『四季』(1896年)
『四季』(1897年)

どうでしょう? 筆者が取り上げた1900年の『春』だけ、雰囲気が他と違うように思いませんか?

『四季』の中の女性は、「コントラポスト」(体重の大部分を片脚にかけて立っている状態を指す)きつめですよね。コントラポストをさらに強調して、身体を曲がりくねらせたものを「S字曲線」といいます。ウイリアム・ホガース(1697-1764)によれば、直線が少なく、曲線が多いほど美しいということのようです。

1900年の『春』はどうなっているでしょうか? 左脚が曲がっているので、右脚に体重がかかっていることが分かります。コントラポストですね。そして腰が少し傾いているので、ゆるーくS字曲線にもなっています。筆者的には、あまりくねくねするより、これぐらいが良いです。

      

筆者が立ち寄った展示会では、当時の製法になるべく近付け、使用するインクにもこだわった複製リトグラフを販売していました。『春』も見事な色合いで複製されていました。大きさは縦が1mくらいで、価格もそれなりに高額だったと思います。販売員の方が熱心にミュシャについてレクチャーして下さったことを覚えています。結局購入せずに帰ってしまいましたが、今では色んな思い出が甦る作品となっています。