果物を持って、少し上を向いた感じで、全体的に軽やかですね。
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エミール=アントワーヌ・ブールデル(1861-1929)
『果物を持つ裸婦』1906
ブロンズ
100.0×35.0×23.0㎝
【鑑賞の小ネタ】
・縦に少し引き伸ばされたような女性像
・この女性は誰なのか?
・何の果物なのか?
この彫刻を所蔵する美術館は他にもいくつかあります。
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エミール=アントワーヌ・ブールデル(1861-1929 )
『果物を持つ裸婦』1906
ブロンズ
223.0×79.0×52.0㎝
ひろしま美術館の『果物を持つ裸婦』です。大原美術館の彫刻より2倍ほどの大きさがありますね。
ひろしま美術館の方はそこまで思いませんが、大原美術館の彫刻は、全体のバランス的に、縦に引き伸ばされたような感じがします。特に、腕が長いと思います。肩幅が狭いので余計にそう感じるのかもしれません。 写実的な作品というよりは、ちょっとコミカルな仕上がり。過去記事(大原美術館:『年をとったバッカント』ブールデル)でも紹介しましたが、ロマネスク様式っぽい作品だなと思いました。
ちなみに、ちょっとコミカルなロマネスク彫刻がこちら。
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ギスレベルトゥス
『イブの誘惑』1130年頃
ところで、『果物を持つ裸婦』のモデルは誰なのでしょうか? ブールデルは女性像彫刻をあまり多く残していないようですが、ギリシャ神話の女神は好んで制作しています。「ギリシャ神話 女神 果物」をキーワードに色々と調べていたら、「ポモナ」という女神に辿り着きました。
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ニコラス・フーシェ(1653-1733)
『ポモナ』1700年頃
「ポモナ」はローマ神話(※ローマ神話とギリシャ神話はかなりリンクしています)の果実の女神です。手に果物を持っていますね。髪も結い上げられて、『果物を持つ裸婦』の髪型とちょっと似ていると思いませんか?
また、ブールデルの同い年の彫刻仲間にアリスティド・マイヨール (1861-1944)という彫刻家がいるのですが、『ポモナ』の彫刻を制作しています。こちらです。
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アリスティド・マイヨール(1861-1944)
『ポモナ』1937
大理石
リンゴのような果実を持った裸婦像になっていますね。
これらのことから、ブールデルの『果実を持つ裸婦』のモデルは、「ポモナ」ではないかと筆者は思っています。
次に、果物についてです。 マイヨールのポモナが持っている果実はリンゴっぽいですが、ブールデルの裸婦が持っている果実は、リンゴにしては少しサイズが小さいように思うのですが、どうでしょう?
ルーヴル宮殿のポモナは色んな果実を持っています。こちらです。
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『ポモナ』
色んなサイズの果物が見えますね。「ポモナ」が持つ果物はリンゴだけというわけではなさそうです。
大原美術館の『果物を持つ裸婦』を実際に観たことがありますが、筆者的にはイチジクのように見えました。 ギリシア神話でイチジクは、ティターン神族の1人リュケウスが神々の母レアによって姿を変えられたものとして登場しています。そしてローマ神話では、酒神バッカスがイチジクの木にたくさん実をならせる方法を考えたとするエピソードで登場しています。バッカス祭では女たちがイチジクを数珠つなぎにして首にかけて踊るということのようですョ。 あれ?バッカス祭で踊る女性といえば、バッカント(過去記事、大原美術館:『年をとったバッカント』ブールデル)ですねよ。ここへ来て、「ポモナ」ではなく「バッカント」の可能性が出てきました!
普通に果物を持った女性ということで良いのかもしれませんが、色々と深読みするとおもしろいですね(^-^)